今、中国で二酸化炭素(CO2)排出と密接に関係する「ある構造」が問題に。英国『BBC』が専門家の声を交えながら紹介しています。
これまで欧米や日本の企業は、製品のコストを低く抑えようと、中国に生産拠点を移してきました。その結果、中国のCO2排出量は増え続け、先進国からCO2排出を“外注”する構造が完成しました。そして今、中国国内で類似の構造が出現することに。
例えば、中国内陸部の貧しい地域(内モンゴルなど)から排出されるCO2の約8割は、北京や上海などの大都市に向けた製品の生産から発生したものです。専門家からはこうした傾向の広がりを懸念する声が上がっています。
米国メリーランド大学のKlaus Hubacek教授は「経済的に豊かでない地域にCO2排出を請け負わせている原因は労働コストにある。その上、中国内陸部の工場は、生産効率が十分でなく、省エネ対応の設備を導入していない。だから経済的に恵まれている地域よりもCO2排出量が増えてしまうのだ」と分析しています。
では、中国国内の外注構造はどうすれば改善されるのでしょうか。Hubacek教授は「消費者への課税」を挙げています。工場の恩恵を受けている豊かな地域のお金が、貧しい地域にある工場施設への省エネ対策の投資に回り、結果的に排出量の削減につなげるというものです。
一方、別の視点もあります。英国リーズ大学のDabo Guan上級講師は「メイド・イン・チャイナの安い製品の氾濫は、使い捨てを容認する文化をもたらしている」と警告を出しています。
Guan上級講師は「もし欧米の人々が持続可能な消費行動をとらなければ、インドやアフリカなどの発展途上国は中国と同じ道を辿るかもしれない。そうなると、世界のCO2排出量は増え続け、歯止めをかけるのは困難になる」と指摘しています。また、「中国のCO2排出量は2030年頃にピークを迎え、世界の気温は2℃上昇する」と予測する気候学者もいるほどです。
最後にGuan上級講師は、Hubacek教授と同様、「慎重な検討を踏まえた上で」炭素税導入を提案しています。加えて「もし実現すれば、貧しい地域にCO2排出を押し付けるのを止められるだけでなく、中国が地球温暖化問題解決の先導役になれる可能性もある」と結んでいます。
画像: 中国国内のCO2排出の外注構造を取り上げた『BBC』のニュースサイトのキャプチャ
http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-22841356