棋士たちが語る第73期将棋名人戦の見どころ

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現在、羽生名人に行方八段が挑む第73期将棋名人戦が開催中である。第2局では行方八段が勝ち、対戦成績を1勝1敗のタイに戻した。この対局が行われた4月23日のTBSのラジオ番組「荻上チキ・Session-22」では名人戦特集が組まれ、将棋マニアの憲法学者木村草太さんが各棋士にインタビューした模様が放送された。このインタビューは第1局の対局前夜に対局場所であるホテル椿山荘で行われたもので、それぞれの棋士が今期名人戦の見どころを語った。その内容を一部要約して紹介する。

「行方八段が羽生名人にどれくらい自分の中で『勝てる』と思うか、興味があるのはその一点だけ。力を出し切れば素晴らしい勝負になると思う。行方八段が前にタイトル戦で戦った時(一昨年の王位戦)は本気で勝ちに行ってる感じを受けなかった」(島朗九段)

「行方八段は長考派。長考合戦が見られるのではないかと期待している。最近のタイトル戦は序盤に手が進むのが早い傾向があるが、行方さんは昔気質のところがあるので、納得するまで考えると思う」(片上大輔六段)

「羽生名人は難攻不落。それに対して行方八段がどれだけ頑張れるか。そこを期待している」(塚田泰明九段)

「羽生名人はタイトル戦にかなり慣れていて、常に高いパフォーマンスを出せる。対する挑戦者の行方八段は羽生名人を相手にどのように戦っていくか。戦型はプロ的にはある程度予想しやすいが、そんな中で行方八段なりの工夫あるいは自身の中での戦いやすい形にどのように持って行くかという点に注目している」(広瀬章人八段)

「行方八段はA級順位戦を充実した内容で行ったので、それに対し百戦錬磨の羽生名人がどう戦うか。行方八段は粘りもあるし切れ味もあるので、羽生名人も苦労するのでは」(深浦康市九段)

「行方八段は長所として終盤が正確で切れ味があり、それに支えられた粘りがある。短所として中盤で一貫性のない手がよく出るという印象があるが、逆にそれが勝負に幸いすることもあるので、きちんと計算された中で戦うよりもいいアクシデントを呼ぶようなところもある。波に乗れば強さを発揮するタイプ。今非常に脂が乗っていて、時期的に行方八段の中では人生でいちばんの力が出る時。短所も逆に長所に変わる要素があるか、今回の勝負では期待したい」(藤井猛九段)

またインタビュアーの木村草太さんはこの日行われた第2局の結果を受けて、「第1局の様子を見ていて、これはちょっとどうだろうっていう空気が一瞬漂ったんですけれども、行方先生はそういった空気を一切意に介することなくしっかり自分の将棋を指して。特に終盤がものすごく正確で、本当に終盤になったら恐い行方先生らしい将棋で1勝を返して、非常に面白い状況になってきたなという風に思います」と感想を述べた。

放送内容は、こちらの番組サイトからPodcastにて聴くことができる。
http://www.tbsradio.jp/ss954/2015/04/20150423session.html

文春オンライン「第1期“書く将棋”新人王戦」観戦記者賞を受賞しました。

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