第4の医療革命として注目されている「糖鎖」とは? 間質性肺炎に対する有効性についての研究結果

  by taka_c  Tags :  

2022年度には日本人の死因11位になった「間質性肺炎」。この間質性肺炎は見逃してはいけない病気として注目されています。その間質性肺炎に有効性がある可能性があるのが「糖鎖」です。

今回は10月15日に行われた「糖鎖の間質性肺炎への有効性に関するメディア発表会」をご紹介いたします。

まず初めにNPO法人 予防医学・代替医療振興協会(P&A)事務局長の中山様からご挨拶がありました。近年、がんや糖尿病をはじめとする生活習慣病、および精神疾患、アレルギー疾患、間質性肺炎など難病が増加している中で、過剰投薬の弊害など従来的な対処療法の限界が見えてきたこともあり、最近では予防医学を基礎とした補完代替療法を取り入れる医療機関が日本でも数多くみられるようになっています。

この現実を踏まえて、補完代替医療に関する学術的根拠の立証に勤め、国内外から数多く臨床試験データーや情報収集・分析するとともに、これらの資料や情報の交換を可能にする国際的なNPO法人を設立したそうです。

「当協会では、代替医療のクリニックと提携し、予防医学、代替医療の有効性を実践しています。また、細胞レベルの栄養学を中心に、一般の方々に予防医学の知識を知っていただく、学んでいただくことを目的としています。そこで本日は、私たちが注目している栄養素「糖鎖」が難病・間質性肺炎に対する有効性について学会発表されたことを受け、メディアを通して広く知っていただくために、この機会を設けさせていただきました」

そして次に、医療法人一友会のナチュラルクリニック代々木代替医療カウンセラーの鈴木先生から、糖鎖の役割についてお話がありました。

「糖鎖とは、私たちの身体の中にある約60兆個の細胞すべての膜の表面に産毛のように存在しています。糖鎖は細胞のアンテナとも言われており、細胞同士のコミュニケーションを取ったり、異物や細菌、ウイルスといったものの情報をキャッチする働きもあります」

また糖鎖の歴史についても話があり、糖鎖自体は1960年ごろから研究が始まったもので、学会発表では1990年ごろからでてきた、まだまだ新しい存在だそうです。ただ、日本人が糖鎖に関連した研究でノーベル賞も取っており、1987年に利根川進氏がノーベル医学賞、2002年に田中耕一氏がノーベル化学賞を取っています。糖鎖は世界でも研究が進んでいますが、日本が一歩リードしている分野でもあるそうです。

現在も経済産業省、厚生労働省、文部科学省、官民で研究を推進しており、国家プロジェクトとして、国家の予算、何億も投入して糖鎖研究を行っています。国立大から私立大も含めて大学院・学部では60か所以上で、糖鎖の研究と発表をしています。

人間の体の中の糖鎖を構成するのは8種類の単糖です。グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース、フコース、N-アセルグルコサミン、Nーアセチルガラクトサミン、N-アセチルノイラミン酸、この8種類の組み合わせによって、糖鎖が形成されています。

<糖鎖を構成する8種類の単糖>

糖鎖を形成する単糖はグルコース、ガラクトースは食事からでもとりやすいものの、フコース、N-アセルグルコサミン、Nーアセチルガラクトサミン、N-アセチルノイラミン酸は、食事からはほとんど摂取できないものです。
鈴木先生曰く、母乳の中にはキシロースとグルコース以外の6種類すべてが含まれているため、赤ちゃんに母乳をあげるというのは、栄養を与えるだけでなくこういった免疫系をしっかり蓄えるという意味もあるのだそうです。

また現代人は、糖鎖が40%不足していると言われており、その原因として上げられるのが、化学物質や大気汚染、薬品、紫外線、電磁波、放射能などです。糖鎖が減少したり劣化すると伝達能力が弱まるため、免疫疾患になったりと様々な異変をもたらすことに繋がります。

そんな中、9月8日の日本生物工学会で糖鎖の間質性肺炎への効果について発表をした宇都教授に、その効果はどうだったのかを、「リポソーム化糖混合物による間質性肺炎への効果」というタイトルで、お話しいただきました。

「8種類の単糖で構成された糖混合物が老化を抑制するということを、我々は見出しております」という言葉から、宇都教授の説明が始まりました。

糖鎖がどのように効果を示すかの前に、簡単に間質性肺炎の症状についても説明がありました。間質性肺炎とは、間質が膨らんでいき線維化し、肺胞が収縮してしまう病気のことです。収縮すると酸素を取り込めなくなり、身体の状態が悪くなってしまいます。

その中で宇都教授は、間質性肺炎を引き起こす際に、マクロファージという免疫細胞が関連しているという事が、最近の研究でわかってきたと言っていました。

マクロファージは身体の中をぐるぐると巡っているもので、M1マクロファージとM2マクロファージの2種類があります。M1マクロファージは、炎症性サイトカインを出して、異物やガンなどを攻撃し、食べる機能があります。食べた後は抗原を作り、滋養細胞やT細胞、B細胞が動いて、獲得免疫系が動くようになります。M2マクロファージは、抗炎症性サイトカインで、炎症を鎮める物質を放出し、炎症で損傷した細胞を修復してくれるというものです。

ただ間質性肺炎においては、M2マクロファージが過剰に増えてしまい、肺の組織が線維化してしまうそうです。

こういった背景がある中で、宇都教授は間質性肺炎モデルマウスを用いて、リポソーム化した糖混合物を投与することで、どのような結果が得られるか実験をしました。

効果の比較をするために、無投与の場合、間質性肺炎の医薬有効成分であるシクロスポリンを投与した場合、リポソーム化していない糖混合物を投与した場合、そしてリポソーム化した糖混合物を投与した場合を実施し、更に全く何も投与していない健康な状態のマウスも用いて、それぞれの肺の状態を比較しました。
その結果、何も投与していない健康な状態に一番近い肺であったのが、リポソーム化した糖混合物を投与したマウスの肺だったそうで、肺の線維化マーカーであるヒドロキシプロリンという物質も低下した結果を得たとのことでした。

「我々は細胞レベルの試験において、リポソーム化した糖混合物がM2マクロファージをM1マクロファージに誘導する結果を得ておりますが、マウスの試験においてもリポソーム化した糖混合物を投与することによって、同様の現象が起きていることが考えられます。また、血液中にあるサーファクタントプロテインDというの間質性肺炎診断用マーカーも調べたところ、リポソーム化した糖混合物では低下する挙動が認められました。
従って、リポソーム化した糖混合物の投与によって、肺の線維化の改善が認められ、線維化マーカー及び間質性肺炎マーカーも低下したことから、リポソーム化した糖混合物は間質性肺炎の改善に有効であることが示唆されました」と、実際グラフなどを用いてお話をして下さいました。

宇都教授の話が終わった後、鈴木先生からいくつかの質問がありました。

鈴木:2023年3月の日本薬学会での発表の中で、糖鎖の有効性についてお話しがあったと思いますが、糖鎖を形成する8種類の単糖全てが必要ということなのでしょうか?

宇都:今回はその話はしませんでしたが、実際にはいくつかのパターンでも実験済みです。結論としては、8種類すべてが必要であるという風に考えています。

鈴木:そうすると、この8種類の単糖の配合量、配分量などを加減することによって、また違う効果性を生み出すことも可能になってくるのでしょうか?

宇都:そうですね。老化、もしくは肺炎の症状によって必要となる糖は変わってくると考えられますので、8種類の糖の混合比を変えることによって、その効果の種類が変わってくることは十分にあり得ると思います。

鈴木:糖鎖は間質性肺炎に有効であるという事が分かったという事ですが、例えばガンのような悪性新生物に対しても効果はありそうでしょうか?

宇都:ガンは現在検証中です。ただ、最近話題になっている免疫療法がガンに対して有効だという話が出てきているため、糖混合物も効果があるのではないかと期待して、研究を進めています。

鈴木:生活習慣病である糖尿病についてはどうでしょうか?

宇都:糖尿病に関しては、東北大学が脂肪細胞の糖鎖がインシュリンの働きを強くするということを研究成果として明らかにしておりますし、他の研究グループにおいても糖鎖が糖尿病においても非常に重要である報告がなされています。
我々は糖尿病についても研究を着手したばかりでして、他のグループとは違う結果も含めて、この8種類の糖の混合物においてどんな効果が出るのか、これからに期待していただければと思います。

質疑応答でも今回のメディア発表会は多くの言葉を交わし、終了しました。
第4の医療革命と言われている「糖鎖」は、これからの研究によってさらなる可能性が見いだされそうです。

taka_c

新製品のレビューや、気になる調査結果を見つけて紹介する駆け出しライター。ライフハックから、旅行、グルメ、動物、アニメ、などなど日々の気になった情報を幅広く更新。