ネトウヨではないネット右翼が語る日韓自論

  by knj  Tags :  

 

隣国、大韓民国との外交関係悪化による影響なのか、日本国内では韓国および在日韓国人に対して人種差別的な酷い暴言を浴びせる排斥運動集団の出現や、インターネット上に韓国人差別言論を書き広げる、いわゆる『ネトウヨ』の類が増えてきている。

このような連中を指す『ネトウヨ』という名称、元々は『ネット右翼』という言葉が語源であり、すなわちインターネット上で右翼的発言を繰り返すというのが大まかな認識である。

しかし現在のネトウヨと称される連中を見ていると、どうも語源となるネット右翼とは異なる連中ではないかと私は思う。何故なら連中の発する内容といえば、韓国や在日を罵ったり差別するような内容ばかりで、とてもじゃないが右翼思想とは言い難い。

そこで私は知人の紹介によって知り合った、自称“ネット右翼”の青年に『ネトウヨ』と『ネット右翼』の違いを説明していただくと同時に、彼がネット右翼となった経緯、ネット右翼として彼なりの歴史問題も含めた日韓関係に対する自論を訊いてみる事にした。

 

–最初に『ネトウヨ』と『ネット右翼』の違いを説明して下さい。

「まずネット右翼というのは何かといいますと、読んで字の如くネット上で右翼的な発言をする人間です。そしてここで言う右翼というのは旧体制主義、要するに日本の場合は尊皇・大日本帝国主義という事です。しかしネトウヨと呼ばれている奴等には尊皇・大日本帝国主義というものが根本的に分かっていない!陛下がアジア諸国にどういう思いを持っておられたか?旧日本政府がどのような目的で大東亜共栄圏を築こうとしたのか?そして大東亜共栄圏構築の上でどのような外交問題が生じたのか?そういった歴史的経緯も理解できないまま、韓国や中国に対して差別発言を繰り返すような連中に愛国心は微塵も感じられないし、右翼思想があるとも思えない!上辺だけの右思想で人種差別を正当化する連中の事を世間がネトウヨという蔑称で呼ぶようになったのでしょう」

–では貴方がそのネット右翼となった経緯を教えて下さい。

「僕は子供の頃からいわゆる日本軍マニアというやつでして、零戦や日本艦隊のプラモデルを集める事が趣味でした。そんな趣味の延長で日本軍や旧日本帝国主義の事を知りたいと思い、色々な本を読んで独自で知識を取り入れていったのです。そんな中でネトウヨ達がよく口にする『自虐史観』というものを目の当たりにし、当初はやはり僕も自虐史観に対しては疑いを持っていました」

–貴方がネトウヨと同じ自虐史観に疑いの念を抱いたのに、なぜ貴方はネトウヨと異なる自論を持つようになったのですか?

「僕が自虐史観に疑いを持った時期、最初にした事といえば、まず図書館に行って旧日本政府に関連した本を読み漁りました。またそれと同時に色々な立場の人から話を聞きました!歴史に詳しい学校の先生、在日韓国人の友人の親、さらに発展していき街宣右翼の方、朝鮮総連の方、民団の方まで話を訊く事ができたのです。しかし僕が話を訊いたそれぞれの人が異なる立場なので歴史認識観もそれぞれ異なっていました。そこで僕は独自で調べた知識と彼等の話を全て照らし合わせた上で、僕なりの自論に辿りついたのです」

–では貴方の自論とは一体どのようなものですか?

「まず歴史的経緯を言えば旧日本政府は欧米諸国に対抗する為、大東亜共栄圏を構築しようとしていた。その第一歩とし日韓併合を実現させた。確かに日韓併合を実現させる為の方法は強引なものであったと思う。しかし旧日本政府は必ずしも韓国を支配下に置いて奴隷のような扱いをしたかった訳ではないと僕は考えます」

–そうすると貴方も自虐史観は否定されるのですか?

「いえ、必ずしも自虐史観を全否定はしません。確かに韓国政府や在日の人達が言うように旧日本軍の中には極悪非道な連中も多く居たでしょうし、それこそ半島内で旧日本軍による残虐行為が繰り返されていたと考えます。なぜなら当時の日本は戦争続きで軍人達の精神状態もまともではなかったでしょうし、また日韓が幾ら併合して同じ国民だといったところで、やはり韓国人は日本人より劣るという概念はあったでしょう」

–そのような自虐史肯定論を持つ上で貴方の右翼的見解とはどういったものですか?

「それは先程も申しましたとおり旧日本政府の意向としては必ずしも韓国を配下に置きたかったのではなく、共闘を考えていたと僕は思います。確かに旧日本軍による残虐な行為や日本国民による韓国人差別はあったと思う。しかしそれは必ずしも旧日本政府総意によるものではなく、精神不安定な軍人達や差別心を拭い切れない国民達による行為だったと考えます」

–では次に今なお日韓で議論されている強制連行・従軍慰安婦問題に関しては?

「僕の考えでは従軍慰安婦も強制連行も旧日本政府が行なっていたと思います。しかしそこに日本人と韓国人の考えの違いがあります。なぜなら確かに旧日本政府は韓国人に対して強制連行を行なっていたし、韓国人女性を無理やり従軍慰安婦に駆出した。また強制的ではないにしろ旧日本政府が半島内で偽った求人をかけ、実際に日本に渡ってみると炭鉱で過酷な労働を強いられたり、従軍慰安婦をされられたりといった事実もあったと思います。でもそれは必ずしも韓国人だからという事ではなく、日本人も同じように半ば強制的に労働を強いられたり従軍慰安婦にされたりというのが事実です。要は日本人も韓国人も同じ国民として“お国の為に”働かされていた訳です」

–なるほど、貴方の見解では強制連行・従軍慰安婦も事実ではあれど同国民であったから仕方がないと?

「そういう見解も一理あります。しかし日本政府が韓国に対して謝罪すべき点は実際に強制連行や従軍慰安婦があった云々ではないと思います。まず先程も申しましたとおり、当時いくら日韓が同じ国民であったといっても、日本人は韓国人に対して差別心を持っていた。ゆえに労働や生活の環境にしても決して公平ではなかった。そういった点を考えると、旧日本政府は国民のそういった感情を処理しきれなかったとう反省点があります。また強制連行や従軍慰安婦に関していいますと、実際に日本国土内に住んでいる日本人からしてみれば当時の日本がどういう状態なのかはリアルに把握できていたので、強制的な労働を強いられても納得できたのでしょうが、半島内に住んでいた韓国人からすれば、当時の日本が置かれていた状況も把握できていなかった。そんな中でイキナリやってこられて「お国の為に働いてもらう」といって連行されるのですから!そのような状況を考えると旧日本政府は半島内に住む韓国人に対して日本国内の現状を伝えきれていなかったという反省点が残ります」

–わかりました。では貴方の自論でいうと日本政府は韓国に対して謝罪すべきという事ですか?

「確かに日本は韓国に対して謝罪すべきだとは思いますが、謝罪の理由が僕の自論と韓国政府では異なります。僕なりの韓国に謝罪すべき点をいえば、まず旧日本政府は日韓併合したのにも関わらず、日本人と韓国人の差を拭い切れなかった。その結果、旧日本軍による半島内での残虐行為や日本国民による韓国人差別が行なわれていたという事。また旧日本政府は半島・日本国土および韓国人を含む全国民を管理し纏め切れなかった事によって、韓国人に色々な誤解を生ませてしまった事。そして大東亜戦争を勝利する事が出来なかった為、大東亜共栄圏の下同じ国民として一丸となる事が出来なかったというのが日本政府が韓国に対して謝罪すべき点だと考えます」

–ではそのような歴史的経緯の中で旧日本政府は何故、日韓併合を実行する事になったのでしょうか?

「それはやはり欧米への対抗策でしょう。当時の日本といえば開国間もない頃で、とにかく欧米諸国に怯えていた。清国がアヘン戦争に敗れた例もありましたし…そんな欧米の脅威に対抗する為にも大東亜共栄圏を構築し、アジア諸国を纏めようと考えていた。しかし日本という国は島国でもあるし資源も少ない!そういった現実問題を考えると、昔から親交が深かった韓国との共闘は必要不可欠だったのでしょう」

–しかしそんな旧日本政府の思いも韓国側には侵略と捉えられていますが?

「確かに侵略と捉えられても仕方が無いかも知れません。当時の日本は焦り過ぎたといいますか?かなり武力的で強引過ぎたと思います。例えば閔妃暗殺事件にしたってそうですし、とにかく暴力でねじ伏せようという姿勢でした。確かに日本はアジアが欧米の脅威に晒されているという事態を深刻に考えていたのに関わらず、朝鮮半島では当時も李氏朝鮮王朝のままで、アジア情勢の事もサッパリ分からなかった。なので日本が開国を迫っても朝鮮側は何度も拒否し続けました。しかしそれでも当時の日本政府が焦らず紳士的に朝鮮王朝を説得する事ができたのなら、後になって侵略という誤解を受けなかったのだと考えます」

–なるほど、では貴方のそういった解釈の上で今尚、歴史問題等で衝突する日韓関係を改善するには?

「こう言ってしまうと右翼の人に怒られそうですが、日本はもっと韓国に対して譲歩すべきと考えます。確かに日本は韓国を侵略しようと考えていたのではなく、共闘を望んでいたのも事実ですが、日本側が韓国に対して誤解されるような事態を引き起こしてきた訳ですし、そのせいで韓国から現在も警戒されているし一部では毛嫌いされている訳です。ここは日本が心を広く持って韓国に理解してもらえるよう努めなければいけない。しかし韓国側も朴大統領のような根本からして反日の人が居られるのは問題です。でもだからといって一部の反日を例に挙げて争うのではなく、親日韓国人の方達と協力し合い、共に経済及び文化交流を盛り上げていくべきだと考えます」

–では竹島問題についてはどうお考えですか?

「それはやはり日本人の僕からすれば竹島は日本の領土だと信じております。ですがそれは向こうも同じ思いでしょうし、日本が竹島領有権の主張に正当性を信じているのと同じく、韓国側も独島領有権の主張に正当性があると信じています。そこで私の考えではあくまで争うだけではなく、相手側の主張も受け止めつつ互いが納得する方法を探すしかないでしょう。幾ら韓国側が強引であっても同じ土俵で争い合っていては日本人の基本的精神に反する事だと思います。大和魂というのは本来、そういった器の大きさもあるのではないでしょうか?まぁ私個人の提案ですと、親交の深い韓国と一つの島の領有権で争うのも馬鹿げているので、共有というのも良いかと考えます」

–次にネトウヨと呼ばれる差別主義者やヘイトスピーチ街宣を繰り返す在特会のような団体については?

「ぶっちゃけ語るのも汚らわしい連中だと思いますが…やれ主張だの理由がどうこうだの言っているようですが、要するに人種差別が大好きな最底辺の人間としか考えられません。奴等の言う在日特権にしたってデマばかりですし、例えば通名制度があるせいで在日は犯罪を繰り返すって見解もおかしい!幾ら通名があっても逮捕されれば本名で経歴に残る訳だし、口座開設にしたって身分証が必要だから本籍や本名まで隠す事は不可能。入管特例にしたって在日の方々が元々日本人であった事などの経緯を考えれば当然だし、それこそ在日二世や三世の方々は日本生まれの日本育ちなんだから、それくらいの特例があってもおかしくないでしょう!そもそも入管特例法なんかを特権と呼べるのか?確かに他の外国人と比べたら特別な措置かも知れないが、別に日本人より特権を持っている訳じゃないし、在日韓国人の方々にそんな特例があるからといって、日本人に何のマイナス要因が生じる訳でもない。ただの人種差別でしかないと思います」

–その他、ネトウヨの人達は在日韓国人に対して生活保護が支給される事に異論を唱えているようですが?

「それこそ意味が分かりません。生活保護費というのは、この国に暮らす生活困窮者を救済する為に支給されるのであって、在日だから支給すべきでないというのは人種差別です。何か一部のネトウヨが“在日全員に生活保護費が無条件に支給されている”という妄想を描いているようですが、そんな事をすれば速攻で財政パンクしてしまいます!在日も日本人と変わりなく、高所得者は高額納税をしているし、生活困窮者に対しては生活保護費が支給されます。納税だけを義務づけて救済は除外するなんて泥棒と一緒です」

–あなたの見解ですと、在日韓国人というのは日韓併合時に半島から渡ってきた旧日本人達の子孫であるとお考えのようですが、ネトウヨ的な見解ですと在日の祖先は戦後の混乱期に半島から密入国してきたという事で、それについてはどうお考えですか?

「確かに戦後の混乱期から朝鮮戦争勃発の頃にかけて、韓国人が日本に密入国してきたという事実は認めます。しかし現時点で日本に住む在日の方の殆どは旧日本人の子孫です。その証拠に在日の方々の年齢および何世であるかを聞けば一目瞭然です。僕と同じ世代すなわち30代前後の在日といえば殆どが四世の方達です!つまり半島から渡ってきた彼等の先祖というのは彼等の曽祖父母という事になりますから、渡って来たのは戦中もしくは戦前という事になるでしょう」

–確かにそのような現状を考えると、在日韓国人の方々は旧日本人の子孫であり、歴史的経緯を考えると在日韓国人に特別永住権があり入管特例法があるのも当然の措置だという事ですよね?しかしそんな在日韓国人に対する措置に不満を訴える日本人が絶えないのは何故でしょうか?

「やはり昨今の日韓関係が火種になっているのでしょう。しかしそういう外交問題と在日は全く関係がない!それを分からず現在の韓国政府と在日韓国人を一括りにする馬鹿な考えが蔓延っています。まぁそういった馬鹿な思考を一部の政治家やメディアが無責任にばら撒いた結果というべきでしょうか?」

–政治家やメディアがですか?

「そうですね!例えば政治家でいえば石原慎太郎だとか田母神俊雄みたいな上辺だけの保守、後はチャンネル桜などに出演している差別主義者ですよね。奴等はやたらと愛国という言葉を使いますが、結局日本の基本的精神を全く理解していない!浅はかな論理と排他的主張を躊躇なく振りかざす事によって強固さをアピールし、馬鹿な連中から支持を得ているだけでしょう!結局はネトウヨも街宣レイシストも奴等に躍らせれているだけです。そんなものは愛国でも何でもないし、真の大和魂に相反する思考です」

–では貴方の思う大和魂というのはどういったものですか?

「大和魂というのは本来、決して利己的なものではなく常に義の為にあるものです。また“弱きを助け強きを挫く”のが大和魂の本懐です!なので本来であれば、かつての同国民であった韓国に対して身を呈してでも護り抜いていこうというのが日本の基本的精神であり、一部の在日韓国人に対して大勢で憎悪を向けるような行為は日本の恥ともいうべきです」

–分かりました。では最後になりますが、貴方は今後の日韓関係に対してどういった改善を求めますか?

「やはり日本と韓国は対立すべきではないと思いますし、友好を深めるには日本側の譲歩も必要だと思う。かといって日本が韓国の言いなりになるのではなく、過去の歴史問題にしたって韓国側の誤解が解けるよう誠意を尽くすべき!そうして日韓が一丸となり、そこで初めて北朝鮮や中国共産党などの脅威にも対抗していく事ができるでしょう。まさしく日韓両国が共にアジアの中心となるべきだと考えます」

 

今回、彼からこういった自論を訊きつつ、私は常に複雑な心境であった。何故なら私は太平洋戦争というものに対して否定的な考えしかなく、旧日本政府が目論んでいた『大東亜共栄圏』に対しても否定的であったからだ!

私はこの日本国内で現状起きているレイシズムや排外思考は極右的思想に一部要因があると考えていた。

しかし彼のように何よりも“日本人としての基本的精神”を重きに置く右翼思想というのは、嫌悪感どころか寧ろ爽やかささえも感じてしまったのである。

私個人的に思ったのは、石原慎太郎や田母神俊雄やチャンネル桜の水島や桜井よしこ等のような連中は、彼の爪の垢でも煎じて飲むべきであろうし、排外デモなんかを先導している桜井誠や瀬戸弘幸や片山さつき等にいたっては論外!愛国の精神を一から学ぶべきである。

それなりにリベラルな人生を歩んできた故、良くも悪くも世間の色々な顔を見てきました。ライター経験は月刊誌連載を数ヶ月ほど…ネタは豊富です!