佐村河内守先生に学ぶ、戦略PRのイロハ

  by ぶらっくまぐろ  Tags :  


NHKをはじめとする数々のメディアを巻き込み、日本中が騙された佐村河内氏のゴーストライター騒動。
一連の騒動を収集すべく先週行われた同氏の謝罪?記者会見。
この会見が私に教えてくれたのは、美談を人は信じたがる。といったようなことではなく“コストをかけずに情報を広く伝えるのはどうしたらいいのか”というPR手法のイロハだ。
もっとも同氏が行ったのは“どうやったら情報が薄れ、人の記憶から消えていくか”というものではあるが。
では、その鮮やかな手法を紐解いてみよう。

・記者会見実施曜日の観点
緊急記者会見でない限り、記者会見を実施するのは“月曜日~木曜日の午後16時ごろまで”がセオリーとされている。
この時間に行うと翌日のスポーツ新聞の原稿作り、翌日の朝番組やワイドショーの編集、話題が大きい場合はその日の夜のニュース番組の放送に間に合うからである。
ところが佐村河内先生の行ったのは“金曜日の13時”。
金曜日の13時など、土日にビッグニュースが入ってきてしまえば月曜日以降の露出はほぼないリスクをはらむ最悪の曜日だと言える。
まして“3月7日の金曜日”は、翌週3月11日火曜日に東日本大震災の特集が組まれるのは目に見えているので記者会見には最も向かない日であるのは間違いないのだ。そこを先生は見逃さなかった。

・記者会見所要時間の観点
記者会見の所要時間は“長くて1時間程度”だと言われている。
1時間というのは前挨拶やフォトセッション含めるという意味で、本人がレンズの前で喋るのは30分もあればいい方だ。
これは記者が会社に帰って記事を書く時間をなるべく長く与えたいという観点と、あまり長い時間の記者会見をして主張したい事をぶらしたくないという観点からである。
ところが先生の行ったのは“2時間半”。言語道断である。
案の定メディアは「新垣氏を訴える」のか「謝罪」なのか「逆ギレ」なのか「事件の真実」なのか、何を書いていいのか分からなくなってしまった。実に見事である。

・ビジュアル面の観点
記者会見でタレント等を起用する際は“なるべく親和性のある衣装”にするのがセオリー。
CMに出演しているタレントであればCM内で着ている衣装を使用するし、そうでなくてもなるべく関係性のある衣装をセレクトする。
ところが先生の着てきた衣装は“普通のスーツ”。さらにあろうことか、トレードマークの長髪は切り髭は剃りサングラスは外し、どこからどうみても“冴えない中年のおっさん”で現れてしまった。
これでは本当にあの佐村河内先生なのかもわからないし、そもそも報道の尺が「容姿の変化」に割かれてしまい肝心の内容が放送されないリスクがあるではないか。実に見事である。

・唯一の誤算
先生にとって唯一の誤算がある。
それはPR的観点から考えると嬉しい誤算ではあるのだが“土日に先生を超えるビッグニュースが入ってこなかったこと”だ。
結果的ではあるが、マスコミ各位に取材時間の猶予を与えてしまったのである。
時間の猶予を得たマスコミはより詳しい情報を得るべく、実家に飛んだり、学生時代の旧友に突撃したりとやりたい放題であった。
ある種“騙された事への仕返し”のようにも感じたが。

こうして、少しの誤算を除いて先生の戦略は見事に成功した。
人々の記憶はやがて薄れ、彼のことなど思い出さない日が近く来るだろう。
しかしこれだけは忘れないでいたい。
佐村河内守という稀代のエンターテイナーに、その去り際まで演出されていたということを。

※画像はFNNnewsCHより引用

関西生まれ。 テレビとかCMとか馬とか食とか好きなので、そういう記事が多くなるかもしれないです。 執筆記事、超募集中。

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