「銀ブラ」といえば、現在では「銀座をぶらつく」ことで概ね定義は一定している。
しかし、諸説あり「銀座でブラジルコーヒーを飲む」ことであるとする説もある。
言葉は生き物で時代により変化するものなので、その起源を論ずるつもりはない。最近は銀座には新しいビルがオープンし、装いも新たに変化しつつある。
記者は銀座でブラジルコーヒーを飲むことをあえて定義として採用し、銀座をぶらつくことを「新・銀ブラ」と定義して一日ぶらついてみた。
今回一緒にぶらついてくれるのは、現役の女子大生で米国の大学に在学するニューヨーク在住の屋代栞さん。日本の大学はすでに卒表し、米国の大学での卒業を目指す彼女は、あまり銀座には来たことがないという。世界の流行の最先端であるニューヨーク在住の感覚を織り交ぜながら新しい銀座を含めて紹介してもらうことにする。
クリスピー・クリーム・ドーナツ
彼女と午前10時に有楽町イトシア地下1階にある「クリスピー・クリーム・ドーナツ 有楽町イトシア店」で待ち合わせ。
フードコートは午前8時からオープンしているので、朝の待ち合わせには便利だ。有楽町駅前という立地の良さも選択の理由だ。
ドーナツというとオジサン世代には油っぽくて砂糖がジャリジャリまぶしてあってちょっと苦手というイメージがある。
もう何年もドーナツなんて食べてない。記者も一緒に食べてみた。
ところが、見た目によらず油っこくもなくパサパサもしていない。
皿に盛っているのは、『ピンク ストロベリー チョコ』、『ダブルベリー グレーズド』、『オールドファッション ブルーベリー』の3種。
ピンクも鮮やかな6月13日までの限定商品だ。
屋代さんは「SNS映えしますよね!」と、若い女性が写真を撮ってSNSにアップすることを前提にしてるようだ。
--米国でのSNS事情はどうなんですか?
「やはり、日本と同じでインスタがものすごく流行です。写真がメインという直感的な感じがいいんですかね。このドーナツのようなピンク色が映えるようなものはニューヨークでもすぐにアップされるのではないでしょうか。というか、クリスピー・クリーム・ドーナツはアメリカのブランドですしね(笑)アメリカ人はドーナツ好きなのでどこにでもあるんですよ」
クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパンのPR担当である関舞奈さん(写真右)に話を聞いた。
「屋代さんが言われたように米国のブランドで現在は30カ国に1100店舗を展開しています」
--そういえば私もセブに取材で留学中に見ましたよ
「ありがとうございます。フィリピンにもありますね。有楽町(銀座)はオープンして9年目なんですが、今注目のエリアですよね。その意味ではいい場所に早くお店を出せたことは良かったと思っています」
--先見の明があったということですかね?お客さんの層はどうですか?
「普段はサラリーマンの方が多いですが、場所柄外国人の方も多いです。母国で親しんでいただいているお店だからですかね。買い物の合間に、お待ち合わせにぜひご利用ください!」
--意外とベタベタしていなくて甘ったるくもなく美味しかったですよ
「そうなんです。もちろん昔ながらのドーナツもありますが、どちらかと言うとふわふわの食感を大切にして店舗で作っていますから男性の方にも食べていただきやすいと思います。また、屋代さんが言われたように見た目の楽しさも重視していますので、テイクアウトでお持ちいただいても箱を開ければパッと目に飛び込む美しさや可愛さというのも大切にしています」
実は記者が試食した中でオススメなのは屋代さんが持っている『クリスピーフローズン ストロベリー チーズケーキ』だ。これから暑くなっていく中で、甘酸っぱいフローズンドリンクは老若男女問わずオススメの逸品だ。果肉たっぷりの涼しいフローズンとドーナツで待ち合わせからリラックスしていこう。
家族に買って帰ってきてと頼まれたドーナツをゲットして満足の屋代さんとともに次の新銀ブラに向かった。
The Pie Hole Los Angeles
銀座の街をそれこそブラブラしながら向かったのは、オープンしたてで大人気のGINZA SIXだ。
食べてばかりのようだが、実際には時間調整で歩いているのでここで昼食にする。
地下2階にある「The Pie Hole Los Angeles」はテイクアウトが主なフロアにあっては貴重なイートインスペースがある。
20席程度だが、カウンター席にはACコンセントがありスマホの充電もできる。
店名の通り、ロス発祥のパイ専門店だ。日本ではパイをわざわざ食べに行くという習慣はあまりないように思える。スイーツ系のパイのイメージがあるのだが、ミートパイ等の食事にもなるパイも多くある。
屋代さんが飲んでいるコーヒーがまた不思議なもので、アイス専用の「ニトロアイスコーヒー」。ニトロという名称を冠してはいるが同じ窒素化合物でもニトログリセリンのニトロではなく窒素のニトロゲンのことなので爆発はしない。安心して欲しい。
「あ、なんかビールのような軽さで、飲みやすくて美味しいですね」
ビールのような泡が出てくるアイスコーヒーなのだが、飲むときもストローは使用せず生ビールを飲むようにコップから直接飲むのが正しい飲み方。生ビールサーバーのようなところから出てくるので、動画でごらんいただこう。
■「The Pie Hole Los Angeles」ニトロアイスコーヒー
https://youtu.be/oKCseOuu-rg
肝心のパイの方はどうだろうか。
「あー、もう、アメリカで食べるパイそのまんまですね。レシピは同じなんですか?なるほど、やっぱり。ロスには行ったことはありませんけど、アメリカ人は食事にペロッと食べてしまいますからね。日本人はそんなに食べられうのかなぁ?ホール(1個丸ごと)じゃなくてもいいんですね。だったらミートパイでもスーツパイでも気軽に食べることができますね。これはアメリカの味そのまんまですよ!」
NISSAN CROSSING
次に向かったのは、GINZA PLACE。
ここの1階と2階には「NISSAN CROSSING」という日産自動車のショールームがある。
最新の車両からコンセプトカーまで数台が展示されている。
係員から説明を受けたり、写真を撮影したり、2階にあるカフェスペースでオリジナルグッズを品定めしながら一休みしたりと過ごし方はあなた次第。
ちなみに、やはり日本車のブランド力は高いのか、外国人観光客の姿が目立った。写真を撮影したり、動画を撮ったりと熱心に見入っていた。
三陸・銀座つながりスクエア
次にやってきたのは「TOKYU PLAZA GINZA」。
この7階にあるのが5月15日までの期間限定ショップ「三陸・銀座 つながりスクエア」だ。
宮城県気仙沼と岩手県陸前高田の情報発信と特産品販売を目的に、三陸の豊かな風土で収穫された海産物加工品をはじめ、食料品や衣料品、雑貨など現地の多数の店舗が出品している。
「三陸・銀座 つながりスクエア」開設イベントが4月15日に開催されたのだが、記者はこれを取材している。
戸羽太・陸前高田市長、エッセイストでタレントの阿川佐和子さん、菅原茂・気仙沼市長(写真左から並び順)はトークショーにおいて、復興支援の難しさや、時間の経過とともに変わっていくべき復興支援のあり方等の中身の濃いトークが繰り広げられた。席上、両市長は国と地方自治体との温度差や縦割り行政の弊害に伴う不自由さ等を実感し、市長自ら首をかけてやっているかのような覚悟を記者は感じて共感した。
そこで、ここを紹介しようと考えたのである。
復興支援はなにも寄付することだけや、現地で消費することや、ボランティアを行うことだけではない。
記者が普段食べているお米は福島産であるし、東北産の食材を使うお店があれば選んで入る。こういったこともささやかではあるが、復興支援になりうると考えている。
新・銀ブラのついでに、ここによって好みのものがあれば買い求めてもいいかもしれない。
屋代さんが選んだのは、お酒。焼酎以外はなんでもいけると豪語?する彼女は「味はわかりませんけどキレイなデザインや、かわいいカップはいいですね。東北には行ったことがないのですが、こういう場所でも関わることができるんですね」と興味津々だった。
こだわりもん一家
いろいろと見て歩いたので時刻は夕方。
最後に夕食場所として選択したのは「こだわりもん一家 銀座店」だ。
住所は銀座8丁目なので、どちらかというと新橋駅のほうが近い。
出てきた新鮮な生野菜の豪華なこと。これはお通しだそうだ。
豚ミソや豆ミソ、天然の塩など、調味料のこだわりがすごい。
ドリンクは記者はカウンター限定の焼酎の抹茶割り、屋代さんは自家製漬け込みレモンサワーを注文。
抹茶割りとは言っても、本当にその場で抹茶を立ててくれる。この部分だけ取材のために特別にテーブル席で用意してもらったが、他のものは特別なことはなく一般に提供されるものと同じ。
作る場面を動画収録しているのでご覧いただこう。
■こだわりもん一家 銀座店
https://youtu.be/7IrM27nUex8
「本日の鮮魚 お造里五種盛り合わせ」はこれで2人前。それぞれに2切れずつ入っているのだが、あまりにも分厚くてもしかして取材目的なので特別仕様かと店長に問いただしたくらいだ。これで通常なんだそうだ。
なぜ7品入っているのかも聞いてみたところ、「お刺身は通常でもできるだけサービスさせていただいていますので、特別ではありません」とのこと。
記事に掲載する写真にはつきものの「箸(はし)あげ」に挑戦してもらった。動画ではこれがなかなか難しいのだが、静止画なら合格。
「静岡 おでん盛り合わせ」は、ビルのような大根が目を引く。
静岡のおでんは何と言っても黒はんぺん。これを食べずして静岡のおでんは語れない。
その日に仕入れた魚によって変わるが、この日の一夜干しはアマダイ。
こんな大きなアマダイはなかなか見ることはできないが、旨味がギュッと閉じ込められた干物はさすがだ。
「蓮根(れんこん)チップス」は、高級なポテトチップスを食べているような感覚だった。
屋代さんいわく「あれ?レンコンはどこに行ったのかな?口の中でなくなっちゃった!」というほど、サクサクで香ばしく、柔らかい。
たいめしは具だくさんの盛りだくさん。丸ごと一尾のタイが入り、もうお腹いっぱい。
以上すべて、ドリンク別で概ね1万円ほど。もちろん二人で1万円だ。
屋代さんが我慢できなくなり店長にインタビュー。
--(屋代)ちょっと安すぎませんか?銀座のお店でもうかるんですか?(笑)
「大丈夫ですよ。市場で食材を仕入れますが、長年のおつきあいでいいものを安く仕入れることができますから」
--(屋代)アメリカでも外国人が多く働いています。最近は日本でも多くの外国人が飲食店で働いているのを見かけます。ただ、ここには見当たらないようなのが不思議で……
「そうですね。外国人がいないわけではないのですが、その方たちはみなさん日本料理を学びに来た人ばかりなんです」
--(屋代)なるほど、そうなんですね。納得しました。今度両親を連れてこようと思います!ごちそうさまでした!
せっかくなので、この記事は屋代さんに締めていただくことにする。
--今日一日、お付き合い頂きましてありがとうございました。いかがでしたか?新・銀ブラは?
「歩きまわったり、食べたり飲んだり、雨に降られたりと大変でしたが、本当に楽しかったです。こんな狭いエリアに一日中いた事はありませんでしたので、中身の濃い銀ブラになりました。また日本に戻ってきたら色々とお話を聞かせてください。アメリカでは思いの外ストレスも多いので、日本でこういう経験ができるのはホッとします!日本では『おもてなし』がキーワードになっていますが、英語ではホスピタリティーと訳されています。でも、おもてなしの心というのは外国人にはわからないような気がします。アメリカでもサービスはものすごくいいんです。ただそれは、チップ目的で目の前にはドルマークが踊っているんです。日本では違いますよね。そこが理解できない限りはホスピタリティといくら言ったところで理解は難しいのではないかと思います。そういう面で今日銀座でたくさんのおもてなしを受けたことは日本人で良かったと思いますし、外に出てみて日本の良さが実感できることもわかって頂けたらなと思います。銀座って歴史のある街じゃないですか。だから高級商業地とはいえども、日本のおもてなしの心って息づいているのかなと思いました」
※写真・動画はすべて記者撮影・収録