飛行機を呼べるタクシーのようなサービスをジェットスターが始めるというプレスリリースが届いた。
エイプリルフール企画のフェイクニュースというのは数多くあれど、リリースだけだったり、検証ができなかったりとつまらないものも多い。
記者のもとに舞い込んだプレスリリースに次のようなモノがあった。
ジェットスター・ジャパン株式会社は、スマホで飛行機を今いる場所に呼び出す“世界初”のサービス「ジェットスター スマホで家まで飛行機を呼んでみませんか?」を4月1日(土)から開始いたします。
本サービスは、呼び出したい場所や行き先を入力し、「飛行機を呼び出す」ボタンを押すことで、まるでタクシーを呼ぶかのように手軽に飛行機を呼ぶことが可能です。ジェットスターは、国内LCCで唯一、フライト予約からチェックインまでスマホひとつで済ませることができますが、今回はそれに加えて、スマホひとつあれば、飛行機を呼び出し、目的地まで直接行くことが可能になります。
能書きはこの際どうでも良い。つまり、飛行機がタクシーのように呼べるわけだ。運賃は?条件は?色々と疑問も残る同企画。
乗り物好きの記者としては、これをジェットスターからの挑戦状と勝手に受け取り、面白いかどうかは度外視して、特設ページもあるということなので、企画の実現の可能性を机上で検証してみた。
なお、記事中のキャプチャーのQRコードから特設ページに行けることは検証済みなので、試していただきたい。
さて、プレスリリースにはもっともらしい事項が記載してある。そこからみてみよう。
■サービス提供開始日 : 2017年4月1日(土)~
■ご利用金額 初乗り1km390円、その後10kmごとに73円加算されます。
※大阪(関西)⇔福岡間451kmでご利用の場合、ジェットスター最低片道運賃¥3,690となります。
同社が保有するエアバスA320-200型機は離陸の際の滑走だけで1650メートルは要する。初乗り1キロメートル乗って降りたら飛ばずに降機することになるが、細かいことはいいだろう。
他の条件はどうだろう、それも細かく記載してあった。
【ご利用条件】
・ 離着陸するための滑走路が必要なため、以下の条件を満たした場所をご指定ください。
(長さ2000m以上、幅 45m以上、77トンの重量に耐えられる舗装がしてあり、その周囲にも高い障害物のない広い敷地)
・ 夜間の発着をご希望の場合は滑走路の照明が必要です。
・ 整備作業が必要は場合に備え、駐機ができるスペースの確保をお願いいたします。
(必要な整備内容によっては何週間も出発できない可能性があります。)
・ お客様乗降時に使用する器材(パッセンジャーステップ)をあらかじめご準備ください。
・ 貨物室にお荷物を搭載される場合は貨物搭載用の車両をご準備ください。
・ 航空機は後退ができないためトーイングカーをご準備ください。
・ 給油を必要とする場合に備え、給油施設をご準備ください。(燃料給油車でも可)
・ 機内持込手荷物検査施設に加え、国際線の場合は税関、出入国審査、検疫施設が必要です。
・ 航空機誘導のための管制設備と国家資格を保持した管制官を配置してください。
・ 離着陸時に大きなエンジン音が発生するため近隣住民にご説明の上、ご理解いただきますようお願いいたします。
・ 整備士、地上作業担当者を派遣しますので受け入れをお願いいたします。
・ 離着陸を判断する気象測器(風向風速、視界、雲の高さ)をご準備ください。
・ 天候によっては離着陸できない場合があります。
(視界・雲の高さ、風速制限、降雪あれば機体除雪器材が必要)
(計器着陸装置を設置すれば離着陸のチャンスは高くなります)
・ 万が一着陸できない場合の代替着陸地をご案内させていただくこともあります。
まず、滑走路の条件は当然のことといえるだろう。余裕を持って2000メートルは妥当な線だ。
夜間は面倒なので、記者は明るいうちに呼ぶことにする。
滑走路、駐機スペース、タラップやトーイングカーの段階ですでに空港でないと無理なような気がするが、先に進む。百里飛行場(茨城空港)のような場所ならターミナルの手前で旋回して停止し、出発の際に自走してタキシングできるようになっているので、トーイングカーの必要はないかもしれない。
貨物はジェットスターのようなLCCの場合は追加料金が必要なので、ケチってハンドキャリーとする。
給油施設はないが、給油車ならガソリンスタンドにあるかもしれない。しかし航空機燃料が素人に手に入るものなのかどうかが問題だ。軽油をジェット燃料だと言い張るか。
手荷物検査施設はすべての手荷物を開封検査にしてもらい、その辺の警備員から手持ちの金属探知機を借りてくるか。
管制設備と管制官は難しい問題だ。取材と称して防衛省に協力を仰ぎ、航空自衛隊の基地を一時的に貸してもらうか。そうすればたいていの問題は解決できそうな気もする。さすがに米軍の基地はだめだろう。自衛隊もだめだと思うが、そこは借りたと言い張るしかない。
気象観測は素人では無理なので、有視界飛行で完全に晴れの日に、気象庁のデータで何とかしていただく他はない。
ダイバード(行き先を変更して代替着陸地に降りること)は定期便でもよくある話なので不問としよう。
とまぁ、ここまでは民間の空港を指定するか、航空自衛隊の基地を拝借すると言い張れば何とかなりそうだ。
では、先に進むことにする。
スマホで特設ページにアクセスして、GPSを起動。位置情報を通知して手配手続きをすすめる。
すると、成田空港から配車(配機?)される予定であることがわかる。
小籠包1年分が欲しいので、目的地を台北にする。
概算運賃を自分で計算してみる。成田から台北までは1357マイル(海里)なので、キロメートルに換算すると、1357マイル×1852メートル=2513164メートル。つまり、2513.164キロメートルとなる。よって概算運賃は18713円となった。(計算があっているかどうかは不明だが)
手配手続きが完了すると、間もなくA320-200が飛んで来るはずが…。
あ、条件を満たしていないということで、『ごめんなさい』表示が。
「責任者出てこーい!」ということで、検証は終了。かと思ったら、条件の最後に意味深な一文が。
※ 関係機関の認可を前提とします。
あ、きたねー。国土交通省が認可するわけないや。
エイプリルフール企画とわかっていても、実現の可能性を検証した記者に政府の認可前提条件を突きつけられては為す術はない。無理な検証をしてジェットスターに「ごめんなさい」ということにしておこう。
ちなみに台北線は成田発着の場合、運賃は6750円からなので、定期便を利用したほうがはるかに安いという結論に至った。
本来は写真のように機上の人となる予定だったが、今回は条件を満たさず失敗した。
もしかしたら、条件の整った空港でやればどのような「ごめんなさい」が出てくるのか興味はあるところだが、そこまでの検証には至っていない。お暇な方はぜひとも検証の続きを引き継いでいただきたい。
※スクリーンショットおよび写真は全て記者撮影