裏海外組の活躍を描く「越境フットボーラー」が面白い!

  by 浅川クラゲ  Tags :  

7月1日に決勝戦が行われたコンフェデレーションズカップは圧倒的な強さを発揮したブラジルの優勝で幕を閉じた。歴代最強との呼び声も高い日本代表は3戦全敗という苦い経験を味わうことになったが、代表に選出されているメンバーは過去に類をみないくらい粒ぞろいである。なにせ代表23人中14人が海外でプレーし、先発で出場している選手の中にはドイツのクラブでレギュラーを勝ち取っていたり、マンチェスター・ユナイテッドやインテル・ミラノといったビッグクラブでプレーしている選手もいるのだ。そんな華やかな世界でプレーするいわば「表の海外組」以外にも知名度の低い海外リーグで活躍する選手がたくさんいることを皆さんはご存知だろうか? ここではそんなマニアックな海外リーグで活躍する選手達の軌跡を描いた佐藤俊の「越境フットボーラー」という本を紹介したい。

 

マニアックなリーグで活躍する4人のサムライ

越境フットボーラーに出てくる4人のサッカー選手は年齢もキャリアもバラバラである。かってはJリーグで華々しく活躍し、日の丸をつけてオリンピックを戦った選手もいれば、サッカー部のない高校に進学し、フットサル部に所属しながらサッカーを続けた選手もいる。そんな彼らに共通しているのは「マニアックな国でサッカー選手として飯をくっている」という点である。例えば、越境フットボーラーの1部にでてくる伊藤檀という選手はブルネイという国でプレー経験があり、チームメイト兼チェアマンとしてブルネイ国王の甥である「プリンス」アブドゥル・カウィーと一緒にサッカーをやっていたというのだ。(日本でいえば皇位継承権のばっちりある皇族と一緒にサッカーをやるようなものだ。対戦相手にしてみればアンタッチャブルな存在であろう)他にも2部に出てくる中村元樹はアルバニアという最近まで鎖国状態だった国でプレーし、3部にでてくるシドニーオリンピックで日本代表としてプレーした酒井友之はインドネシア。4部にでてくる星出悠はトリニダート・トバゴといずれもサッカースタイル以前に「そこってどんな国?」というような環境でプレーしている(書籍が発売された2011年時点) 最近、移籍が発表された松井大輔の新天地であるポーランドがメジャーなリーグに思えてくる位にとにかくマニアックなのだ。

 

「個」の磨き方も裏海外組ならでは

W杯出場を決めたあと、日本代表の選手は本田圭佑を筆頭に「W杯までに個を伸ばすことが重要」と口々にのべていた。ブンデスリーグ、プレミアリーグ、セリエA、潤沢な資金を活かしたくさんの名プレイヤーを集めだしているロシアリーグ。UEFAのリーグランキングでも上位に位置するこれらのリーグでプレーする現役の日本代表であれば間違いなくプレーヤーとしての「個」を2014年までに磨くことができるだろう。しかし、裏海外組は一味違う。やる気の無い同僚をひっぱって練習をさせたり、膝まで雪が積もっているグラウンドでプレーをしたり、アジア人というだけで人種差別をうけたりする中でサッカーをやったりと、プレーヤーとしてではなく「人間力」としての「個」を海外で磨いている。そのことを本書では確認できるだろう。

 

越境フットボーラー以外にもいる裏海外組

越境フットボーラーには登場していないものの、面白いエピソードをもつ裏海外組は他にもいる。私が一番好きな裏海外リーガーは相原豊である。彼は国内では県リーグレベルの選手でしかなかったが、自分一人の力で海外に渡ってタイ、バングラディッシュ、ウガンダでプロ契約をし、ウガンダでは給料の代わりにサトウキビを支給されたというエピソードをもつ驚異のフットボーラーである。彼は経歴以外にもブログの内容が面白いので、興味のある方は一度チェックしてみることをおすすめしたい。

 

2014年のW杯に向けて海外組への注目度は試合内容や去就も含めて増す一方である。そんな中、マニアックなリーグで必死にプレーをする裏海外組に視線を注ぎ、応援する人が一人でも増えて欲しいと私は考えている。

 

写真は角川書店HPより引用

 

浅川クラゲと申します。大学にて臨床心理学を専攻。登録販売者やカウンセラーの資格を利用して本業(面接官)の傍ら、クスリやサプリメント、心理学に関する雑文やサブカルチャーに関する記事を細々と書いております。