「永い言い訳」、塾講師の感想文
私は、このように文章を書くのが好きだから、主人公の作家の世間を客観視するクセが少し分かる。娘を育てたので、小さな女の子を育てる楽しさも分かる。一生懸命勉強してきたから、男の子が受験前にイライラするのも分かる。父に最低の言葉をはいてしまったので、自分を大切に思ってくれる人の大切さも分かる。
要するに、共感できることが多かった。女性監督らしく、きめ細やかな描写が心に響いた。人生は、きれいなことばかり起こるわけではない。
自分もバツイチになってから、シングルファーザーとして子どもを育てる楽しさ、大変さを経験してきた。受験指導をしながら、さまざまな家庭と関与せざるをえなかった。
しかし、そのひとつ一つが楽しくもあり苦しくもあって、有り難い経験であった。権力者の自伝や伝記を読むと、庶民以上に苦しい生活であることが多い。大金持ちであっても、著名人であっても同じだ。
この作家も、TVに出演するほど知名度が高く、良い住居に住んでいるが問題が尽きない。
良い作品、良い授業というものは苦悶の中からしか生まれないような気がする。そもそも、この「永い言い訳」を見て感動できるのは、同じような七転八倒、試行錯誤を繰り返す人でないとムリだろう。
ムカついて、蹴っ飛ばし、ビンタを食らわし、怒鳴りつけて、泣き叫ぶ。そうして、やっとプロの仕事にたどり着くのが現実ではないだろうか。金持ちのボンボンにバカが多いのは、苦労をしないからだ。
どう考えても、親になった経験がない人がこれを見てもピンとこないだろう。
「お父さんのように、なりたくない!」
と言われた親の気持ちは分からないだろう。