「自民党の原発政策がよく分からない件」のよく分からない点

  by 綾瀬 新  Tags :  

Twitterのタイムラインを見ていると、谷川茂さんが夕刊ガジェット通信に寄せた記事が槍玉に挙げられていた。『自民党の「原発に関する政策」があいまいで結局よく分からない件』というタイトルの文章を読むと、「どうだろうな…」と首をかしげたくなる部分がいくつかあった。

私がこれから記していくことは、生まれる前から原子力発電が推進されていた“ゆとり世代”の一人の戯言だと思っていただければ。福島の除染・廃炉作業のスピードアップを図りつつ、日本の景気回復に直結する“安定した経済活動の基盤”を確保できる検証作業が終わらないうちは「脱原発」と叫ぶのを躊躇う立場として、谷川さんの文章に突っ込んでいく。

原発に関する自民党の政策がひどい。2012年11月27日付の時事通信によると、自民党は「原子力に依存しなくて良い経済・社会構造の確立を目指す」としている。しかし、「原発の存廃については『10年以内に持続可能な電源構成のベストミックスを確立する』」とあいまいな表現を使い、原子力政策の明確な目標を定めていない。

果たして「原子力政策の明確な目標」とは何か。まず「原発再稼働が必要か、それとも不必要か」の議論から始めなければならないだろう。日本という国の気候を考えると、電力需要が増大するのは夏と冬。過ぎ去った夏とこれから訪れる冬、本当に電気は足りたのだろうか。そして足りるのだろうか。

関西電力・九州電力などは、とりわけ原子力発電に依存してきただけに、夏の節電目標を高めに設定するなどの厳しい対応を迫られた。結果として、関西電力は、経済界の強い要望と政府の判断で、大飯原子力発電所3・4号機を再稼働させることに。九州電力は再稼働や節電は回避したものの、火力発電所のトラブルが相次ぎ、供給体制に不安を残した。

もし「結果的に再稼働は回避できたのだから、もう動かさなくていい」とするのなら、私は暴論だと思う。記録的な暑さや寒さによる電力需要増大の見通し。火力発電の燃料の確保について。冬の予備率の予測。節電の効果。経営努力は十分か否か。電気料金値上げの是非。これらを厳しく検証するのが先決ではないか。

ちなみに九州電力は、今夏の節電期間は「最高気温は一昨年より低く推移」「(水力発電のための)雨量が多かった」などの好条件が重なったと説明している。また、関西電力の今冬の予備率見通しは4パーセントほど(最低限必要なのは3パーセント)とのこと。

党内には、河野太郎氏のように脱原発を進めようとする議員もいるし、世論も脱原発を歓迎する方向に向かいつつある。福島第1原発事故が起き、その影響が現在も色濃く残る状況を考えれば、そうなるのは当然の話である。だが、安倍氏には、経済界が発信する原発推進の声が重要なのだ。

谷川さんのおっしゃる通り、経済界は「原発推進」「原発維持」を求めている。そして彼は世論(調査)の声を挙げている。しかし、各種世論調査を見ると、国民は「脱原発」を求める一方で「景気回復」も願っている。安定した電力需給ができるかどうかの計算をせずに、景気回復がどうと語るのは無理がないか。

国民生活の面で言えば、脱原発を推し進める中で、「火力発電の燃料費と他電力会社からの融通などによる電気料金の値上げ」は小さくないダメージになる(枝野幸男経済産業相は「今までが安過ぎた」と述べているが、Twitter上では批判の嵐だった。もちろん電気を大量に消費する工場や店舗にも悪影響が出るのは必須だ。景気回復どころではない。

大地震と原発事故を経験した国の国政選挙で、各政党が原発をどうするのかという意思を有権者に表明することは、ある意味では義務と言ってもいい。それをないがしろにしてしまったら、「国防軍」や「教科書検定の見直し」などと手品のような政策を提案されても、結局は有権者に背を向ける自己満足の政党だと思われても仕方がなかろう。

谷川さんの政治信条は詳しく存じ上げないが、記事は分かりやすい自民党批判で締めくくられていた。彼は自民党の曖昧な原発政策を批判しているが、それでは「脱原発」を掲げる他の政党はどうか。谷川さん言うところの「原子力政策の明確な目標」を公表しているのか。その辺りにも多少突っ込んでいれば、記事を読んだ印象も変わったのだが。

画像: 『自民党の「原発に関する政策」があいまいで結局よく分からない件』のキャプチャー
http://getnews.jp/archives/275913

Writer. Monokakiya Smile.

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