台湾が尖閣諸島問題で中国と連携しない理由

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ブログを書くためだけに愛読している『環球時報』では相変わらず尖閣諸島の問題がかなりの割合を占めている状態です。そうした中で、台湾を巡る論評があり、いろいろ興味深かったので今日はこれについて少し。

1 日本の状況?

1つめの記事は「日媒称领土纠纷日本已处弱势 日外相欲拉拢台湾」(日本のメディアは領土紛争で日本は既に弱気になっており、日本の外相は台湾を巻き込もうとしている)という記事です。

普通ですと、ここで簡単な訳を紹介するのですが、結構長い記事ということと、もう1つ紹介したい記事があるので、概略の説明のみとさせていただきます。

国慶節の長期休暇の間も中国の数多くの監視船などが尖閣諸島周辺を航行していた。

尖閣諸島問題が長期化するにつれ、日本は耐えきれなくなってきている。

中国の船が「日本の領海区域内」に入る度に、中国側に抗議しているが、中国側は中国の領土だとして、日本の抗議を受け付けない。

中国側は何をしても態度を変える見込みは無く、消耗戦となっている。

そんな時、日本の玄葉外相が、台湾と尖閣諸島周辺の漁業交渉を再開する意向を突然表明した。これは、中国と台湾が連携することを防ごうとするもので、東南アジア諸国の中国と領土問題を抱えている国と団結し、中国の孤立化を狙ったものだ。

2 台湾が中国と連携しない理由

で、中国としては、何故同じ中国人である台湾は中国と連携して、憎っくき日本に共に対抗しないのだとなるわけですが、それを分析した記事が「宋鲁郑:台湾为什么不愿意和大陆共同保钓?」です。

これも結構長い記事なので、概略のみの紹介とさせていただきます。

台湾が中国と連携しない最大の原因はアメリカだ。アメリカにしてみれば台湾と中国が衝突しても困るが、連携されても困る。台湾と中国が共に尖閣諸島問題に取り組むということは、政治的連携に繋がりかねず、アメリカは既に憂慮を示している。

第2は、日本の植民地であったことの複雑な影響だ。日本は台湾に屈辱と差別をと経済的成果をのこした。そのため、台湾は日本に対し、恨みと恐怖、感激、少数のものは崇拝の念を抱いている。戦後の日本の経済成長も日本崇拝を強めている。

第3は中国との関係の不確実さだ。互いに長期間敵対関係にあり、時には衝突もした。改革開放政策以後交流が開かれ、国民党の下関係が安定しているとは言え、これまでの対立の影響は大きく、今後の事も不確定だ。

これ以外に野党民進党が強く反対していることも国民党としては考慮しなくてはならない。

最後に台湾は中国が尖閣諸島を掌握した場合どうするかも心配しなくてはならない。尖閣は台湾に近いわけだが、中国と台湾の関係が悪化した場合、それは戦争の緩衝地帯が狭くなることを意味する。それに漁業権を中国との間でどう交渉するか等が問題となり、政治的に極めてやっかいなことになりかねない。

3 個人的感想

台湾の日本に対する感情の分析については多少異論があるものの、それ以外の分析についてはかなり的確なものと考えます。

もし、ここに書かれたような理由で、台湾が日本に対し、あれだけの親愛の情を示してくれているのなら韓国は何故あれほどの敵対心を日本に対し持っているのかという話になります。

やはり私的には前に見た様に、第二次世界大戦後、大陸から台湾にやってきた国民党という大陸の中国人の支配があまりにひどかったが故に、それに対する当てこすりとして、日本の植民地時代の方がよかったと言っているにすぎないという考えが一番しっくりきます(『「親日」台湾の幻想』)。

正直最後に書かれていた、中国が尖閣諸島を実行支配した場合台湾的にもいろいろ困ったことになるという発想は、この記事を読むまではありませんでした。台湾問題の複雑さについて、かなり核心をついた意見かと考えます。

あと、こうした文面では書きにくいでしょうが、台湾問題も尖閣諸島と同じ領土問題であり、台湾にしてみれば、下手にここで中国に協力して、尖閣諸島が中国の実行支配となれば、次は台湾が中国に実行支配される恐れもあるというのも理由の1つかと考えます。
 

画像引用元:flickr form YAHOO

 

http://www.flickr.com/photos/hydlide/6941053980/

 

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