もはやどんな企業も、地球温暖化や気候変動を無視した経営は許されない。CSR(企業の社会的責任)の一環にとどまらず、事業戦略として取り組む必要がある―――。
そんな気運のなか、東京・秋葉原で開催されたのが「環境ビジネスフォーラム 『これからの脱炭素経営』」。
当日は、企業経営者、環境担当者、開発担当者などで満席のなか、「再生可能エネルギーが生み出す新しい経済と社会の生態系」(くにうみアセットマネジメント山崎養世代表取締役社長)や、「RE100――リサイクル企業が目指す2050年 再エネ100%」(エンビプロ・ホールディングス中作憲展執行役員)などのカンファレンスのあと、パネルディスカッション「脱炭素経営と社内意識啓発」へと続いた。
このパネルディスカッション「脱炭素経営と社内意識啓発」では、リクシル川上敏弘EHS推進部長、アルファシステムズ大沼慶雄品質管理部課長、セブン&アイホールディングス尾崎一夫CSR統括部オフィサーが登壇。
プレゼンターは、環境省 地球環境局 地球温暖化対策 奥山祐矢 課長。モデレーターは「環境ビジネス」白田範史編集長。6人はそれぞれ、これからの脱炭素社会にむけた、社内意識啓発や気運醸成への現状と課題、ヒントなどを語った。
「地球温暖化対策はなかなか従業員に受け入れられない」
環境省 奥山課長は冒頭、日本のSDGs(国連で採択された「持続可能な開発目標」)について、「CSR担当では8割以上で定着しているが、中間管理職や従業員、ステークホルダーなどにはまだまだ認知されていないといった課題がある」「SBT設定を目指す企業、再エネ導入の目標設定の支援を継続していく」と。
SBTは、産業革命時期比の気温上昇を「2度未満」にするために、企業が気候科学(IPCC)にもとづく削減シナリオと整合した削減目標のこと。
こうした環境省の取り組みのなか、各企業はいまどんな現状にいて、どう動いていくか。
セブン&アイホールディングス尾崎オフィサーは「グループ28社で環境担当者が話し合う環境部会を設けている。使命としては、お客様にどうやってエコ意識を伝えていくかが重要。COOL CHOICE(地球温暖化対策に資する「賢い選択」)も、ほぼ全社員に定着していると実感している」と。
また、ソフトウェアの開発・製造などを手がけるアルファシステムズでは、小売業などとは違う事情があると、同社大沼課長はいう。
「ソフトウェア企業の場合、実機やハードウェアがないなかで、地球温暖化対策はなかなか従業員に受け入れられないケースがある。地球温暖化対策を啓発していくという意味では、COOL CHOICEという国民運動も上層部は受け入れられたけど、従業員には縁遠い感じがある。そこは苦労している」(大沼課長)
従業員たちに地球温暖化対策やCOOL CHOICEなどを意識させるヒントに、大沼課長は「レクリエーションの現場」をあげる。
「環境プラスアルファ、プラス地球温暖化対策という取り組みを」
「たとえば川崎にある事業所では、川崎市主催のボランティア活動に参加しながら、社内で温室効果ガス削減にむけた意識づくりを啓発していく。環境に直接、かかわらない仕事現場でも、こうしたレクリエーション的な観点から地球温暖化対策について触れていく。社員交流という面から取り組むと入りやすいかなとも」(大沼課長)
いっぽう、リクシル川上部長は、「新しい環境基準が必要だとなって、まず経営陣や人事最高責任クラス、事業部門のトップなどとディスカッションした。パリ協定はなんだとか、グローバルの先進的な企業はなにやってるのか……最初は勉強会にちかい感じだった。正しい議論するための地ならしというイメージ。で、リクシル環境ビジョン2030『環境負荷ネットゼロ』を立ち上げていくうちに、おのずとSBT設定にちかい『なにをやるべきか』がわかってきた」と伝えた。
こうした3社の現状を受け、モデレーターの白田編集長は、「地球温暖化対策を、事業プラスアルファのような追加的になにかやろうとしても無理がある。なにかを我慢するとか、なにかを節約するとかだと、長続きしない。波及もしない。社内に浸透しない」と続く。最後に白田編集長はこう伝え、パネルディスカッションを閉じた。
「環境のためには、レクリエーションに効果があるとか、消費者にとっても別のお得感があるとか、環境プラスアルファ、プラス地球温暖化対策という取り組みを、積極的に取り組んでいかないと、みんなが同じ方向に流れていかないと感じた」
地球温暖化対策の重要性が年々さけばれていくなか、こうした脱酸素経営をめざす企業の取り組みは、今後ますます注目されていくはず。