失敗したって生きるんだ

  by あおぞら  Tags :  

『就職失敗で年150人自殺 11年に30歳未満』の見出しに衝撃を受けて記事を読んでみると、昨年の2011年に就職がうまくいかなくて自殺した30歳未満の若者が2年連続で150人を超え、2007年からこの調査を始めた当初からその人数が2.5倍になっているというのです。

記事では『30歳未満の150人のうち男性が126人と8割強を占め、女性は24人だった。52人が学生で、このうち大学生が41人を占め、高校生も4人いた』とあり、リーマン・ショック以降若者の雇用環境の悪さを指摘しています。

自殺した方々には気の毒ですが、就職失敗で自殺するようでは、もし希望の職に就けていたとしても、そこで何か失敗をしたとしたら、その時点で自殺していたかもしれません。自殺する人たちは潜在的に死にたい意識があるような気がします。

今を生きることは決して楽ではないんです。その厳しい中から学びがあり、救いがあり、日々の一歩一歩が人生なのです。就職に失敗する人と言うのを、希望の仕事に就けなかった、働きたい会社に就職できなかったなどを指すとすれば、殆どの人たちは思い通りの仕事に就けなかった失敗を体験していると思います。

失敗を知らない人間はかわいそうな人種なのです。見よ、官僚を!エリートコースをまっしぐらで負け知らずで立派な省庁に入省しキャリアは威張り、ノンキャリアを馬鹿にする。端から見れば愚かしいことですよ、しかし、現場にいればキャリアが威張ることがもう当たり前になっていて、感覚が麻痺して、あろうことか犯罪にまで手を染めて何人の負け知らずが逮捕されたことでしょう。

私のかつての職場には結構立派な肩書きを持つ方々が訪れ、私は来客にお茶をお出ししておりました。県知事もいたし、花形省庁の職員もいたし、大手商社の元社長もいたし、元大使もいました。不思議なことにこれらの方々は、私がお茶をお出ししても私に一瞥もくれず、人間の存在を認めないような冷たさに驚愕したことがありました。その時に私が感じたことは『かわいそうな人』でした。優しさのカケラも感じない、この方々は肩書きでしか勝負できない人たちなのだと。

負け知らずで生きていくと、こういう高慢ちきな人間が出来上がり、本人には不自由はないでしょうが、周りに不自由を強いる忌々しい人間を世に送り出すことになり、結果的に社会の空気を重くしていくものだと感じました。

それもこれも失敗を知らないから、こういう浅い人間が仕上がってしまったのです。

自殺を空想することは悪いとは思いません。なぜなら人間であれば生きることの辛さは体験すると思います。そんな時『死んでしまったら楽だろうな….』と考えるくらいは人間らしくていいですし、そうでも思わないと辛さはなかなか解消できません。しかし、実際死んでしまうのは取り返しのつかないアンポンタンなこと。

失敗なんて誰でもしていますよ。そこで諦めたら先はないでしょう?

アカデミー主演女優賞を受賞したサンドラ・ブロックは90年代前半ににブレイクしましたが、ブレイクする前はことごとく代役ばかりで上がってきました。最初の全米公開の主演作品の『あなたが寝ている間に…』ですらも、デミー・ムアーが役をおりたために射止めた作品でした。二番手二番手で一生懸命仕事をしていると、運も人も寄ってきてそれからの活躍は皆さんご承知の通りです。

アカデミー主演女優賞を受けた作品『幸せの隠れ場所』ですら、当初ジュリア・ロバーツを想定していたのですが、本人が興味を示さなかったのでサンドラ・ブロックに役が回ってきましたし、ついでに言うと同年の作品の『あなたは私のムコになる』もジュリア・ロバーツが蹴った役をサンドラ・ブロックが引き受けたのです。

アカデミー賞受賞のスポットライトを人は称賛しますが、ウエイトレスやコートクラークをして女優を夢見てニューヨークで頑張った日々とオーデションに落ちてもへこたれなかった積み重ねがアカデミー賞受賞なのです。自分が成功したら富の還元を日本円で1億円単位の寄付を911のテロ、スマトラ沖地震、ハイチ地震、そして東日本震災にもしています。大女優の娘で大スターに即なれたのであれば、こういう寄付をする優しさは育まれなかったかも知れません。

ニューヨーク時代「お金も未来の保証もなかったのによくやってこられたね」と言われた時は「ボヘミアンだからお金がないのは苦痛ではないのよ」と言ったそうですが、ハリウッドのドル箱スターになると社会貢献するチカラは、その昔オーデションに何度も落ち、失敗が人格を仕上げたからでしょう。

失敗は悪くないんです。でも、あえて受け取りたいものではありません。考え方ひとつで毒にも薬にもなります。また失敗を受け流すことも必要で、時に『人生こんなもの』くらい思わないとやってられませんよ。それで切り替えてまた一歩一歩進んでいくのです。

世の中は手にはいらないものが一杯なんです。それでも生きていくんです。それが人生の教えなのです。その中から喜びや楽しみや嬉しさを時に見出せるのです。

死んじゃいけないんだよ……

画像:frickr from YAHOO!
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