ミレニアム世代は20代前半から30代後半にかけての人たちを指します。8月30日付のウォール・ストリート・ジャーナルはこのミレニアム世代の人たちが勤めを辞めて、”勤め人”にとらわれない風通しのよい仕事で身を立てている傾向にあると伝えています。
2007年から2009年のアメリカは不況真っただ中でした。壊滅的打撃が2008年9月にリーマンショックと呼ばれたアメリカの有力投資銀行である『リーマンブラザーズ』が経営破綻したことです。経営破綻は世界的な株価下落・金融危機を引き起こしました。
ミレニアム世代はこの経済的苦境を乗り越え、ここ数年でようやく会社でも序列を上げていく立場に成長しました。
しかし、昨年のコロナ感染がまたこの世代に打撃を与えました。30代後半世代のリーマンショックを経験した人たちには、コロナ禍の’打撃の再来’は驚異でした。だからこそ2度も苦境を味わい、燃え尽き症候群のような状態の人たちが多くいました。ただ、彼らはそれでも楽観的であったのです。
楽観的な人たちは、コロナ禍で干上がった解雇から、再就職は意外に肯定的に見ています。ミレニアム世代は高給な仕事を得るためのチャンスを狙っています。しかし、その中で方向転換を試みる人たちも数多くいます。高給取りの勤め人よりキャリアチェンジを目指す人たちが増えているのです。お金を追い求めない生き方に気づいたのです。
テッサさん(33)はコロナ禍のテレワークに疲れた果て,7月に劇作家の財団のプログラムディレクターの夢が叶った仕事を辞めました。仕事を辞めてもアテがあるわけでもなく、首都ワシントンDC近くの最高級のバー&キッチンで数週間働いた後、週5回の夕方シフトでバーテンダーの仕事に就いたそうです。
テッサさんの離職理由は芸術の修士号を持ち、プログラミングを担当し作家をサポートする大好きな仕事が、コロナ禍により激減し、職場が自宅になりテレワークを細々することに、やる気を失くしてしまったそうです。ただ、バーテンダーはあくまでもつなぎの仕事として、最終的には公的な教育の仕事を目指すそうです。
フィラデルフィアにあるラサール大学の助教授だったアンドリューさん(33)は、自分の望むような職場環境ではなく、その仕事に専念する時間も熱意もなかったそうで、解決策は辞めるしかなかったと決断したそうです。しかし、仕事はあると楽観的で、今年の5月に結婚したそうです。お相手は男性、アメリカ的ですね、こういうところ。ご主人の精神的&金銭的サポートで仕事を辞めることが出来たようです。
作家志望のエヴィリンさん(27)は執筆者を目指していました。今年の7月シドニークリエイティブエージェンシーを退職しました。役職はシニアマネージャーでした。アメリカにありがちな役職は立派だけど、実情はそうでもない職種も多く、エヴィリンさんも、役職は’クリエイティブ’と言ってもも何もクリエイティブなことはしておらず、日々の業務は顧客管理だったそうです。
アメリカは日本と求職事情は異なりますし、日本で一つの会社に長年勤めることは確実に良い評価ですが、アメリカはともすれば変化を求めない覇気のない人の印象を持たれることがあります。有能な人たちはドンドン転職を繰り返し、転職の度に給料が上がっていくのが通例です。
そういう流れがアメリカの転職状況だったので、このミレニアム世代、20代前半から30代後半の人たちの格落ちの転職、もしくは次の仕事も決まらずに仕事を辞めるというのは、新しい流れのように見受けられます。
日本もコロナ禍で失業者も増えたことでしょうが、アメリカの容赦ない解雇は冷血と言える程です。
しかし、ミレニアム世代は解雇もされないのに、次の仕事も見つからずに、仕事を辞めて何かを始めようとする意気込みは、アメリカ的なスピリットを感じます。ウォール・ストリート・ジャーナルが取り上げたミレニアム世代の次なる仕事は、きっとステップアップになっていることを感じさせます。