昔々、電子レンジがあまり普及していなかった頃は「お弁当屋さん」がちょいちょいありました。今でこそ『本家かまど家』や『HottoMotto』(ほっともっと)などのチェーン店が幅を利かせていますが、昔は弁当屋も「個人経営」の小さな店が多かったのです。
そんな昨今の弁当事情は個人店には厳しい状況になっています。大手スーパーの惣菜コーナーの弁当、全国チェーン店の弁当屋、さらにコンビニ弁当などは全体の売上高から見ても脅威です。
しかし、21世紀になった今でも地域密着型の「昔ながらの弁当屋さん」が残っていたりします。今回はそんな個人経営の弁当屋さんにスポットを当ててみましょう。
淵野辺とは?
まず、神奈川県の相模原市にある「淵野辺」と言う微妙な地域を紹介する必要があるでしょう。さして紹介するほど特色がある町ではありません。しいて言うなら
『はやぶさ』&『はやぶさ2』
の宇宙科学研究所があるくらいで、全国的に見てもマイナーな町である事は否めません。淵野辺について語れと言われても正直、無理です。
そんな微妙な「淵野辺」ですが、何気に大学が多かったりします。「麻布大学」を筆頭に「桜美林大学」「青山学院大学 相模原キャンパス」「和泉短期大学」が近距離にあります。
その中でも特に「麻布大学」では知らない人はいないと言われる『こがねちゃん弁当』は、THE・弁当屋と呼ぶに相応しい、地域密着型の弁当屋さんなのです。今回はこの『こがねちゃん弁当』の何が魅力なのかを紹介してみます。
圧倒的コストパフォーマンス
『こがねちゃん弁当』はランチタイムだとサービス弁当と呼ばれる弁当が日替わりで「350円」(税込)で売られています。しかも数種類のサービス弁当があるので、選択肢の幅も広いのです。
ちなみに普通の弁当も基本的には「400円前後」(税込)なので、リッチな社会人はあえてサービス弁当にいかなくても問題ないと言う価格設定。コンビニ弁当と比べても安いと言える価格設定は地域でもブッちぎりの安さです。
一部のメニューに特化したニッチ産業
『こがねちゃん弁当』のイチオシは「鶏の唐揚げ」となっております。なので基本的には「材料的には鶏肉系のみ!」みたいな感じで「鶏の唐揚げ」「鶏の竜田揚げ」「チキンカツ」にモチベーションを合わせて弁当を買いに行く必要があります。
この「鶏を揚げる」と言う方向性に特化する事で、ランチタイムの混雑時でも少人数(おとん&おかん)で対応出来るのです。なのでキャパシティ限界まで忙しくなると
「すみません、鶏の竜田揚げ弁当下さい」
と言うと
「いいから鶏の唐揚げ弁当にしとけ!」
みたいに一蹴される事もあるとかないとか…
まあ、確かに唐揚げも竜田揚げも似たようなモノなので、それはそれで許容出来るような気がしないでもないのですが、
「始めから竜田揚げをメニューに入れなければ良いんじゃないのか?」
みたいな疑問も残ります。それでもメニューに入っていると言う所で、逆に店主の鶏肉に対するリスペクトも感じられますね。
当然、鶏肉メインで食材を仕入れているので回転も良く、結果的に「鶏の唐揚げ」としての美味しさは圧倒的。
鶏の唐揚げが食べたくなったら『こがねちゃん弁当』に行っておけば間違いない!みたいな常識が地元民の中には刷り込まれています。
ボリュームがパネェ!
値段も味も圧倒的ですが、そのボリュームもヤバいです。何せターゲットは「食べ盛りの大学生」としているので、お年寄りには少々ヘヴィーな弁当になっています。
しかも「プラス50円」で大盛りに出来るので、体育会系の人達もガッツリと食べられるガチンコ仕様です。それでも足りなければ特盛、最終的には
「サービス弁当350円を2個食べる」
と言う禁断の技もあります。例えサービス弁当を2個買ってもラーメン1杯程度の価格、あのラーメン二郎と比べてもコスト的にもカロリー的にも勝つ事が出来る究極のランチなのです。
ちなみに写真は「唐揚げ弁当大盛り」(450円)ですが「御飯に唐揚げがめり込んでいる」的な勢いで唐揚げが盛られています。
「空いているスペースに盛ったらいいんじゃないか?」
みたいな疑問も残りますが、そういう細かい事は気にしないロックなオヤジが作る弁当なので、これが正解と受け止めるしかありません。
割り切ったバランス配分
若干、そっち方面に傾き過ぎた為に「サラダ的な何か」は寂しい感じですが、逆に『こがねちゃん弁当』で弁当を買う時はソッチ方面は欲していないので、特に問題はありません。
そもそも、すべての弁当が「見た目の鮮やかさ」や「栄養バランス」みたいなのを満たす必要はないのです。所詮、ちょろっと野菜が入っていた所で
「バランスの摂れた食事」
と言うモノには程遠いので、いっそ「唐揚げメインでいいじゃない」みたいな店主の割り切りの良さが感じられます。どの弁当もビジュアルが「黄金色」とか素敵過ぎます。
弁当屋としての長い歴史がある
今年で33年目だそうです。メニューの写真やらPOPなどは一新されていますが、価格などは昔とあまり変わらないそうです。
ココ。ココがポイントです。
新しくオープンする弁当屋ならば「消費税とかもあるし」みたいな感じで、それなりの価格設定に落ち着いてしまう事でしょう。しかし、この『こがねちゃん弁当』のオヤジは
「若い人にお腹一杯食べて欲しいから」
みたいな理由で、昔からあまり値上げをしないように心掛けているそうです。そして気が付けば消費税が8%になった今も「内税式」となっているのです。
そんな『こがねちゃん弁当』なので麻布のOB達には今でもレジェンドになっています。日本の獣医畜産学界に多かれ少なかれ影響を与えた弁当屋として、今でも麻布大学では崇拝されています。
店のオヤジが色々とアレである
この頑固一徹な感じの店主、彼自身にも色々な伝説があるらしいです。特に音楽とかソッチ方面はヤヴァイとの噂…
噂ではCKB(クレイジーケンバンド)の横山剣さんも「唐揚げ弁当」の大ファンだとか。
とにかく色々な意味でオヤジからの「圧」と言うかオーラみたいなプレッシャーが強烈ですが、別に怖い人ではないので弁当を注文する時は
「大きな声でハッキリと」
を心掛けてオーダーするのがベターです。あと混む時は10人くらい並んだりもするので、
「弁当の出来上がり待ちなのか?オーダー待ちなのか?」
を的確に見極め、自分がオーダーの先頭にある時は店主の一挙一動を見逃さないように神経を張りつめておいた方が無難です。
こんな感じです。とにかく「圧倒的な唐揚げヂカラ」&「オヤジのキャラ」で33年走り続けた『こがねちゃん弁当』は侮れません。この先も地元に愛されながら続く事でしょう。
最近は「コンビニ弁当」が主流になりつつありますが、筆者としては「個人経営の弁当屋さん」を、もっと評価するべきだと思います。
いわゆる防腐剤と言われている「謎の添加物」を用い、安い賃金で働かされ、流れ作業で弁当を量産している「コンビニ弁当」よりは、遥かに人が食べる物としては優れてるはずです。
是非、みなさんも地元にある「弁当屋さん」で弁当を買ってみて下さい。昔から続いている店ならば、必ず何かしらの魅力があるはずですよ。