文部科学省は28日、高校授業料無償化の朝鮮学校への適用を巡り「適用しない」と発表した。
下村博文文科相は同日に行われた記者会見で、「朝鮮学校については、拉致問題に進展がないこと、朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)と密接な関係にあり、教育内容、人事、財政にその影響が及んでいることなどから、現時点では国民の理解が得られない」と述べ、適用しない理由として挙げた。
また、下村文科相は「拉致や核、ミサイルの問題を解決し国交正常化に努力してほしいというメッセージにもなる」とも話した。
民主党政権下の2010年4月から施行された高校無償化法(就学支援金制度)。開始当初から、朝鮮高校へ就学する生徒は除外されたままだった。そして、今年10月、田中眞紀子文部科学大臣は、朝鮮学校への適用について、「この内閣がそろそろ政治的な判断をする時期」と発言した。しかし、解散・総選挙を迎え、結局実現されないまま、自民党に政権交代となった。
そして、その直後に朝鮮学校の高校無償化見送りへというニュースが飛び込んできた。この問題に接するたびに、何度も打ちのめされたような気分になったが、政権交代早々にこの問題について言及する新政権に、不安と不信を覚えた。
まず、朝鮮学校と拉致問題を結びつけるのはあまりにも乱暴だ。朝鮮学校を無償化から除外することで、北朝鮮に何らかの影響を及ぼすのかといえば、それは限りなくゼロに近い。無償化から朝鮮学校が事実上除外されて2年以上過ぎたが、拉致問題は解決に向けて進展しているのだろうか?それが何よりの答えではないのかと思う。
無償化は、学校のためにするのではなく、学びたいという子どものためのものだ。それなのに、なぜ朝鮮学校を無償化から除外するのか。それは、「差別」を正当化するための行為で、いわばガス抜きにしか過ぎない。日本は現在、経済や震災後の復興などさまざまな問題を抱えているが、そこから目をそらさせようとする時、「差別」はこのように格好の道具になる。
これまでも、ジュネーブにある国連人種差別撤廃委員会は17日、日本の人権状況についての見解をまとめた報告書を公表。在日コリアンや中国人の子弟の学校が「公的支援や補助金などの面で差別的扱いを受けている」と指摘している。
朝鮮学校の除外問題についても「子どもたちの教育に差別的な影響を及ぼす行為」として「懸念」を表明、教育の機会を差別なく与えるよう日本政府に勧告した。こうした海外からの声について、新政権をはじめ下村文科相はどのように思っているのだろうか。
一方、先日ツイッター上で在日朝鮮人2世の女性が「うれしいやんか。東大阪市役所の垂れ幕」と述べ、一枚の写真を掲載した。そこには「祝 大阪朝鮮高級学校 全国高校ラグビー大会 出場」と書かれた横断幕などが写っていた。東大阪で生まれ育った私は「大阪朝鮮高校は大阪&東大阪市の宝」と返事をした。それを見て、電車の中で涙したという声も上った。
朝鮮学校に通う子どもは、この日本で生まれ育った。私たちの社会の子どもでもある。私自身の子どもは日本の公立に通っているけれど、朝鮮学校に通う子どもも一緒にこの社会の未来を作っていく宝物だと思う。
そして、朝鮮学校が無償化から除外をされること、それを多くの人たちも黙って見ていてはいけないんじゃないか。何かを除外することでしか、成り立たない社会のシステムは怖い。黙っていることは、それを認めたと同じ事だ。
朝鮮学校の次に除外されるのは、きっとあなたであり私。決して他人事じゃないと思う。
※全国高校ラグビー大会の3回戦、大阪朝高×茗溪学園は1月1日に第1グラウンドで11:50から行われる。