【新たな海外支援のカタチ】就労福祉×クリエイティブを実現したマダガスカルの梅永優衣さんへインタビュー

  by オカチマキ  Tags :  

前回こちらで紹介させていただいた、「障がいをもったお母さんたちの製作所を作る」梅永優衣さんのプロジェクトは、2017年2月28日(火)23:00に無事成立しました。

募集五日目にしてスピード達成したのちも支援を募り、最終的に361,000円、支援者は35人にものぼりました。

その後、至る2017年6月16日に、製作所の開所式が執り行われました。地元メディアにも取り上げられるほど、現地でも注目を集めている梅永さんのプロジェクト。

今回はマダガスカルで現在も精力的に活動する、梅永さんご本人にメールにてインタビュー取材をさせていただきました。


▲子供たちに囲まれて中央で笑顔を見せる梅永優衣さん

マダガスカルで生活する人々の魅力とは?物や労力で対価を払う助け合いの国

●マダガスカルの生活や人々のことについて教えてください
――マダガスカルで生活をしてみて、現地の人々の魅力的なところや、また日本人とはかけ離れた部分などがあったら教えてください。

梅永さん:マダガスカルで生活していて、まず、「日本は時間に正確だ」ということに改めて気が付かされます。3分おきに来る山手線とは異なり、マダガスカルのバスは乗客がいっぱいになるまで出発しません。なので、乗ってから1時間、2時間待つことはざら。

東京育ちの私は最初のころはついイライラしてしまっていましたが、そのためマダガスカルの人々は、他人の遅刻にも寛容なんです。

また、キリスト教徒は半数を占めているせいか、マダガスカルの人々は助け合いの精神が日本よりも精通している気がします。

農村部では農機具やDVDプレイヤー等の機材の貸し借りが頻繁に行われているし、配属先の職員と共に食事に行くと、年齢や性別に関わらず、お金に余裕のある者がない者の分も支払う、という図式が自然と出来上がっているのに気づかされます。

支払ってもらった側は、ちょっとした買い物や荷物の運搬などの小間使いを、日常的に自らかって出ます。

物が豊富で個人主義の日本と比べて、貧富の差が激しいマダガスカルでは、物を共有すること、恩を請けたらそれを労力で返すが習慣化しているようです。


▲梅永さんの在住する市内で最も大きいマーケットの様子。※facebookよりスクリーンショット

子供たちのクリエイティブでタフな力

――facebookの投稿を見てみると、子どもたちのまぶしい笑顔が光る写真がたくさんポストされていますね。

梅永さんは海外でも子どもたちとの交流がとても大好きとのことですが、子ども達の魅力はズバリ何ですか?

梅永さん:マダガスカルで生活を始める前に、フィリピンに3か月間滞在していた経験があるのですが、途上国の子ども達の……、例えば空のペットボトルや缶などのゴミから玩具を作り出してしまうクリエイティブさや、貧しいことを嘆くのではなく、あるものから新しいものを作り出し、どんな環境でも楽しんでしまうタフさが大好きです。

その精神は、日本初の農村開発アプローチとして、現在マダガスカルで進められている「生活改善」にも通じるものがあります。

現地スタッフとの絆

――プロジェクトには、現地の人事・管理責任者の方と二人三脚でサポートしてくれたティナさんから素敵なプレゼントを渡される梅永さんが印象的でした。彼女はどんな方ですか?

梅永さん:実はプレゼントを手渡してくださった彼女はティナさんではなくボランティアのNosoavinaさんです。

――大変失礼しました、ティナさんとは以前、梅永さんが掲載していたプロジェクトで紹介されていた、男性の方なのですね。

彼女は健常者ですが、お母さんがVmsv Graphavでボランティアをしていたことから、見本市でお菓子を販売して団体の活動費を稼ぐなど、障害を持つメンバーをサポートするボランティア活動をしています。お菓子作りが好きな、明るくて優しい女性です。


▲梅永さんにプレゼントを手渡すボランティアのNosoavinaさん

ティナさんは、例えば製作所を建設する場所選びの際に、身体障害者用のトイレを建設するスペースを確保するなど、メンバーそれぞれの立場に立って物事を考えることの出来るとても頭のいい方です。

ティナさんは元々サッカーの大好きなスポーツ少年でしたが、事故により車椅子が手放せない生活となってしまいました。

しかし自身は動けなくてもサッカーに対する情熱を持ち続け、Vmsv Graphavの人事・管理責任者の他、毎週2回地域の子ども達に対し、サッカーの指導をしています。

マダガスカル語が拙く、障害を持つ方々に対しても理解の足りない私ですが、ティナさんと一緒に活動出来たからこそ、プロジェクトを実現できたと思っています。

ティナさんについては、以下の記事でも少し紹介させていただいております。
参考:「Graphav Vmsv」のメンバー紹介

梅永さん「同じやり方で同じものを作っていても、何故か手作りのものには製作者の文化や感性が表れ、とても面白い」

●製作所について教えてください
――マダガスカルでの障がい者に対する風当たりはとても厳しいと伺いました。日本の社会が、障がい者に対する目線と比較して、どんな印象を受けましたか?明らかに違う点と同じ点があればお聞かせください。

梅永さん:マダガスカルの路上では、物乞いをする障害者を頻繁に目にします。

生活保護等の制度がある日本とは異なり、途上国ではサポートが不十分なために、経済の後退は障害者を含む社会的弱者に、より大きなしわ寄せが及ぶことを意味します。

Vmsv Graphavのメンバーはそれでも、比較的恵まれている方とのことですが、日本のように介助を専門とする人がいないために、サポートしてくれる家族の都合が悪い時には外に出られない日が続くこともあるようです。

――プロジェクトとは別のところでも、手作りの製品を現地の人々と一緒に作っているとのことですが、マダガスカルでも日本でも、モノづくりを通して気づかされることがあれば教えてください。

梅永さん:このプロジェクトとは別に、農村部の女性団体と一緒に古着を使った手芸教室を開いています。


▲ジーンズの切れ端で制作されたコサージュ。※facebookよりスクリーンショット

Vmsv Graphavのメンバーの刺繍もそうですが、同じやり方で同じものを作っていても、何故か手作りのものには製作者の文化や感性が表れ、とても面白いと感じます。

――リターンで支援者に贈られる品物もマダガスカル独特の雰囲気が出ていました。モノを作って販売する「製作所」という性質から、受け渡しなどがスムーズに行うことさえできれば、世界中の誰しもが買い手になることも可能だという印象を受けました。

梅永さん:今後は販路開拓に力を入れていきたいという気持ちが強いのですが、海外を舞台にしようとするとマダガスカルの郵便事情は信用できず、またEMSなどの追跡のある配送サービスは送料が高くなってしまいます。

そのため今回、リターンの発送はほとんど、日本からマダガスカルに旅行に来てくれた友人にお願いしていました。

ただインターネットの通販サイト等でマダガスカルの手芸品を見かけることもあるので、今後方法を模索して、ゆくゆくはこのプロジェクトを通して、マダガスカルの伝統工芸の魅力、ひいては障害者の現状について伝えることが出来れば理想的だと思います。

今回のプロジェクトで火が付いた、お母さんたちの意欲

――今回のプロジェクトが実現され、実際に現地で就労することになっているお母さんたちには、何か心境などの変化はありましたか?

梅永さん:今回、支援者様にお送りした手紙はメンバーとともに日本語を交えてしたためたのですが、そのせいか、日本語をもっと教えてほしい!と学習意欲が増したようです(笑)

実際に作業が始まるのは6月27日からの予定ですが、ある身体障害者の女性は、開所式の際にミシンを触って「このモデルは昔お母さんが使っていたのと同じだわ。体が覚えているのですぐに使いこなせるようになるはず」とやる気を漲らせていました。

皆で揃って作業が出来る場所が出来たことから、「自分たちの居場所」という意識も芽生えたことが嬉しく思います。

――梅永さんが今後このプロジェクトが実際に動き出したことで、次に見えてきた課題や、今後のなどありましたらぜひお聞かせください。

梅永さん:マダガスカルでの生活も残り9か月余りとなりましたが、これからは主に普及活動と販路開拓に力を入れて支援していきたいと考えています。

開所式には地元のテレビ局を招待し、その様子を放送していただきました。今後はラジオやFacebook等のSNSなどのメディアを多く利用して、障害を持つメンバーが頑張っている様子を多くの人々に知ってもらうことで、マダガスカルでの障害者の地位が向上することを願っています。

また、7月からは販売所にて手芸品の販売も始まります。実はお土産品としてクオリティの高い手芸品が多く販売されているこの町で、どのように差別化して、安定した収入に繋げられるようにするのか、が今後の課題です。

●最後に
――お忙しい中、色々お話をありがとうございました。最後に、何か伝えたいメッセージがありましたらお願いします!

梅永さん:この度は、クラウドファンディングという自分にとって初めてのシステムを用いて資金を募るにあたり、自分の今までの人生で携わってきた本当に色々な方からご支援、ご応援頂いて、凄く力づけられる思いがしました。

上記の多くの方々がシェアしてくださった投稿やReady forのページを見て、今回私のプロジェクトを知り支援してくださった方々には、直接お会いしたことはないにも関わらずプロジェクトにご賛同いただき応援して頂いていたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。

また、拙いマダガスカル語でのコミュニケーションだったにも関わらず、短い期間で素敵なリターンを作ってくださったメンバー達、忙しい中二人三脚でサポートしてくれた人事・管理責任者のティナさんに対しても、大変ありがたく思っています。

製作所は完成しましたが、プロジェクトとしてはまだ始めの一歩に過ぎません。

今後は彼らの手芸品が多くの人の手に渡るよう、またそのことがマダガスカルの障害者の地位向上に繋がるよう、更に方法を模索しながらメンバー達と頑張っていきたいと考えています。

マダガスカルで動き出したクリエイティブ×福祉の就労支援

突然の申し出にも快く応じてくれた、気さくな人柄が印象的な梅永さん。今回のインタビューを通して、彼女の魅力にも引き込まれました。

梅永さんのマダガスカルでの生活や当プロジェクトは、facebook、ready forのページにて公開されています。そちらも併せてごらんください。

梅永さんのプロジェクトは、マダガスカルの地で動き始めました。今後、地元に根付いた施設として精力的に稼働していくことでしょう。マダガスカルの発展と、今後の梅永さんの活躍にも注目です!

梅永優衣さんプロフィール
2016年に青年海外協力隊にてマダガスカルへ赴任。現地での協力隊としての任務とは別に、2017年2月に、クラウドファインディングサイト「Ready for」を活用して、マダガスカルでのお母さんたちの手芸などの手工業を生かした、障がい者就労支援プロジェクト「マダガスカルの障がい者を支えたい。彼女たちの居場所を作ります!」を立ち上げる。このプロジェクトは、開始5日目にして目標金額を達成させる。

参考:
梅永優衣さんFacebook
https://www.facebook.com/yui.umenaga
マダガスカルの障がい者を支えたい。彼女達の居場所を作ります!
https://readyfor.jp/projects/vmsv-graphav/

※画像は梅永優衣さんのfacebook、ready forのページより承諾を得てお借りしています。
※2017年06月25日 リンク先のURL等を一部訂正。

オカチマキ

ウェブを中心にアレコレ執筆しているライター。オバケやカメレオンなど色んなものに変身しすぎて、自分の姿がわからなくなったことを機会に、何か連載をしてみたくなり連載.jpを開始。