芸能活動50周年を迎えた俳優の池上季実子さんが、公開中の映画『風の奏の君へ』に出演しています。あさのあつこ原作「透き通った風が吹いて」を原案に、岡山県美作地域で青春時代を過ごした大谷健太郎監督が、岡山の情緒あふれる風景の中で感動のラブストーリーを綴る一作です。
「この映画は、若い3人が主役です。そういう意味では、わたしは添木になりたいと思っていたので、つまらないことで目立ちたくはない、邪魔したくないと思いました」と語る池上さん。本作への想いをうかがいました。
■公式サイト:https://kazenokanade-movie.jp/ [リンク]
●この作品、物語の舞台となっている岡山県の茶畑、情緒あふれる風景も見どころでしたが、完成した作品をご覧になっていかがでしたか?
台本上の印象はとても素朴なお話だなという印象で、どういう風に映画が仕上がるのかなと撮影前は思っていたのですが、拝見したところ「とても素敵!」って(笑)。主人公をはじめ、若い人たちの心の襞(ひだ)などがさりげなく描かれていて、わたしは好きでした。
●渓哉と淳也兄弟を優しく見守る祖母の真中初枝役ということで、初枝というキャラクターは、どのように役作りをされたのですか?
淳也が「僕は逃げて来た」と言ってはいましたが、田舎でおばあちゃんがひとりだから大変だという想いにさせるような、そういうおばあちゃんじゃなきゃいけないと思いました。
最近は80歳でも90歳でも元気なおばあちゃんがたくさんいますが、そうじゃない人もいますよね。元気で、はつらつな人もいますが、孫が心配するようなイメージです。あの茶畑、工場をおばあちゃんひとりでは手が付けられない、このままではひなびてしまうと、孫に感じさせるおばあちゃんでないといけないと思いました。
●そのため白髪にされ、かなりの変身ぶりに撮影現場の方たちも驚いたそうですね。
わたしもびっくりしました。完成した映画を観た時、「わたし、おばあちゃんやってたね」って言って(笑)。よかったなと思いました。スクリーンに映った時に白く塗っていてお客さんが冷めることは、絶対にしたくないなと。
この映画は、若い3人が主役です。そういう意味では、わたしは添木になりたいと思っていたので、つまらないことで目立ちたくはない、邪魔したくないと思いました。髪の毛ひとつで白く塗っていると思われたら、それも邪魔していることになる。なので、なるべくリアルにリアルにしようということで、髪の毛の色を6回抜いたんです。
●みなさんには、どのようなことを感じてほしいでしょうか?
若い3人の心の変遷がテーマですが、もっとぐっと深く見ていくと、日本は今、過疎の問題がありますよね。過疎化で継ぐ人がいない問題であったり、茶畑、伝統のものがお茶に限らずなくなっていくなかで、今回はお茶のことを取り上げています。茶香服は、わたしも知らなかったんです。お酒の利き酒は知っていますが(笑)、そういうこともさりげなく取り上げてみたりしている作品です。
響く人にはじわじわ入る作品で、おしつけがましい演出じゃないところがわたしは好きでした。
■ストーリー
岡山県・美作の緑豊かな山々のふもと。古き良き趣を残す町並みに温泉を携え、お茶処でもあるこの地で、浪人の渓哉(杉野遥亮)は無気力な日々を過ごしていた。一方、家業の茶葉屋「まなか屋」を継いだ兄の淳也は、日本茶の魅力で町を盛り上げようと尽力していた。
かつて野球に捧げた情熱は燃え尽き、勉強にも身が入らずにいたある日、ピアニストの里香(松下奈緒)がコンサートツアーでやって来ることを知った渓哉。里香はかつて兄の淳也(山村隆太)が東京での大学時代に交際していた元恋人だった。コンサート会場の客席で渓哉が見守る中、舞台上で倒れてしまった里香。療養を兼ねてしばらく美作に滞在することになった里香を、渓哉は自宅の空き部屋に招待する。突然現れた昔の恋人を冷たく突き放す淳也に、「あなたには迷惑はかけない」と告げる里香。こうして少し風変わりな共同生活が始まった。
清らかに流れる川を吹き抜ける風、燃えるような緑の美しい茶畑。自然の優しさに囲まれて曲作りに励む里香に、ほのかな恋心を募らせる渓哉。しかし里香にはどうしてもこの場所に来なければならない理由があった……。
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