今秋公開の映画がすごい! 柳楽優弥主演『最後の命』

  by 松沢直樹  Tags :  

急に涼しくなって、秋らしいお天気になってきましたね。秋といえば芸術の秋ということで、8月からずっと、今秋公開される映画のマスコミ招待試写に出かけていました。今秋劇場公開される作品は、おすすめできる作品がそろってますよ。映画ファンは近くの劇場の公開スケジュールを要チェックです。

その中でもおすすめしたいのが表題の作品。柳楽優弥主演の『最後の命』です。
とにかく出演俳優陣が豪華。加えて、主題歌をCoccoが担当するなど、音楽ファンも息をのむリッチなサウンドトラック。原作の複雑なストーリーを見事に展開していく映像表現も見応え抜群。第133回芥川賞作家 中村文則氏の原作を読んだ文学ファンにもおすすめできる映像化作品だと思います。

幼少期に犯罪に巻き込まれた明瀬桂人(柳楽優弥)と冴木裕一(矢野聖人)が再会した後、ラストに秘密が解き明かされるわけですが、再会後に展開される二人の心の闇が見事に映像化されていて、150分の上映時間が短く感じる作品です。原作本を読んだ後に試写会に出かけましたが、ぐいぐい引き込まれました。今秋おすすめの1本です。

ネタバレになるので詳細はこれ以上書けません。もどかしい気持ちで書いた私の映画評を、まずはご覧くださいまし。

登場人物の人生が破壊させられる非情と、運命を乗り越えた希望

誰でも一度は、自分の未来をデザインする時期があるはずだ。
自分の理想や未来への思いは、自分の中から純粋に生まれてくる。若い時ほど、そう信じて疑わない。
この見解は、おそらく大多数の人に同意を得られるのではないか。その考えに疑問を投じるのが本作『最後の命』だ。

本作は、第133回芥川賞を受賞した作家・中村文則氏初の映像作品でもある。
一般的に、文芸作品が読者に構築した世界観を映像化するのは困難だといわれる。しかしながら本作は、原作を丁寧に内包し、原作が投じる問題の本質を映像化することに成功している。

幼少期に、町に住むホームレスが集団で女性を暴行する現場を目撃する明瀬桂人(柳楽優弥)と冴木裕一(矢野聖人)。二人は事件の記憶に苛まれながら成長していく。その記憶は、二人の性の炎に、ゆるやかな成長を許さない。またたく間に業火となり、桂人と裕一 の人生を焼き尽くしていく。 二人の間に現れた恋人・小泉香里(比留川游)もそうだ。

飛び火した性の炎に香里が包まれて心を病む様に、本作が創作であることを忘れてしまう鑑賞者もいるのではないだろうか。他人によって放たれた事件に押し流されて、三人の人生が破壊され続ける様は、まさに非情そのものだ。 その中で目を見張る姿もある。
その一つが、苦しみながらも桂人と裕一が決して手を放さないことだろう。社会の中で善と悪に隔てられても、二人は手を放すことがない。おそらく今の時代は、その姿を依存と解釈するだろう。しかしながら、ラストシーンに向けて二人の無数の傷が昇華していく様は、感動を禁じ得ない。本作の最後に訪れる映像に悲しさは見つからない。理不尽な運命を乗り越えた希望だけがある。
震災という、予測だにしなかった傷が癒えない時代だ。鑑賞者の中に、自分の未来を重ねてみたくなる人がいるに違いない。本作は、そんな希望を内包している。

『最後の命』

11月8日(土)新宿バルト9ほか全国公開

出演:柳楽優弥 矢野聖人 比留川游
   内田慈 池端レイナ 土師野隆之介 板垣李光人
   りりィ 滝藤賢一 中嶋しゅう
監督:松本准平
原作:中村文則「最後の命」(講談社文庫)
配給・宣伝:ティ・ジョイ

映画『最後の命』公式サイト
http://saigonoinochi.com/

 (c) 2014 beachwalkers.

福岡県北九州市出身。主な取材フィールドは、フード、医療、社会保障など。近著に「食費革命」「うちの職場は隠れブラックかも」(三五館)」近年は児童文学作品も上梓。連合ユニオン東京・委託労働者ユニオン執行副委員長 

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