今年のロンドンの夏は熱い!?

  by chamberlain1991  Tags :  

Euro 2016 で街中が沸き立つロンドン

先週、2か月ぶりにロンドンに戻ってきた。
街中はヨーロピアン・チャンピオンシップでフットボール熱に沸き返っていた。
目抜き通りには、これ見よがしにユニオンジャックが掲げられ、フットボールファンには欠かせない場所であるパブには「カモン England!」という飾りつけがしてある。この国の人々のフットボール愛、フットボール狂ぶりは本当に異常としか言いようがない。

男どもは、ほぼどこかしらのサポーターであり、女性でもベッカム様登場以来?ファンが増えていると聞く。それでも、フットボールは依然として男の社交であり憩いの場である。日頃の、女性にたいする配慮や気遣いからいっときでも逃避する目的なのか、週末に男同士でパブに集い、フットボールを肴にパイントグラスを傾けるのは、旧き良きイギリス男性のレジャーのひとつと考えられている。そんなお国柄であるから、ワールドカップやチャンピオンシップなど大会は絶対に見逃すことができない大イヴェントなのである。

今年は、フランスで開催されているEuro2016、第一戦め、ロシアと対戦したイングランドは1対1で引き分けたのだが、その後、イングランドとロシアのファンの小競り合いがあり、暴力沙汰まで起きている。「フットボール・フーリガン」と呼ばれる輩の仕業であろう。毎度のことだが、こういう暴力沙汰まで起きるのがフットボールの国際大会。今年は、先のテロ襲撃などの影響もあって、フランス当局はかなりキツめのセキュリティを強いているようだが、やはり、起きてしまった。

通常、国外でこのような暴力沙汰などの問題を起こして逮捕されたりすると、パスポートを没収され、当局のブラックリストに載り、国外に出国を認められなくなることもある。つまり、国の恥、ということなのである。まったくもってお粗末なお話ではあるが、この「フーリガン」という輩はとてつもなく野蛮で下品な人間達の集まりだということを国も認識しているのである。

EU離脱国民投票

一方、ちまたではもうひとつ国民の一大事とも言える国民投票が迫ってきている。テレビでも新聞でも、この話題で持ちきりである。残すところあと1週間ばかりなのであるが、現在、国民の意見は真っ二つに分かれているということである。野党内、与党内でも二つに分かれていて、結果はまったく予想できない様相である。もともと富裕層は残留支持派が主流で、中産から労働者階級はほぼ離脱を支持していたのだが、ここにきて大きく離脱の方に振れだしている。シリア難民をはじめとする移民問題やイギリス経済の停滞などが離脱を支持する方向へ国民感情を大きく導いているのである。天井知らずのインフレ、それに伴わない賃金の引き上げ、人工増加による住宅問題、大学の学費値上げ、奨学金問題、NHS(健康保険関連)問題、年金や生活保護などの資金源不足による大幅カット、インフラの老朽化による都市機能の低下、以前から英国が抱える幾多の深刻な問題は、EU加盟以後に全く改善されてきてはいない。一部の富裕層を除けば、国民ひとりひとりの生活は逼迫し、豊かな国の余裕など全くないのが実情である。

損か得かでしか、ものの判断しないイギリス人は、この際、加盟国としての多額な費用をEUに支払うより、もっと自国のためにお金を使えばよいのではないのか、という考えが離脱支持派にはあるようだ。一方、EU残留支持派でもいろいろ意見が分かれていて、残留するとしても、このまま何も変わらないのなら国民投票をする意味がないので、とにかく、EU全体に大きな改革を要求するべきだとしている。英国側の要求を認めさせて優位に立った方が、国内に混乱を起こさず安泰になれるというのである。

さて、どちらに転べばイギリスにとってお得なのか?私はどちらにしてもあまり状況は変わらないような気がする。以前、通貨問題のときも、ユーロにせず、ポンドを維持するとしたときにもポンド通貨が暴落すると言われたが、何も混乱は起きなかったし、金融市場がドイツやベルギーに移っていくといわれつつも、結局はロンドン市場は今も健在である。一部の投機機関家や、投資家など、富裕層には影響が出るのかもしれないが、それも一時的なものという見通しもある。一部の投機家のなかにはそのような見込みを持っていて、離脱支持をしている人もいるようだ。

このような、国民全体に及ぶ論争のなか、事件が起きた。昨日は残留支持派の野党議員ジョー・コックスが公衆の面前で離脱派の政治グループを名乗る男に集会場で殺傷され射殺までされてしまったのだ。メディアはキャメロン首相や労働党ジェレミー・コービン氏の声明などを次々に発表している。両氏とも残留支持派であるため、ここにきて、この事件により、国民感情が残留支持に傾く可能性も出てきた。

いずれにしても、私個人としては手持ちのポンドやユーロが安くなってもらいたくないと願うだけなのである。EU離脱で円高誘導になり、対円で激安のポンドなんて結末は避けたいものだ。
って、数年あればまたもとにもどるって?数年、ていったい何年だ。

こうして、2016年の何かと熱い「イギリスの寒い夏」が今年もやってくる。

昨年9月で短くて永かった1年9か月のルーマニアのブカレスト滞在を終え、やっとイギリスに帰還。現在、まさかの完全専業主婦に。毎日、ケーキを焼いたり、スーパーでお買い得品探し。 書くことが好きであり、批判的な文章が多くて、少々皮肉っぽくてうがった見方をした書き方が、いろいろ物議をかもすことあり。