※軽いネタバレ有り 実写版『るろうに剣心』を原作ファンはどう思ったかーthe final―

  by ぶらっくまぐろ  Tags :  

10年。月日の流れを人が感じる速度はそれぞれである。

新型コロナウイルスの影響で本来2019年夏に公開予定であった映画『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』は、公開が実質1年間伸び『The Final』が 4月24日に公開、『The Beginning』が6月4日に公開となる予定だ。
筆者は会社のデスクに完全版をディスプレイするほどの原作るろうに剣心ファンである。
10年前に実写化された本作第一弾は、公開されるまでその出来映えを不安視する声が少なからずあった。
当時の日本には漫画原作→実写映画化の成功例が少なく、ましてや題材が時代劇×少年漫画であるとなると、それが日本映画史上に名を残すシリーズ作品になると予測できたものは少ないはずだ。
筆者は第一弾を当日に観に行きここに寄稿させて頂いたので、
https://getnews.jp/archives/245885
10年の月日、『るろうに剣心実写版』をずっと観てきたファンの一人として僭越ながら『The Final』のレビューをさせて頂きたい。
ここから先は軽いネタバレ(原作や予告編を見ているなら問題ない)を含むので、先に一言言わせて欲しい。

原作を昇華してくれてありがとうございました。

※ここから先まじで軽いネタバレ含みます(しつこい)

主演の佐藤健さん、大友監督がインタビューで度々口にしてきたように、るろうに剣心においてこの“人誅編+追憶編”は原作の最終章を締めるにふさわしい大名作である。
人斬り・緋村抜刀斎がなぜ流浪人・緋村剣心になったのか、そしてその十字傷を巡る愛と憎しみの物語。
そしてこの原作“人誅編+追憶編”は、大きく人誅編→追憶編→人誅編というシーン転換で進む構成担っているので、映画化が二部作になると発表された際に「マジでありがとうございます」というのと「前編(The Final)はどこまでで、後編(The Beginning)でどこまで描くんだろう」というのは原作ファンの誰もが思ったはずだ。そして「巴役は誰なのか」とも。

結論からいうとThe Final=人誅編、The Beginning=追憶編になる(これは予告編を見れば気付くと思うが)。「追憶編なしで人誅編は完結しないじゃん」と思うそこのあなた、安心して欲しい。追憶編はダイジェストのような形で描かれるが、その出来とThe Beginningへの期待感で胸がいっぱいになる。
漫画原作を実写に昇華したと先ほど書いたが、第一弾の頃から続いている“原作へのリスペクト”と、技名を叫びながら殴りかかるなど“少年漫画的演出の排除”に胸を熱くする。
第一弾では神谷道場、第二弾では葵屋や神社、第三弾では師匠の家や煉獄がそうであったように、原作での舞台がまるで実際に存在したかのようなクオリティで登場するのに感動してきたが、
今回も赤べこ、小国診療所、浦村所長の家、前川道場など前回までを遥かに上回るスケールと精緻さで登場する。これ本当に剣心という人物がいたんじゃないかと思えてくるくらい。

映画の内容を書き出すと後5万文字あっても足りないので簡単に端折るが、まず新田真剣佑さん演じる縁すげぇ。あと超強え。ムキムキの身体でパワフルかつ破壊力のあるアクションの数々。そして随所に感じさせる姉さん(巴)への想い。原作と同じくらいシスコン野郎だが、原作よりもさらに狂気を増した縁に震えてほしい。そしてその一途で悲しい愛に泣いてほしい。
剣心のアクションも当然ながらずば抜けてすごいのだが、縁に対して最愛の人を奪ってしまった負い目を感じながら、戸惑いながらも、最愛の人が望んだ平和な世を守るために戦わなければいけない剣心の辛さが、そのアクションから伝わってくるの本当にすごい。
アクションといえば土屋太鳳さん演じる操のアクション、江口洋介さん演じる斎藤一のアクション、伊勢谷友介さん演じる四乃森蒼紫のアクションどれもすごい。あと左之、お前いっつもやられてるな。

もはや成功が約束されたこの『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』、大友組がシーリーズの集大成として作り上げてきたセット・演出にも是非注目してほしい。
とにかくお金かかりすぎである。
ダイナミックかつ精緻に作り上げられたセットの数々は、縁の仕掛ける攻撃でこれでもかというくらい破壊されていく。
もはや気持ちが良いくらい、これでもかというくらい破壊されていく。

あとこの映画の登場人物は「喜怒哀楽」をほとんどセリフにしない。セリフになるのは自分のことではなく、相対する誰かに向けての言葉だ。
その代わり、この映画で登場人物の感情を表現するのは炎や雪や雨などの自然現象である。
怒りは炎、哀しみは雨、喜びは花吹雪といったように。個人的には剣心告白後のシーンで恵殿が薫に傘を渡し、薫殿が剣心に傘を渡しにいくシーンが大好き。「私はあなたに降る哀しみの雨に対する傘になるよ」と言っているようで。
この表現の美しさ、鮮やかさは原作を超えたと評判のOVA版「追憶編」を上回るものであると断言して良い。
ちなみにこのOVA版「追憶編」はNETFLIXで現在視聴出来るよ。ありがとうNETFLIX。神。
OVA版「追憶編」が原作を超えたと評されるのではその美しさだけではなく、シリーズの根幹である「十字傷の解釈」にある。
十字傷の一つ目は京都見廻組の清里明良によって、十字傷の二つ目は巴の手からすべり落ちた短刀によって付けられたものというのが原作で表現されるが、OVA版ではこの”二つ目の傷”の解釈が原作と大きく乖離することが話題となり、そして絶賛された。
ちなみにこのOVA版「追憶編」の出来が良すぎて、実写でこれを超えることが不可能だと言われいたことが、この実写シリーズが10年に及んだ原因の一つであると思う。

もちろん映画追憶編『The Beginning』でもこの解釈がどうなるかは個人的に一番注目していたのだが、ここは既に『The Final』内で明かされることになる。
そしてはっきり言おう。OVA版の解釈を大きく超えてきたよ。すごいよ大友監督…。そしてありがとうございます…早くBeginning観せてくれー!!!!

長くなりましたが私がこの映画を見終わって早48時間、まだまだ興奮冷めやりません!
舞台挨拶付きの回に行けたのですが、佐藤健さん曰く「『The Final』10回くらい観てますが、IMAXで観たときが一番感動した」とのことなので次はIMAXで観に行く。
そして『The Beginning』を観終わったら、きっともう一度『The Final』を観に行くと思う。そうすることによって、『The Beginning』から始まった『The Final』なので、もっと登場人物の心理描写を深く観れるはず。
そうやって『The Final』→『The Beginning』→『The Final』→『The Beginning』と”ループ鑑賞”することが映画『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』真の楽しみ方だと、原作ファンにこそ是非オススメしたい。

余談ですが舞台挨拶で『The Beginning』のオススメについて聞かれた佐藤健さんはアクションシーンについて
「映画第一弾〜第四弾(The Final)は緋村抜刀斎ではなく緋村剣心のアクション。つまり“人斬りを引退した”剣心のアクションでしかない。『The Beginning』は現役バリバリの人斬り抜刀斎のアクションなので、今までとは動きのキレが桁違いに違う」
と答えていた。楽しみすぎるぞ…!!

奇しくも剣心が流浪人になって神谷道場まで辿り着くまでと同じ10年が経ち、完結を迎える映画『るろうに剣心』シリーズ。
今や世界に誇る日本にアクション映画と呼べるこの芸術作品を、原作ファンこそ是非劇場で観てほしい。そして気軽に劇場に行ける日が1日でも早く訪れますように。

長く書いてしまったが、これでも伝えたいことの1/3も書けていない。
<了>

関西生まれ。 テレビとかCMとか馬とか食とか好きなので、そういう記事が多くなるかもしれないです。 執筆記事、超募集中。

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