人気スマホゲーム「Tokyo 7th シスターズ(以下、ナナシス)」の音楽が、なぜ多くのゲームユーザーや音楽好きの心に刺さるのか。その答えを探すインタビュー企画の第3弾は、ナナシスの顔となるユニット「777☆SISTERS」の代表曲をいくつも作編曲している作曲家、KUMAROBOさん。ナナシスの中心人物である茂木伸太郎総監督・総合音楽プロデューサーの印象や、ナナシスの活動の中での印象深いエピソードなどを振り返ってもらいました。
註:本インタビューは、2月19日発売の『Tokyo 7th シスターズ COMPLETE MUSIC FILE』収録記事の一部を再編集したものになります。
ウルッと来る瞬間があったらそれは良いものなんだ
ーーナナシスの最初の印象は?
KUMAROBO もともとナナシスのことは知っていたのですが、動画などを観ていて、他の二次元アイドルのコンテンツと曲の雰囲気が違うなと思ったんです。何か音楽に特化しているような感じがして……。
ーーどの辺りにそれを感じたのでしょう?
KUMAROBO 参加されている方がボカロPの方が多かったというのもあると思うんですけど、アイドルの曲を書いている作家さんたちではなかったんですよね。あとは何というか、エゴを感じたというか。これはあとになってわかったことなんですけど、やっぱり茂木監督のエゴが良いバランスで曲に出ているんですよね。そうじゃないと僕の曲は通らなかったんじゃないかなと思うんです。僕ってあんまりオーダー通りに作れないというか、職業作家っぽくない曲を作るし、コンペもいつも通らない人なので(笑)。
ーーナナシスだからこそ、KUMAROBOさんの楽曲が受け入れられたということですかね。では、茂木総監督にはどういう印象がありますか?
KUMAROBO すごく同じ高さにいてくれるというか。総監督という肩書きではあるんですけど、同じ土俵にいる感覚なんです。だから、バンドのメンバーみたいな印象を受けました。こだわりの強いボーカル、みたいな(笑)。外に対するイメージを一番意識しているリーダーポジションのボーカルのような感じで、僕も昔バンドをやっていたから、そういうタイプのボーカルがいたら、すごく心強いんですよね。信用できるし、この人を喜ばせたい!って思います。しかも、遊びの感覚も持っているような感じもするんですよね。だから関わっていると楽しいんです。
ーーそれって、プロデューサーとして一番大事なことのように思います。
KUMAROBO ファンに対してもなんですけど、人を動かすのがすごくうまいんです。カリスマ性もありますし、それに対しての実力もある方なんだと思います。
ーーこれだけのプロジェクトを実際に動かしていますからね。
KUMAROBO 茂木さんは、自分の世界を作ることがすごく得意ですよね。たぶん音楽だけをやってきた人ではないと思うんです。音楽だけをやってきた人って実はセンスがイマイチな人が多いと思うんですよ(笑)。たとえば僕だと弾き語りは寂しいから苦手なんですよ。オケとしての派手さがないから心配になっちゃう。でもセンスがある人って、そういうことよりも情緒を優先してものを作ったりするじゃないですか。そういう感覚がナナシスにもあるんじゃないかなって思います。だから、自分の世界を構築するというのがまずあるんじゃないかなって。
ーーそれがナナシスの独特な世界観にもつながっているんでしょうね。では、ナナシスの活動で印象に残っていることはありますか?
KUMAROBO ライブを観たことですね。個人的に、ああいう大きなところでのライブを観たことがなかったので、感動的でした。
ーーどのライブを観たんですか?
KUMAROBO パシフィコ横浜での2ndライブと、幕張メッセ イベントホールの3rdライブですね。3rdは生バンドが入っていたので、2ndとの差がすごかったです。3rdライブは2公演観たのですが、特に最後の公演なんかはキャストさんの心から楽しんでるエネルギーを感じて、ものすごく良かったです。
ーー3rdライブは、最後のKUMAROBO攻めが凄まじかったですよね(笑)。特にクライマックスでの「FUNBARE ☆ RUNNER」から「僕らは青空になる」の流れが!
KUMAROBO あぁ、良かったですね! ありがてぇって思いました(笑)。
ーー観ててもすごく感動的で泣けたんですけど、ご自身が泣いたりすることは?
KUMAROBO いや、自分の曲だとまだイメージができるので、他の人の曲のほうがウルッと来ちゃいました。たとえばkzさんだと「Sparkle ☆ Time!!」がすごく良かったです。生バンドになったことで、間奏をちょっと伸ばしているところがあって、あそこがすごく良かったです。おおぉ!! いいなぁ!って。
ーーちなみに「Sparkle ☆ Time!!」を作ったkzさんは、KUMAROBOさんのファンだと言っておりました。
KUMAROBO いやいや、本当に恐縮です……フフ(照)。
ーーそんなKUMAROBOさんに自身の楽曲を解説していただきたいのですが。「僕らは青空になる」は、ライブでもすごく盛り上がる曲です。
KUMAROBO 曲自体は5年以上前に、何用というわけでもなく作っておいたもので、それがちょっとずつ変化していったものが残っていたんですね。岡ナオキさんからいただいていたオーダーとは全然違っていたんですけど、その曲も提出してみたらそれが採用されたという感じでした。
ーーこの曲は、シンセのイントロが印象的ですよね。夏感がすごくあるというか。
KUMAROBO でも夏感を出そうと思っていたつもりは特になくて。そもそもこういう曲が個人的に好きなんです。とてもフレッシュというか。僕的には、あまり職業作家っぽくない曲だと思っているんですけど、こういうのが好きなんだよねっていうのをそのまま作っていった感じでした。
ーーこういうキラキラした感じなのが好き?
KUMAROBO そうですね。でも別に自分がアーティスト寄りだと思っているわけではないので、そこは作家っぽく。ちょっと派手になる要素を入れてみようかと思って、あのシンセは入れているんですけど。
ーーそれが歌詞が入ることで、すごい夏の曲になった感じですよね。
KUMAROBO 全然違和感がなかったですよね。声が乗ったときによりそう思いました。この曲ってこういう曲だったんだって。僕は曲を作るときに基本的に季節感とかをあまりイメージしてないんです。ただ歌いながら作って、何となくこれが気持ち良かったとか、ウルッと来る瞬間が一瞬でもあったら、それは良いものなんだってことにしているんです。それがきっと、どこかで誰かに通じる瞬間があるんじゃないかなと思って。
『Tokyo 7th シスターズ COMPLETE MUSIC FILE』『Tokyo 7th シスターズ COMPLETE MUSIC FILE』が2月19日に発売になります。ここで紹介しているKUMAROBOさんのインタビューの完全版を始め、総監督・総合音楽プロデューサーの茂木伸太郎さんによる全楽曲&アートワーク解説、豪華クリエイター陣/各キャストのインタビュー、篠田みなみさん(春日部ハル役)と高田憂希さん(天堂寺ムスビ役)の特別対談を収録。表紙には描き下ろしイラストを使用し、インタビューページではキャラクターイラストやCDジャケットイラストも交えて掲載。同作の音楽の世界の魅力に迫る1冊です。
2018年2月19日発売
定価(本体2,500円+税)
発売リットーミュージック
ISBN 978-4-8456-3203-9