福井で究極の魚料理を見た

  by 戸田健太郎  Tags :  

福井県小浜市というとオバマブームに便乗してオバマグッズを売りさばいた町として有名だが、それ以外のことについて全国的に知らることは少ないのかもしれない。そもそも福井県の場所すらもよく分かっていないという方も多いだろう。福井県は滋賀県のすぐ北に位置する日本海沿いの県だ。琵琶湖からすぐ北に上がると福井県の敦賀市。京都府の日本海側は舞鶴市であり、舞鶴と敦賀の中間くらいにあるのが小浜市である。ざっとした説明だが位置的なイメージは出来ただろうか。興味をもった方はGoogle Mapsあたりで調べて貰いたい。

さて、その小浜市がどしたかというと、小浜市はオバマブームとは無関係に歴史のある町であるが、福井県が全国に誇るべき、さる郷土料理の発祥地であるのだ。福井県民なら誰しもが舌鼓をうつ食べ物。魚料理のキング・オブ・キングスとも言われる逸品。なのに福井県ではポピュラーなのに、数県離れただけで一気に認知度が下がってしまう。そんな小浜市名物、それが浜焼き鯖である。

若狭名産浜焼き鯖。かつて腐りやすいサバを福井から京都に運搬するのに、水揚げしてすぐ浜で焼いたことに由来する。

「なんだ単にサバを焼いているだけじゃないか」と思われるかもしれない。たしかにその通りだ。しかし脂の多いサバを一匹まるごと焼くのは専門家ではないと不可能。見た目以上に高度な技術が要求される料理なのだ。「丹念に焼き上げられ、脂を包み込むようにして仕上がった浜焼き鯖は、同じ重さの黄金に匹敵する」とは、さる福井県人の言葉。この言葉が大げさ過ぎるかどうかはまずは一口食べてみてから判断して欲しい。ただし食べる時には絶対に守って欲しいルールがある。

生姜醤油で食べること。

小皿に生姜をすりおろした醤油を用意して、ほぐした鯖の身を浸して食べる。脂たっぷりの鯖の甘みが醤油の角を削りとって風味だけが口でとろけあう。ほのかな鯖特有の臭みは生姜が完璧に消してしまう。さばという魚はこんなにも美味しかったのか。福井県に土下座してしまいそうである。世界中でこれ以上のサバ料理があるならば出して欲しい。もしそんなものがあったなら、そちらにも土下座するから。

福井県では浜焼き鯖を買って帰って家族揃ってつついて食べるのが一般的になっている。浜焼き鯖のある食卓。笑顔が耐えないはずだ。鍋をつついて親睦を深めるのも良いが、さばをつつき合って仲良くなる関係というのもアリな筈だ。もっと日本中に普及して欲しい。

県内には焼き立てを供してくれる店もある。これは敦賀市の魚市場での風景。浜焼き鯖は成立の背景からも、焼きたてが重宝される料理ではないが、かといって焼き立てが不味かろうはずもない。じゅうじゅうぶすぶすと脂が滴り落ちるさばの身をつまんでいる時ばかりは、焼肉やステーキなんてものは頭の中から追いやられててしまう。もし焼きたてを食べる機会があるならばチャレンジするべきだろう。香川県のさぬきうどんや、浜松や宇都宮の餃子のように、県内に焼き立て浜焼き鯖の店がたくさんあれば、もっと福井県に訪れる人も増えて街の活性化にもつながると思うのだけど、夢を見過ぎているのだろうか。まずは発祥地の小浜市あたりからどうだろうか?

焼きたての浜焼き鯖をもらい、ひとり一匹づつ食べる。生ビールと大変に合う。これくらいのサイズでも瞬く間に平らげてしまう。至福の瞬間だ。家で食べる浜焼き鯖も美味いが、網で焼いてもらって食べる浜焼き鯖も絶品。そのうちBBQでも開いた鯖をそのまま焼くというのが流行るのではないだろうか。アメリカ人にも教えてあげたい。小浜市がオバマにアピールすべきところはそこだったのではないだろうか。

あまりに美味いので持ち帰って家でも浜焼き鯖パーティー。何匹食べても美味しい。脂がきついかもしれないが、さばの脂というのは、DHAだの高度不飽和脂肪酸だの何だので身体にもそう悪くない筈だ。だから飽きもせずに食べられるに違いない。身体は身体に良い物を求めているのだ。やっぱり米国内の健康問題に頭を悩ませるオバマに教えてあげるべきだった。しかしマグロにひき続いて鯖の争奪戦になっても困る。これはやはり日本だけの秘密にしておくのが正解だったのかもしれない?

 

ちなみにこの浜焼き鯖は福井県だけではなく、京都府や滋賀県や大阪府の一部でも購入することが出来る。残念ながら手に入らないという方も、鯖の切り身や、鯖の水煮缶なんかで構わないので、生姜醤油で食べてみて欲しい。さばと生姜のコンビネーションの一端でも味わっていただけるはずだ。

大阪よりインターネットラジオBS@もてもてラジ袋を毎週配信。 http://www.moteradi.com/ 市民生活の専門家。易者。自由律俳句を詠む。 旅と読書と麺類(特にうどん)とファストフードとアルコールをこよなく愛している。 日本各地の大衆居酒屋や立ち飲み屋めぐりも趣味。 JR天満駅周辺の格安飲み屋に常駐している。

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