当たるも八卦当たらぬも八卦?信じる者は救われる?不況時に流行る占いの世界を取材した!【前編】

  by 古川 智規  Tags :  

経済の不況時や政情が不安定な時に流行るのが占いだ。女性にはポピュラーなものだろうし、男性には毎日のテレビや雑誌で転回される占いくらいは見たことがあるだろう。
そもそも占いとは何なのだろうか。そんな素朴な疑問から取材をスタートした。記者が取材した占いの世界は極々一部かもしれないが、2回に分けてレポートする。本稿はその前編である。

※参考記事
当たるも八卦当たらぬも八卦?信じる者は救われる?不況時に流行る占いの世界を取材した!【後編】
https://rensai.jp/447278 [リンク]

占いの種類

占いは古くは一般人がやるものではなく、ましてや個人の吉凶を占うことなどとんでもないことだった。洋の東西を問わず、占いはその方法に違いはあれども基本的には政治の主軸だったことは歴史が証明している。あえて個人が使用した占いに限定すれば、利用できたのは為政者のみで古くは国王や皇帝または貴族階級に限られた。

東洋においては特に漢字圏では陰陽五行説に基づいて戦略・戦術・謀略や吉凶・方角等のありとあらゆることを占うことで国を動かしていた。日本においては古くは亀の甲羅を焼いてその割れ方により占う方式から、他の漢字圏と同様に陰陽五行説や天文学に基づいた占いや祈祷で政(まつりごと・政治のこと)を行った。
時代は下り、占いが政府(朝廷)の専売(官僚による占い)から一般に広がり現在に至る。平安時代から続いた朝廷の官僚である陰陽師は中世日本の代表的な暦管理・天文学・占いを行う公務員といったところだ。

現代の占いは主に3種類に大別される。生年月日等により命運や宿命を占う命術、現在起こっている事象や偶然性に基づいて判断をする卜術(ぼくじゅつ)、目の前で見える事象から運勢や将来を占う相術である。
命術は占星術(星座占い)や四柱推命が代表格だろうか。卜術は筮竹(ぜいちく)を使用する易断やタロット、トランプ占い、おみくじ等が代表格で、花びらをちぎって愛してる・愛してないとつぶやく花占い、試験の際に鉛筆を転がして正答を見つけるのも一種の卜術であり多岐にわたる。相術はその名の通り、人相や手相が代表格で姓名判断や風水もこの部類に入る。

これらはどれが優れて、どれが劣るということではなく、占いたいことにより使い分けるのが正しい姿勢のようだ。当たるか当たらないかは客観性よりも当事者の主観によるところが大きく、占いに科学的根拠はそもそもないので古くからの例えで「当たるも八卦当たらぬも八卦」という言葉はある意味正しい。この八卦というのも、もとは中国発祥の易の8種類の形のことで、占いは当たることも外れることもるので気にすることはないという意味のことわざだ。そもそも科学的根拠がないので、結論としては「信じるか信じないかはあなた次第」ということになろう。ではなぜ占いが流行り、科学的根拠がないにもかかわらず人は占ってもらうのだろうか。現状のような不安定な時世ではその多くは「不安」からくるものと考察する。

政情不安や経済状況にかかわらず占いで最も多い相談内容は「恋愛」と「仕事」のようだ。しかし社会が不安定になると、これらに加えて金銭等の経済分野や、将来の運勢、極端な例では人の生き死にに関わることも占ってほしい事柄になる。これらは将来への漠然的な不安から来る心理なのかもしれない。そして当たるも八卦…なのであれば究極的には占いをする意味はないという結論になるが、本当のところはどうなのだろうか。現在では科学的に否定されている血液型占いでさえ日本では話のネタとして、いつの時代でもみんなで笑え共感が得られる占い方法だが、当たっているような気がする場合もあるので、あながち100パーセント嘘とも言い切れない思いもある。

四柱推命と陰陽五行説

さて、記者は高田馬場にあるいわゆる占いカフェである「道しるべCafe」に向かった。カフェの店員全員が四柱推命鑑定師(占い師)というカフェだ。中には四柱推命以外の占術ができる鑑定師も存在するが、喫茶店としての利用も可能でオリジナルのパスタを中心としたランチやドリンクには定評がある。占いとは無関係だが、ここのパッションフルーツジュースはおススメだ。

記者は現在のところ幸か不幸か特に悩みはない。悩みがないと占いをしても意味がないのかというと実はそうでもなく、自分のことを総合的に聞くだけでも当たっているのかどうかの判断材料になる。つまり「当たっているのか外れているのかを見てやろう」という邪(よこしま)な心がなかったというとウソになるが、総合的には「自分探しの占い」ということになるだろうか。

四柱推命は概ね漢字圏では現在でもポピュラーな占術で、陰陽五行説に基づいて判断する。四柱推命は日本語なので中国や韓国や台湾では名称こそ異なるが、基本的には同じ占術で歴史が古い。歴史で学んだ陰陽説と五行説という本来は異なる考え方自体は中国では紀元前から存在し、占術として登場するのは宋の時代だ。日本では平安時代末期から鎌倉時代の話であり、このころになると陰陽説と五行説は融合し陰陽五行説として確立する。これだけの歴史があると、科学的根拠はなくても経験則や統計的に一つの学問として成り立つと言っても乱暴ではないだろう。

十干十二支と干支と「えと」

四柱推命の四柱とは生まれた年・月・日と時刻の4つだ。現在では正確な誕生時刻を知る人は少ないので(母子手帳には記録されている)、生年月日の三柱で鑑定することが多い。まず生年月日をそれぞれ十干十二支(じっかん・じゅうにし)に変換する。十干は甲乙丙丁戊…と並ぶ10個の循環で、現在では「甲乙つけがたい」といった順位付けとしての言葉に残るが、本来はそれぞれに性質や意味があり、それこそ甲乙の優劣はない。十二支はおなじみの子丑寅卯…のいわゆる「えと」だ。正確には十干十二支を合わせて干支というが、現在では年の十二支だけを「えと」と呼ぶので兎年というような使い方が一般的だ。

十干と十二支を順に甲子(きのえ・ね)・乙丑(きのと・うし)…と並べていくと、十二支の動物が2個(戌と亥)余る。そこでまた十干を甲乙…と順番に並べて甲戌・乙亥・丙子…と続けると最小公倍数の60個で一巡し、また甲子からスタートする。ここから数え年の60歳を還暦と言い、現在でも長寿の祝いとされている。寿命が短かった昔は60干支を一巡するだけ生きた人は長寿の証であった。このように東洋の暦は時間が永遠に循環するのに対して、西洋の暦にはこの思想はない。よって死生観も異なり生まれて死ぬことだけが共通で、東洋では魂は循環し西洋では別の世界に行く考え方が一般的だ(復活という思想はある)。この思想は四柱推命でも色濃く反映されている。日本人が受け入れやすいのは、このような背景もあるのだろう。もっとも若い方にはタロット等の西洋の占術の方がポピュラーかもしれない。

前述の通り「えと」は生まれ年や、現在の年のみを表現するのに使用されることが多いが、生まれた月や日にも十干十二支(干支・かんし)があるのは旧暦や二十四節句が記載されたカレンダーを見るとわかる。したがって四柱推命で鑑定する分類としては、三柱だけの生年月日の組み合わせだとしても60種の干支(かんし)の3乗(年×月×日)で216000通りということになる。血液型の4種類やサイコロの6種類と比較するまでもなく、組み合わせの数だけ見ても緻密であることは素人目にも計算で理解できる。導き出された干支や持っている性質を一覧表にしたものを「命式」と呼び、これをもとに鑑定師が占う。

ちなみに干支について身近で使用されている事例を挙げると、高校野球が行われる阪神甲子園球場は「きのえね」の年(1924年・大正13年)にできたのでこの名が付けられた。漢字圏では史料に事件が干支で記録されることが多いので3000年以上、現在まで途切れずに続く干支による60年周期の紀年法は史実の発生年を確定させるのが国や暦が違っていても、改元してもそれが容易であり、歴史的事件の名称にもなっている。日本だけでも戊辰戦争、庚午年籍、壬申の乱、乙巳の変などは日本史で覚えた通りだ。日本がかかわった国際的事件においても、秀吉の文禄の役は朝鮮では壬辰倭乱と呼ばれ、日清戦争は中国では甲午戦争と呼ばれる。干支から西暦を割り出す方程式があるので事件名さえ分かれば年代を語呂合わせで忘れても、60年ごとの複数の解が出るものの計算ではじき出せる。

後編では実際に鑑定してもらった結果や感想、または考察や結論をレポートする。

※参考記事
当たるも八卦当たらぬも八卦?信じる者は救われる?不況時に流行る占いの世界を取材した!【後編】
https://rensai.jp/447278 [リンク]

※写真はすべて記者撮影

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