【犬】収縮リードの使いかたと危険性

  by 田中 雅織  Tags :  

収縮リード=伸び縮みする巻取りタイプのリード(正しくはフレキシブルリード・リトラクタブルリード)
この収縮リードを使っている方も多くいると思います。実はこの収縮リードで散歩を行い、危険な事故にあったという報告も多くあります。収縮リードが原因ともなる事故によって犬が大怪我を負ったり、時には死んでしまったりもしています。また、ヒトも収縮リードでは犬のコントロールが効かないせいで、急な場面で紐の部分を掴んで火傷を負ったり、指を切ったりなどの怪我をすることがあります。
 海外で人気のテレビチャンネルであるルアニマルプラネットでも有名で、野生動物の保護活動をしている獣医師Karen Beckerさんは、自身のホームページでこの収縮リードの危険性について訴えています。(英文)
http://healthypets.mercola.com/sites/healthypets/archive/2014/06/11/retractable-dog-leash.aspx?x_cid=20140929_ranart_retractableleash_facebookpets

 では、この収縮リードをどのように使うのがベターなのでしょうか。今日は収縮リードの使いかたをご紹介します。

街中での散歩には使わない

基本的には散歩中の歩行時には収縮リードを使いません。通常の歩行時なら、長さは1m~2m程度の短いリードで充分です。街中の散歩では、多くの人もいます。車の往来もあるでしょう。また、愛犬が嫌いな犬にも出くわすかもしれません。散歩での歩行時は犬を飼主の左側につけて歩くようにします。これを訓練用語では脚側行進・脚側歩行と呼びます。愛犬は常に飼主の左側をキープして歩けるようにトレーニングをしましょう。そうすれば、突然の車の往来や、嫌いな犬に遭遇して愛犬が興奮してもコントロールが楽になります。歩行時は常に飼主の左側について歩くほうが安全です。必ず起こる不測の事態にも、しっかりと対応できるように脚側歩行をトレーニングすることをお勧めします。しっかりと脚側歩行ができる犬は、多くの場合でリラックスして歩けるので、不測の事態が起こっても急に犬がパニックになることへの予防策にもなります。このため、歩行時には収縮リードは必要ありません。

結局、壊れてしまう

ものは必ず壊れますよね。収縮リードも同じく壊れます。私はドイツ製の収縮リードを持っていますが、今までに数回、故障して縮まなくなったり、紐が切れたりしました。もうこうなると、全く役に立たないばかりか、紐が切れてしまっては、リードとして役目を果たせません。

収縮リードはこう使う

散歩の道中に公園などの広くて安全な場所に着いたら、収縮リードに替えて、愛犬とキャッチボールをしたり、追いかけっこをします。これは運動にも大きく貢献します。この時、犬は沢山走るので収縮リードの出番となります。紐のロック機能をOFFにしておけば、犬が走ると延びて、犬が戻ってくれば縮みます。また、もし何か危険が迫っていれば、直ぐにロック機能をONにして犬の動きを止める事ができます。そして「オイデ」のコマンドで呼び戻せば危機回避にもとても便利に使えます。また公園などから出て歩き出す時には普通の短いリードに付け替えて歩き出します。こうしてリードを使い分けることで犬は収縮リードが遊びの合図になり、短いリードは歩行の合図にもなり、メリハリを持たせる事もできます。

収縮リードの危険性

収縮リードの危険性はDr,Beckerの指摘の通り、いざという時の事故に大きく関係します。収縮リードの危険性について、詳しくは私の過去のブログでも紹介しています。
http://ameblo.jp/healthydogownership/entry-11933309603.html

訓練をした犬に使うべき道具

収縮リードでは、いざという時に危機回避が困難になります。なので日頃から適切なトレーニングを行って、危機回避をリードに頼るのではなく、コマンド(命令・指示)で回避できるようにしたいものです。
 飼主にも犬にも適切な訓練がされていれば、危機回避をリードに頼る必要はなくなります。そしてこの、収縮リードの機能を活用すれば、ドッグランでなくとも愛犬の運動や遊びの時などに、とても有効に使うことができるでしょう。

画像は著者撮影のもの。

DBCA認定ドッグビヘイビアリスト(犬の行動心理カウンセラー)・JCSA認定ドックトレーナー(家庭犬訓練士)・動物行動学研究者(日本動物行動学会)。 警察犬訓練所でドッグトレーニングを学び、その後に英国の国際教育機関にて”犬の行動と心理学上級コース(Higher Canine Behaviour and Psychology)”を修了。ドッグビヘイビアリストとして問題行動を持つ犬のリハビリを行っている。保健所の犬をレスキューする保護活動にも精力的に取り組んでいる。 動物行動学・心理学・認知行動学を専門とし、犬がペットとして幸せな暮らしができるよう『Healthy Dog Ownership』をテーマに掲げ、動物福祉の向上を目指して活動中。 一般の飼主さんだけでなく、行政や保護団体からの依頼も多く、主に問題行動のリハビリが専門。 訓練(トレーニング)やリハビリの事、愛犬との接し方やペット産業の現状などについて執筆している。 著書:散歩でマスターする犬のしつけ術: 愛犬とより強い絆を築くために(amazon Kindle)・失敗しない犬の選び方-How to Choose Your Dog-(amazon Kindle)

ウェブサイト: http://www.healthydogownership.com

Twitter: HealthyDogOwner