罠の見回りって何日おきにすればいいの?

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今回はマニアックな「罠の見回り頻度」について語ってみようと思います。これから狩猟を始めようと思う人や、新たに罠免許も取得しようと思っている人の参考になれば幸いです。

そして「罠猟」と言っても色々な種類の罠があり、中には「そんなんで本当に捕獲出来るのかよ?」みたいな謎な罠もあったりします。
しかし、一般的には「罠猟」と言えば「くくり罠」(金属製のワイヤーで動物の足をくくる罠)と「箱罠」(動物が入れる檻の中に餌を撒いておびき寄せる罠)なので、今回はより一般的な「くくり罠」を例に話を進めてみる事にします。

なぜ罠の見回りが必要なのか?

『狩猟読本』によりますと「事故防止等のために、頻繁に見回りを行う事」とざっくり書いてあります。ここで言う事故とは何を指すのでしょうか? さらに『狩猟読本』を読み進みますと「くくり罠猟の注意事項」のページに

「非狩猟鳥獣がかからないように、見回りをこまめに行うこと」

「手負いのクマやイノシシをつくらないように、見回りをこまめに行うこと」

と書いてあります。つまり鹿や猪を獲ろうと思って罠を仕掛けたんだけど、非狩猟鳥獣のニホンカモシカ等が罠に掛かってしまわないように見回りをしましょうと言う事ですね。
もっとも、どんだけ見回りをしても罠に掛かる時は掛かってしまう訳ですが、そのような事態になっても、頻繁に罠の見回りをしていれば罠から外して逃がしてやれる可能性があるので頑張りましょうと言う事でしょう。

さらに熊や猪は力が強いので、罠を引き千切って逃げたり、自分の足を引き千切って逃げたりする事もあります。
こうなると非常に危険で、このような手負いで興奮状態の熊や猪に運悪く出会ってしまうと、かなりの確立で襲われて負傷する事態になります…

このような理由から「事故防止等のために、頻繁に見回りを行う事」と言われています。

頻繁に見回るって具体的に何時間おき?

とりあえず「罠猟を始めたい」と言うと「罠は毎日見回りをしないと駄目!」って答えが返ってきますが、果たして本当にそうなんでしょうか?

と、言う訳で色々と調べてみた結果「具体的な数字は出てこない」と言う事が判明しました。どれも「頻繁に見回りする事」って感じで「何日おきに見回る事」と明確に書かれている物はありませんでした。

当然、銃砲店や行政に聞いても「頻繁に見回りをして下さい」としか返ってきません。そりゃ、法令にも具体的な数字はないのですから、行政のほうも答えようがありません。

答えが知りたいので実例をぶつけてみた

そこで「実際に罠猟をしている動画」を行政にぶつけてみました。こちらの動画のパート25では

「雪が降ったので下山し、二日後に罠の回収に来た」

とタイトルに書かれています。おいおい。罠の見回り義務を放棄して下山してんじゃねーぞってのが素直な感想ですが、そこら辺は一般の人達にはピンと来ないところでしょうか?

【ニコニコ動画】カメ五郎の狩猟生活(その25)

『狩猟読本』にも「遠すぎて管理出来ない場所に罠を仕掛けては駄目」と書いてあるので、雨が降ろうが雪が降ろうが罠を回収して下山するのが筋でしょう。
雪が降って罠の回収が困難と言うならば、天気予報を見て雪が降る前に回収すべきだし、雪が降って自分の罠の位置が分からないと言うのは、明らかに管理能力を超えた数の罠を設置している事になります。

「罠の仮設は、自分で管理できる地理的範囲内で、かつ管理できる数以下とする事。」

『狩猟読本』には、こう書かれています。罠の上限30個と言っても、あくまでも最大30個と言う事で、管理出来ないのであれば数を減らしなさいと言う事ですね。

さらに、こちらの動画では罠の見回りを放棄した結果、罠に掛かった鹿が自力で立てないほどに衰弱してしまっています…

このような事態にならないように「頻繁に罠の見回りを行うこと」となっていたはずです。今回は「鹿」だったので『狩猟読本』で言うところの事故ではありませんが、例え「鹿」でも褒められる行為ではありません。

【ニコニコ動画】カメ五郎の狩猟生活(その26)

「罠猟」の場合、罠に掛かって確実に捕まえている時点で「捕獲」と言う行為は終わっています。捕獲が終わっている獲物は「罠所有者の獲物」となり、この時点でその獲物の所有権が発生します。当然、他の人が勝手に罠から外す事も盗む事も殺す事も出来ません。

と、同時に獲物に対しての責任も発生する訳です。具体的に言うと「殺す場合は速やかに、なるべく苦しまないようにする事」となります。
狩猟なので最終的には殺傷する訳ですが、どのような方法で殺傷しても良い訳ではありません。
例えば「スコップで何度も殴り、いたぶり殺す」みたいな残酷な方法で「止めさし」を行った場合、動物愛護法などで処罰されます。

「くくり罠」に掛かった獲物を放置して衰弱死させた場合はどうなるのか? 意図的ではないとしても「頻繁に罠を見回りする事で防止出来たはず」と言われたら、その様な行為は動物虐待と言われても仕方ないでしょう。

大丈夫だ、問題ない

そして行政機関(神奈川県 環境課)から返って来た返事は、

「罠は猟期終了までには回収した」

と言う絶妙な答えでした。「罠の見回り義務」についてはノーコメントと言う、いかにも「お役所仕事らしい」答えが返ってきました。
あれほど「罠の見回りは頻繁にする事」と指導してる割には、そこら辺は突っ込まないのですね。

しかし、逆に言うと「罠の見回り頻度」についての答えは出たとも言えます。

罠の見回りは三日に一度以上であれば処罰される事はない

あくまでも「2014年12月5日現在の神奈川県」に限っての事ですが、罠の見回りは三日に一度でも問題はないようです。ここら辺は都道府県の環境課によって微妙に対応は違うかもしれませんが、神奈川県に限って言えばOKです。

神奈川県の環境課の方で動画を観て対応を検討した結果なので、間違いはないでしょう。もっとも、環境課の方に電話をすれば

「頻繁に見回りをして下さい」

と言う堂々巡りになるとは思いますが、とりあえず「三日間に一度なら処罰はされない」と言う前例が出来たので

「罠の見回りは毎日しなければならない」

と言う事はないようです。毎日の見回りが出来ないので「罠猟」を諦めていた人には朗報とも言えるのでしょうか?

今回の件ではっきりしたのは「罠は猟期終了までに回収しなければならない」と明らかにされている事は絶対に駄目ですが、逆に言えば明確に禁止されていない行為については「狩猟者のモラルに任せる」と言う事でしょうか?

これから罠猟を始める人へ

確かに罠の見回りを少々怠った所で処罰される事はないとしても、やはり頻繁に見回る方が良い事は間違いありません。

例えば今回の例に挙げた動画では「獲物」が自力で立てないほどに衰弱しています。これがもしも非狩猟鳥獣だった場合、確実に狩猟免許は取り消されるでしょう。

そして「鹿」だったとしても「捕獲制限数」を上回る数が罠に掛かっていた場合、制限数を超えた分は逃がす必要があります。

狩猟免許は取ろうと思えば簡単に取れます。自動車の運転免許の方が遙かに時間も金も掛かるし難しいでしょう。
しかし、狩猟免許を手にして「罠」を仕掛けた瞬間から、狩猟者としての責任も生じる事を忘れないで欲しいのです。

かつて「トラバサミ」も法定猟具として認められていましたが、事故の多さや罠に掛かった動物に苦痛を与えると言う事で禁止されました。
同様に「くくり罠」も獲物に少しでも苦痛を与えないように「止め輪」(必要以上に足が締め付けられないようにする為の物)が無い物は使用禁止になっています。

この様な対策を講じて「罠猟」の世界はギリギリ成り立っているのです。なのに罠に掛かった獲物を放置して衰弱死させる人が続出したらどうなるでしょう? おそらく「トラバサミ」と同じように禁止される事になるはずです。

そうなると、残りは「箱罠」くらいしか鹿や猪に対する罠がありません。「箱罠」は設置するのも大変だし手軽とは言えないので、実質「罠猟終了のお知らせ」(鳥類除く)とも言える事態に成りかねません…

そんな訳であれこれ書きましたが、結局最後は「狩猟はルールを守って」とか「狩猟者のマナー向上」と言う決まり文句に落ち着いてしまうのは仕方ないでしょう。

まあ、色々と面倒だしうるさく言われる事も多い「狩猟」ですが、それ以上に得るモノも色々とあるので筆者的にはオススメです。興味がある人は、ひとまず最寄りの銃砲店に相談してみると良いでしょう。狩猟免許の取り方などを詳しく教えてくれるはずですよ。

酒と料理に情熱と脂肪を燃やすフリーライター ”日の丸構図で寄りまくる!”と言う素人写真を武器に暗躍する。美味しい料理を世界にバラ撒く”飯テロリスト”として各国の情報機関にブックマークされたが反省はしていない。 取材依頼(新店舗、新メニューのPR)その他記事の執筆依頼は下記のメールアドレスまでお願いします! [email protected] なんとなく作ったサイトも絶賛稼働中! http://foodnews.jp/

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