【TRDI】 防衛省技術研究本部 陸上装備研究所に行ってみた

今回は神奈川県の淵野辺にある『防衛省技術研究本部 陸上装備研究所』から最新の装備を紹介してみましょう。
ちなみに『陸上装備研究所』では、その名の通りに「陸上装備」に関する研究開発を進める研究所でして、近年では陸上自衛隊の新式戦車である『10式戦車』が初めて姿を見せた場所でもあります。年に一度「一般開放」をしているので行ってみました。

【 CBRN無人自動車 】

今回の目玉はやはり「CBRN」(シーバーン)と呼ばれる無人自動車です。これは読んで字の如く

「化学、生物、放射性物質、核」

の頭文字を取った物でして、いわゆる昔の「NBC」(核、生物、化学)兵器の現代の呼び方と思って頂けると幸いです。ちなみに現在では「CBRNE」と呼ばれる事が多く「爆発物」(仕掛け爆弾)の頭文字も加える方が一般的です。

ぶっちゃけ超分かりやすく言うと

「色々と危険なモノに汚染された地区でも無人機だから行動可能だぜ!」

みたいなコンセプトで作られた陸上自衛隊の装備と言う事ですね。一応は有人による操作も出来そうですが、基本的には「無線」を使って遠くから遠隔操作する事に特化したハイテク装備なのです。

と、説明した所で興味が無い人にはピンとこないかと思われますが「20キロ離れた場所から遠隔操作出来る!」(中継車も使うけどね!)を目標に開発しています。つまり放射能やら毒ガスなどに汚染された地域から離れて作業させる事が可能で、原発の事故とか頻繁にあっても非常に困りますが、そのような困った事態に対応出来る為の装備と言う事でしょう。

そう言えば、確か東日本大震災の時は、放射能が漏れまくりの原発を偵察する為に「防護服をパイロットに着せてヘリコプターによる強行偵察」とかやっていたような記憶がありますが、そのような場面にこの『CBRN無人自動車』があると大活躍する予感です。

車体正面のドーザー(排土板)で瓦礫を押しのけて、情報を集めたい場所まで無線操縦で移動し、車体に搭載されたマニピュレーター(ロボットアーム)で物体を掴んで採取する事も出来ます。

すなわち「情報収集」と言う偵察だけであれば、昨今は無人航空機やら無人ヘリコプターなどの装備もありますが、ちょっとした作業(サンプルの採取、危険物の除去)などの作業も出来るのが売りと言えるでしょう。

個人的には物凄く有効な装備と思いますが、わざわざ専用の車両を作る必要があるのかなとは感じました。恐らくはベースとなる車両(エンジン、足回り)はすでに配備済みの既存の物を使っているであろうとは思いますが…
恐らく他国ならば普通の兵員輸送車(装軌車両、装輪車両)に装備をポン付けする程度かなと。

逆に言えば専用車両として作られたので「CBRN対応無人自動車」としては恐らく世界一の高性能である事は間違いないでしょう。

【 IED対処システム 】

さらに地味な装備ですが『IED対処システム』の研究も進んでいるようです。写真のトラックに積まれた「各種レーダー」を使い、地中や物陰に隠された爆発物(IEDなどの爆弾)を地味に探す為の装備です。

普通に民生のトラック(日野 DUTROがベース)に発電機とレーダーとコントローラーを積んだだけのように見えます。と、言うよりも実際にそんな感じです。
前述の『CBRN無人自動車』が数の少ない超高級車両なのに対し、その真逆の装備と言えるでしょう。

どんな車両にも『IED対処システム』を搭載出来ると言う事なので、割とローコストで普及させる事が可能かと思われます。もっとも各種レーダーの値段はそれなりなので安い装備とは言えないかもしれませんが…

「マイクロ波レーダー、ミリ波レーダー、レーザーレーダー」と言う複数のレーダーを使用し、効率よく危険物を探す事が出来るので、地雷を探す処理スピードは格段に向上しそうです。

これまた非常に素晴らしい装備かと思われますが、逆に一昔前の戦術には通用するのか疑問です。某国では

「深い縦穴を掘って対戦車地雷を何個か積み重ね、その上に丸太の棒を置いて地雷探知装置を回避する」

と言うローテクながらも有効な地雷の埋設方法もあるので、結局は「いたちごっこ」になりそうですね。
それでも敵に「深い穴を掘らせる」などの労力を強いる事が出来るならば、決して無駄ではありません。

【 120ミリ迫撃砲誘導システム 】

こちらは撮影禁止の展示室にあったので写真はありませんが、何気に自衛隊も「精密誘導弾頭」の開発は進んでいます。既存の「120ミリ迫撃砲」に改良型弾頭を組み合わせる事で、ローテクな迫撃砲が最新の精密誘導兵器に生まれ変わります。

まあ、自衛隊なので「兵器」と言う単語はNGですが…

簡単に言うと迫撃砲弾の弾頭に「レーザー誘導装置」を付ける事で、レーザーを照射した目標に対して高い命中率を出す事が出来るぞと言う事です。本来、迫撃砲と言うモノは「一定の範囲に対して面で制圧する」と言うコンセプトなので、あまり精密な射撃は得意ではありません。一応は

「精密射撃が可能になる事で、民間に対する無用な損害を減らす事が出来る」

となっています。勿論、その通りなのですが、実際の所は

「航空支援なしでも敵装甲車両に対する攻撃が可能」

と言う所ですね。本来は航空機のレーザー誘導爆弾や地上発射のレーザー誘導ミサイルの替わりに、それなりに数が揃っている「迫撃砲」で敵の装甲車両を装甲の薄い上面から攻撃するのが将来的な目標かと思います。
現在は「特定の建物に対するピンポイント攻撃」ですが、最終的には「移動する目標に対するピンポイント攻撃」まで研究は続くでしょう。

若干、興味がない人には「へー」とか「そんなの飛行機でいいじゃん」とか思われるでしょうが、数を揃えやすい「迫撃砲」で敵の戦車を攻撃出来ると言うのは非常に凄い事なのです。
携行型の対戦車ミサイルよりも射程が長く、装甲の薄い上面から攻撃出来るメリットは計り知れません。

【 その他もろもろの装備 】

他にも「防弾ベスト」(防弾チョッキ)などの展示もありましたが、いかんせん全体的に「地味」な展示が多いです。個人的には

『軽量戦闘車両システム』

とかドーンと来ないかなと期待していたのですが、今年は間に合わなかったようです。来年以降に期待しましょう。
ちなみに来場者に配られるパンフレットの表紙には、敷地内の外壁の近くと思われる場所で撮影された『軽量戦闘車両システム 火砲型』の写真があるので、そう遠くない未来には見れる日が来ると思われます。

【 販売コーナーもあるよ! 】

入口付近には「お土産コーナー」とも言える即席の販売所があり、各種グッズを購入する事が出来ます。
が、微妙に民間委託なのか、わりと普通に通信販売で手に入るアイテムが多かったような気がします。よく見ると

「百里基地 ランウェイタオル」

とかマニアックなアイテムも有りましたが、ちょっとマニアには物足りないし一般人には興味が沸かないラインナップには疑問が残りました。
普通に自衛隊の「糧食」(食料)とかを売った方が喜ばれると思うのですが?

しかし「航空自衛隊ボールペン」とか「部隊章」「カレンダー」などは価値ある1品かと思われるので、開放日には「お小遣い」も持って行った方が良いでしょう。

【 軽装甲機動車もあるよ!! 】

流石にコレではマズいと言う事で『軽装甲機動車』も展示されていました。所属部隊が確認出来なかったので、これは純粋に研究用の車両として敷地内にあったのかと思われます。

いかんせん、研究用なので塗装も「オリーブドラブ」の単色で、航空自衛隊仕様なみの地味さ。
ちょっと盛り上がりには欠けますが、個人的には好きな車両です(どうせなら車内も見学させて欲しかった…)

【 10式戦車もあるよ!あるよ!! 】

困った時は『10式戦車』の出番です。とりあえずコイツを展示しておけば恰好つくはず!(確信)
実際、やはり『10式戦車』は良いモノですね。これまたナンバーが「99」なので『防衛省技術研究本部』の実験用車両かと思われます。演習場内を走り回ったであろう車両は、それなりに「使い古された感」はありますが、ある意味「戦車っぽい」と言えるでしょう。

改めて『10式戦車』について説明するのもアレですし、説明すると長くなるので割愛しますが、とにかく凄い戦車です。モジュール式の装甲に各種センサー、カメラなどが見られ21世紀の戦車に相応しい装備となっております。

【 防衛省技術研究本部 陸上装備研究所まとめ 】

若干、「総合火力演習」やら「観艦式」などと比べると地味な印象は拭えませんが、ある意味「自衛隊の最新装備」を間近に見られると言う事でオススメなイベントです。

今年は間に合いませんでしたが『軽量戦闘車両システム』も最初に見られるのはココかと思われるので、来年辺りに訪れてみるのも一興です。また解放イベントにしては微妙に混んではいないので、のんびり見学出来るのは良いですね。

あと何気に『ガンダム』もココで研究開発しています。もっとも大型モビルスーツではなく、あくまでも『先進個人装備システム』との事で、つまり個人用装備の事ですが…

それでは、みなさんも気が向いたら『防衛省技術研究本部 陸上装備研究所』の開放日に足を運んでみて下さい。

酒と料理に情熱と脂肪を燃やすフリーライター ”日の丸構図で寄りまくる!”と言う素人写真を武器に暗躍する。美味しい料理を世界にバラ撒く”飯テロリスト”として各国の情報機関にブックマークされたが反省はしていない。 取材依頼(新店舗、新メニューのPR)その他記事の執筆依頼は下記のメールアドレスまでお願いします! [email protected] なんとなく作ったサイトも絶賛稼働中! http://foodnews.jp/

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