【新刊情報】ネットで話題!全国の地元の戦国時代の殿様514家を網羅した「全国国衆ガイド」

  by 松平 俊介  Tags :  


日本全国の地元の戦国時代の殿様「国衆」(くにしゅう)514家を網羅した大石泰史・編『全国国衆ガイド』(星海社新書)がネットで話題になっている。

「国衆」=小規模な戦国武将。地元の殿様。

 「国衆」とは、耳慣れない用語だが、本書によるとレッキとした歴史用語で、一郡~複数の郡を支配した戦国武将のこと。
歴史学者の黒田基樹氏によると、「国衆」の領地は郡規模(現在では市になった地域も多い)、「戦国大名」と契約して合戦の時には出陣する地元の殿様、というところだそうだ。例えば映画「のぼうの城」で有名になった、現在の埼玉県行田市一帯を治めた忍(おし)城主・成田氏などが典型的な国衆で、戦国大名を県知事・都知事とすれば、国衆は区長・市長・町長のようなもの、戦国大名を大企業とすれば、国衆は中小・ベンチャー企業といったところか。

本書は、そういった全国の「国衆」514家を網羅し、最新の歴史研究に基づき解説したもの。歴史書の新書にもかかわらず、京極夏彦の小説もかくやという494ページという厚さの本で、ツイッター上では「縦にすると立つ」という話が広まっているほどだ。この手の戦国本では、江戸時代の講談師が創作した軍記物・家系譜にある、真偽不明のエピソードも多いが、本書は複数名の歴史学者の共同執筆で、戦国時代当時の古文書を中心に執筆し、極力後世の創作を排除しているという。

江戸時代の大半の藩主が定期的に転封を繰り返した「鉢植え大名」だったのに対し、国衆は平安時代から安土桃山時代までずっとその地域のトップであり続けようとした人々であったという。かなり辺境には領地が大規模な国衆もおり、例えば蝦夷ヶ島(現在の北海道全域)の守護職だった蠣崎(かきざき)家(後の松前家)は、和人とアイヌ人との対等関係を定め、北海道の道南地域を江戸時代に入っても「旗本」のち「大名」として統治し続けている。

(蠣崎[松前]家の居城、松前城跡。天守が復元されている)

織田信長のような勝ち組国衆は天下を取り、負け組国衆はだまし討ちで滅亡も!

 中小企業から大企業に発展する企業があるように、天下取りに名乗りを上げる国衆も存在する。例えば織田信長を出した尾張の国衆・勝幡(しょばた)織田家は、同族の清洲織田家・岩倉織田家よりも小さな勢力だったが、伊勢湾の水運・交易の拠点である津島を抑えて勢力を拡大、勇将・織田信秀(信長の父)の時には隣国三河まで攻めこむほどの強大な国衆に成長した。息子の織田信長が次々に敵を討ち、天下布武を成し遂げていくのはご存知のとおりである。


(織田信長生誕の地でもある勝幡城。現在は石碑が立つのみ)

織田信長ほどではなくても、江戸時代になっても大名として存続する国衆も多い。例えば津軽藩の津軽家は、元々は戦国大名の南部家に仕える国衆・大浦家であったが、後に独立して苗字も改め、弘前藩として江戸時代を通じて存続している。

そういう勝ち組の国衆もいれば、負け組の国衆も存在する。加賀・鳥越城(現・石川県白山市)を拠点に加賀一向一揆の大将として活躍した鈴木出羽守は、本願寺が信長に降伏した後も徹底抗戦を続けたが、信長の家臣・柴田勝家のだまし討ちに合い、討ち死にして滅亡してしまったという。残念ながら公式な史料では実名も伝わっていない。


(残念ながら滅亡してしまった鈴木出羽守の居城・鳥越城。門などが復元されている)

鈴木出羽守のように完全に消滅してしまうケースは逆に珍しいようで、江戸時代は諸藩の藩士になったり、江戸幕府で旗本や御家人になっているケースも多い。

「信長の野望」などの戦国ゲームでは名前が出てくるが、意外と知られていない地方の武将たちに光を当てた本書を、秋の夜長に読むのも悪くない。

(画像は星海社新書公式webページ http://ji-sedai.jp/book/publication/kunishu.html よりキャプチャー、松前城 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E5%89%8D%E5%9F%8E#/media/File:MatsumaeCastle.jpg、
勝幡城 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8B%9D%E5%B9%A1%E5%9F%8E#/media/File:Shobata_Castle_Site.jpg、
鳥越城
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B3%A5%E8%B6%8A%E5%9F%8E#/media/File:Torigoe01.jpg)

企業のニュースリリースライターを足掛け4年経験。現在はライターのみならずwebディレクターやテレビ番組の企画にも関わっている。タウン誌や飲食関係の媒体の制作にも携わる。 大学時代は書家や歴史作家について修行をしていたことも。(雅号:東龍) 地域の埋もれた歴史を掘り起こしたり、街歩きをするのが好き。これまで関わってきた雑誌は「散歩の達人」「週刊SPA!」、放送局では主に関東ローカルテレビ局の企画を担当。

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