今回は「大規模災害に備える」と言う事で、非常用持ち出し袋の中身の「防災用品」について語ってみましょう。あくまでも家に常備しておく為の用品で、その目的は「外部の援助なしで14日間生き残る」を基本に、その後の避難生活で欲しい物をピックアップしてあります。
これだけあれば長期間の避難生活にも耐えうると思いますが、やはり容量も60~80リッターにはなります。
なので、ちょっと会社や車に常備するには荷物が多すぎるのですが、是非とも家には置いといて下さい。
【容量60~80リッターの登山用ザック】
80リッターのザック(リュックサック)となると大型の部類ですが、やはりこのくらいの容量が無いと駄目です。もしもザックが破れたりベルト類が壊れても困るので、予算2万円以内の有名メーカーのザックが良いでしょう。
「そんなに詰めても重くて背負えない・・・」と思われるでしょうが、体力が無い人は「乾パン」のように軽くて嵩張る食料を多めに入れれば良いだけの話なので、まずは大型の信頼出来るザックを用意しましょう。
【安全靴】(踏み抜き防止用のソール入り)
これはザックの隣に置いておきます。震災の時は瓦礫の山となり「釘を踏み抜く」可能性やガラス片で足を怪我する恐れがあります。安全靴は履き慣れない人には重くて大変かもしれませんが、基本的には近くの広域避難所まで歩ければ良いはずなので足首(くるぶし)より上まである安全靴がベストです。
特にその後の復興作業で瓦礫の片付けなどでも、貴方の足を保護してくれるので良い安全靴を準備しておきましょう。
【ライト】(ヘッドライトと予備のライト)
単三電池で駆動する「ヘッドライト」が良いです。これは付属のバンドで頭に取付けられるので両手が自由に使えます。
次に予備機として「ジェントス社 リゲルクリップオンLEDトーチ」も用意しましょう。これは単三電池1本で駆動し、クリップで色々な場所に固定出来るので便利です。
特殊な電池を使う本格的な明るいLEDライトもありますが、そんなに強い光は必要ありません。足下を照らして歩けて、ちょっとした作業をする時に手元が照らせれば良いのです。逆に「単三電池」で統一する事で、他の機器と電池を共用したり出来た方が便利です。
他にも「手回し式の充電ライト」などがありますが、それらは欲しければ上記の2個にプラスする形で準備して下さい。もっとも2週間なら予備の単三電池を8本も持てば灯りの面で困る事はありません。
【携帯電話の充電器】
基本的に震災直後はまず携帯電話も繋がりませんが、しばらくして落ち着くと親族の安否確認などで携帯電話の出番は多いはずです。その時に携帯電話が使えるように「単三電池で携帯を充電出来るタイプ」の充電器を持っておきましょう。
ただし、本当に必要な時以外は携帯電話は電源を切って節約するのは、言うまでもありません。
【予備の電池】
電池は全て「単三電池」に統一します。2週間なら予備の電池は4本あれば大丈夫ですが、不安な人は8本用意しておきましょう。
さらに避難先でもバリバリに携帯電話や照明器具を使いたい人は「ポータブル充電器」を用意すれば安心です。これは手回し式だと非常にかったるいので、太陽が出るとは限りませんが「折りたたみ式ソーラーパネル」の奴が最強です。最近は一万円前後で単三電池を半日で4本ほど充電してくれる製品があるので、コイツがあれば電池の悩みは解決です。
【水】
食料がなくても寝てれば一週間は死にません。しかし水が一滴もないと三日も生きられません。それどころか、一日二日で動けなくなります。
ただし「水1リットル=1キログラム」と防災用品の中では一番重いので、どのくらい持つかで悩む所です。どんなに屈強な人でも「一日2リッター必要」と言われる水を沢山は持てません。
そこでザックには頑張って2リットルのペットボトル1個、500のペットボトルを3個持ちましょう。これは最低限の水の量なので体力に自信があるなら、もう2リットル追加しても良いくらいです。
具体的には2リットルのミネラルウォーターと水筒代わりのミネラルウォーターを500、喉は渇くけど糖分も補給出来る「ジュースかスポーツドリンク」を500×2本です。
「ジュース類は喉が渇くし汎用性が無いので駄目!」と言う人が多いのですが、ちゃんと普通の水と併用して飲めばカロリーも取れるジュースは良い選択です。
ちなみに2リットルのペットボトルは口を付けて飲まず、空になった500に移して衛生的に使います。
【浄水器】
どう考えても2週間分の水は運べないので、いざと言う時の為に「携帯用浄水器」を用意します。これはストロー型の簡易型の物から、500リッター程度は濾過出来る本格的な物まであります。今は浄水器も高性能で安くなったので2万円以内で小型の高性能な浄水器を買いましょう。
「家の近くに川も池も沼もない」と言う人でも準備はしておいて下さい。最悪の事態になったら「川まで歩く」って事も有り得ます。基本的に広域避難所には「2週間分の水は用意してない」のが普通なのです。最近は浄水器を用意している避難所が多いのですが、とにかく水が無くなるとあっと言う間に状況が悪くなるので、とにかく「水くらいは自分で用意する!」って心構えでいて下さい。
【食料】
震災時は「一日一食」くらいのつもりでいましょう。食料はそこそこ重くて嵩張るのでザックの容量を圧迫します。
2週間分なので「マヨネーズ500グラム」に塩、ザックの隙間に入るだけの「乾パン」と「チョコレート」でも入れておきましょう。
そんなにストイックな食事には耐えられないと言う人には「アルファ米」などの保存食がオススメです。温めなくても水を入れれば食べられるので震災時には重宝します。味もドライカレーやピラフ、赤飯もあるので飽きる事はないでしょう。
空腹にはなりますがマヨネーズやチョコレートはカロリーが高いので重宝します。調理する機会があるか分かりませんが、マヨネーズは調理油の代用で炒め物などにも使えるので便利です。
あとは健康が気になるなら総合ビタミン剤でも持っていれば完璧です。
【ライターとメタルマッチ】
理想を言えば「ポケトーチ」のような物が良いのですが、普通に100円ライターでも構いません。これを2個といざと言う時の為に「メタルマッチ」などの濡れても着火出来る特殊な物を用意します。
筆者は昔から「マグネシウムファイヤースターター」と言う奴を愛用していて、これはマグネシウムの本体をナイフで削って付属のフリント(火打ち石)で火花を飛ばして着火させる道具です。
震災の時にやたらと火を起こすのも、どうかと思いますが「火を起こす道具」は絶対に持っていた方が良いです。
【医薬品】
消毒用のオキシドールに軟膏、バンドエイドに無菌ガーゼ、包帯(大)とテーピングくらいは持っていたいですね。あとは縫合用に裁縫用の縫い針に釣り糸、痛み止め(バファリン)、下痢止め、持病があるならその薬も必要です。
【ビニール袋(大、小)とガムテープ】
大きいビニール袋とガムテープがあれば、なんちゃって雨具や防寒着も作れるし、色々と応用出来るので準備しておきます。小型のビニール袋は食料の配給があった場合に「食器」に被せて洗い物を減らす事が出来ます。
【紐(細いロープ)と十徳ナイフ】
靴紐にもなる「パラシュートコード」と呼ばれるロープがあると便利です。上記のビニール袋と知恵を動員すれば簡易テントも作れます。あとは出血した時に患部より心臓側を縛り(棒を使って締める)止血するとか、何かと出番はあるので必ずザックに入れておきます。25~50メートルほどあれば足りるでしょう。
ナイフはなんでも良いのですが、どうせなら缶詰を開けたり瓶の栓が抜けた方が便利なので「スイス アーミーナイフ ソルジャー」くらいを用意しておくと便利です。
筆者のお薦めはペンチも付いている「レザーマン」のシリーズで、折りたたむとコンパクトだし、十分に機能するペンチが付いていて使いやすいです。
【着替え】
下着類2組、化繊のシャツ2枚、靴下2組、手ぬぐい2枚、フリース素材のパーカー、作業ズボンを詰め込みます。作業ズボンは何でも良いのですが、震災後の片付けに対応出来る様な物を用意しましょう。
あとはザックの隣に「安全靴」と一緒に防寒用のジャケットを置いておきましょう。
【飯盒とシェラカップ】
飯盒と言っても色々とありますが、出来れば蓋にも取っ手が付いている飯盒が使いやすいですね。これは軍用の飯盒に多くみられるタイプですが、配給される食事を受け取る為の「食器」としての機能を高めた結果、現在は飯盒本体と蓋の両方に取っ手が付いている物が多くなりました。
飯盒と言っても「飯盒炊爨」をする事はないでしょうが、配給される食事を受け取る際に持っていると便利です。なのでスプーンやフォーク、箸も飯盒の中に入れておきましょう。
シェラカップは要するに金属製のマグカップみたいな物ですが、ちょっとした飲み物を飲む時に重宝します。
【軍手とマスクと保護メガネ】(粉塵対策)
避難先は狭い場所に多くの人が集まるので風邪などが流行がちです。体力が無い時に風邪を引くとよろしくないので、予防の為にマスクを用意しておきましょう。
また、復興作業が始まると「粉塵」が凄い事になるので、使い捨てのマスクを10枚くらいと、目を守る保護メガネやゴーグル、手を守る軍手を用意しておきましょう。
【歯ブラシと歯磨き粉、石けん】
これは非常時には必要ないと思えるでしょうが、水に余裕があれば歯磨きは重要です。虫歯になるからと言うよりは「歯を磨けない事のストレス」から身を守る為の物と思って下さい。
同様に体を洗う機会もないとは思いますが、手洗いにも使える「石けん」を1個は持っておきましょう。
【耳栓】
これも地味なアイテムですが、避難先には赤ちゃんや子供も多いはずなので、しっかり睡眠を取る為には必要になります。
【トイレットペーパー】
無くてもどうにかなりますが、やはり無いと困るのがトイレットペーパー。
【筆記用具】
油性マジックとボールペンにメモ帳くらいで良いでしょう。何が起こるか分からないので腕と足にマジックで自分の名前、身内の連絡先と血液型を書いておきましょう。
【ラジオや無線機】
アマチュア無線の免許があれば無線機があると最強です。ラジオや無線機は携帯電話と違ってインフラが整っていなくても、電波さえ入れば情報を手に入れられるので必ず用意しましょう。
筆者のオススメは「携帯受信機」で、これは無線機から発信する機能を取り除いた物と思って頂けると、分かりやすいと思います。発信する事は出来ませんが、無線の免許も必要ないので、誰でも所持する事が出来ます。
一般のラジオと同じように番組を聞く他に、航空無線や消防無線(アナログのみ)をスキャンして拾う事が出来るので、現場の状況をより詳しく知る事が出来ます。例えば災害時に上空を飛んでいる消防ヘリコプターの無線を聞けば、道路の状況や火災の状況、どの程度まで救援が来ているのかを知る事が出来るでしょう。
【お金】
のちのち必要になるので、少しは現金を持っていた方が安心です。通帳を持たなくても良いのですが、自分の口座番号くらいはメモして持っておきましょう。
ここまで揃えると、さすがに80リッターのザックもそろそろ一杯なはずです。もしも余裕があれば「ポンチョ」や「雨合羽」を入れて下さい。寒い時には防寒にも使えます。
あとは「寝袋」と「マット」(寝袋の下に敷く物)があると最高ですが、どう考えてもザックには入りきりません。ザックの外に縛り付ける形になるので、今回はオプションとする事にしました。
ただし、やはり数週間もの間、慣れない環境で睡眠を取る事になるので、ザックの外に付ける事で邪魔にはなりますが、快適な睡眠を得られるのであれば「寝袋」と「マット」は欲しい所ですね。
基本的に避難先は「体育館」などで屋根こそあっても人数分の毛布があるとは限りません。十分な睡眠が取れなければ健康にも影響します。
登山用のザックには、もともと外に寝袋やマットを縛り付けやすい様にスリングテープが沢山付いているはずなので、取り付けるのは容易なはずです。
他にも「避難先でプライバシーを保つ為にテントが欲しかった」と言う意見も多かったので、出来ればペグ(杭)無しで自立出来るテントも欲しいのですが、そうなると荷物が多すぎて迅速な避難に支障が出ると思われるので、今回は外してあります。
避難先に数週間滞在するようであれば、必要に応じて家にテントを取りに行った方が良いでしょう。(家が残っていればの話ですが・・・)
今回は「自分の安全を最優先」にしているので、災害救助には触れていません。もしも放っておけない性分でしたら「皮手袋、バール、ヘルメット」くらいは準備しておきましょう。
ただし、今は法改正で「バールを持ち歩いてると逮捕!」となるので、残念ですが災害救助は本職の方々に任せた方が無難かもしれません。(そうは言ってられない状況でしょうが・・・)
とにかく最初の危機(建物の倒壊、火災、津波など)から逃れたら、次は「水と食料」を確保して、眠れる環境(雨をしのぐ、保温)を作り、健康を維持(マスクによる予防、出来る限り衛生を保つ努力)する事が大事です。
そして信頼できる情報を入手して(ラジオ、無線機)今後の状況の見極めをする必要があります。
いつ来るか分からない地震に備える事は、絶対に必要な事です。みなさんも3月11日と言う日を機に身の回りの防災用品をもう一度見直して見て下さい。