今年6月24日、東京・池袋で危険ドラッグを使用した後、車を運転した会社員の男性によって、1人が死亡、6人がけがを負う事故が起きました。
車を運転していた名倉佳司容疑者(危険運転致死傷罪で起訴)は、運転中に危険ドラッグを吸った後、記憶が欠落したと証言しています。この事件を受けて、危険ドラッグの規制強化が進みました。
従来、法令で規制されている成分を改変した化学構造を一部に持つ危険ドラッグは、規制が難しい状態にありました。その後、薬事法の改正によって、先述の化学構造を持つとみなされる危険ドラッグは、所持、購入、販売が禁止されています。
しかしながら、危険ドラッグ使用による事故は後をたたず、重篤な症状をきたし、病院へ搬送されるケースが増えています。
国立精神・神経医療研究センターは、危険ドラッグ利用経験者は40万人にのぼるのではないかという、驚くべき推計を出しています。事態は極めて深刻ですが、決定的な対策を講じ、危険ドラッグを完全に規制するには至っていません。
臓器障害などの深刻なケースも
危険ドラッグの多くは、合成カンナビノイド(大麻・マリファナの主要成分に似た化学物質)、カテノン系化合物(覚醒剤や合成麻薬MDMAに似た化学物質)に似た化学構造を持つ物質が、もっとも多いといわれています。
ところが、規制強化を回避するために開発されたと思われる危険ドラッグが出回っています。まさにいたちごっこですが、もっとも大きな問題は、使用後に、重篤な症状をきたすケースが目立つようになったことでしょう。
医療機関で搬送された危険ドラッグ使用者の治療にあたる医師の多くは、腎障害、肝障害、横紋筋融解症などの深刻な症状をきたす危険ドラッグ使用者が増えていることを指摘しています。
現時点では、救急搬送された患者が、どのような危険ドラッグを使用したか調べる検査キットなどがありません。そのため、対症療法で症状が改善するのを待つのが主な治療法となっています。
病院で治療を受けて、無事に健康を回復できればよいのですが、先述のように肝臓や腎臓の障害をきたしたりといった、一生後悔することになりかねない深刻なトラブルを引き起こすこともありえます。
安易に興味本位に利用したりしないことはもちろんですが、気分がすぐれない状態を病気とみなさない社会風潮も、危険ドラッグ問題が根本的に解決しない原因の一つではないでしょうか。
不安感が続く場合や、気分がふさぎこむ状態が一定期間以上続く場合は、医師の治療が必要な場合が少なくありません。
心療内科医や精神科医に相談することを、ためらわないでほしいですね。
写真は 足成 http://www.ashinari.com/ より