[出典:NHKクローズアップ現代]
2022年度末から2023年1月、2月と立て続けに日本領土に届く距離の弾道ミサイルを連射している北朝鮮情勢。2022年2月24日から始まったプーチンのウクライナ戦争で記憶の中から消されゆくそのもう一つの核危機に警鐘を鳴らす。
筆者は2017年入院中に、米国のトランプ政権と北朝鮮の金正恩独裁政権とが火花を散らして「恐怖忌避」し合う「核の恫喝」に本気で核兵器を使う気なのか?と病棟で毎晩2時、あるいは早朝4時までスマホにベタ打ちして質疑要項を作り、抜粋翻訳整理し、日中、電話・メール攻勢をかけ続けて2ヶ月かけたGoogle+に書き上げた。
この時のロシアのウラジミール・プーチン大統領は、ウクライナ侵攻とは違い、トランプvs金との核恫喝合戦に「惑星存亡をかけた核危機」だと先頭に立って警告した真っ当な指導者ではなかったかと思う。中国の習近平国家主席も「吉林日報」に「放射能をシャワーで洗い流せ」「核戦争に備えよ」など、今世紀最大の核危機に実は一番恐れを抱いていた。
当時はまだ個人ブログしか持っておらず、「北朝鮮非核化」キャンペーン記事は第三弾まで書いたが、第三弾で初めて「ガジェット通信連載JP」から承認をいただいて公的に掲載が叶った。【軍縮】北朝鮮の非核化・イラン核合意の行方―日本が担うべき役割は?
ウクライナや台湾有事に目が向きがちな今、そのリスクが見落とされがちな北朝鮮核危機に過去、真剣に格闘した軌跡をあえてここに公開することで今後へ向けた平和貢献の提言を伝えたい。
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「今日、国連総会。北朝鮮の第四次核危機に非軍事的解決を」(2017年9月18日)
<リード>
【1】核・ミサイル発射継続にアジア初の避難民受け入れ米中日韓ASEAN連携体制も
【2】中国を巻き込み北朝鮮の経済孤立無援包囲網を
【3】「核武装論」は不要 「対話」と「人権」交渉を
【4】非軍事的解決の日朝国交正常化を
<結び>
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北朝鮮の核実験・弾道ミサイル発射が続く中、2017 年 9 月 18 日から 5 日間に渡りニューヨークで国連総会が行われる。
連日、戦争が避けられないとの米朝のプロパガンダを煽る大手マスコミの報道が目立つが、今こそ軍事的解決に寄らない被曝国日本としての平和希求に果たすべき役割を考察する。
核・ミサイル発射継続にアジア初の避難民受け入れ米中日韓
ASEAN 連携体制も
2017 年 9 月 15 日、北朝鮮は弾道ミサイルを発射した。北海道上空を通過し て襟裳岬から 2 千キロの海中に落下。そこまで飛距離を伸ばす技術開発の速度 が向上しているということだ。日韓は、中距離弾道ミサイル「火星(ファソ ン)12」と分析している。
米国は核・ミサイル問題に対し、限定的な軍事力を行使する「強制外交」を 日韓と共に行っている。北朝鮮は 2018 年までに米本土を射程圏内に入れた 1 万 2000 キロの ICBM の技術開発に成功するだろうと米国に分析されている。 弾道ミサイル試射を連発されている日本は、あくまで米国を狙った実験台にさ れているに過ぎない。
北朝鮮が米国に向けて発射するミサイルが日本に飛来しても、平和憲法が撃ち落とすことを容認するかは定かではない。グアムを狙うミサイルは集団的自 衛権の範疇に該当し、安倍政権は 2014 年に集団的自衛権を閣議決定して以 降、米国から国防に関してとやかく言われなくなった。要するに、54000 人の 在日米軍部隊が駐留しているが、警察の捜査権や司法権すら日本に認められて いない日米地位協定からも明らかなように、日本は米国に利用価値があるか否かの捨て駒としてしか見られていないということだ。北朝鮮にあるミサイルの 発射台を先制攻撃する「敵基地攻撃能力」はそれよりもずっと平和憲法第9条 2 項「交戦権の否認」が容認しないだろう。
この北朝鮮の暴挙に反発した在日コリアンで組織された「韓国民団」は同月 16 日に北朝鮮の核実験・ミサイル発射に抗議するデモを行った。金正恩政権の 核開発と経済政策を同時に推し進める「並進路線」が軍事力にばかり資金を割 き、経済政策として完全に破綻しているにもかかわらず、王朝政治を確立する ことで北朝鮮の市民生活が困窮し、自由と人権を弾圧し続けることに強く抗議 するものだ。
「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」の佐伯浩明事務局長は「今年に入ってから北朝鮮国境付近の警備が強化され、鉄条網が張り巡らされ送電線に電流が流れて脱北が極めて難しくなっている」とその内部事情を語る。多くの北朝鮮の脱北者は北から逃れる過程で人権侵害、難民地位付与拒否、強制送還を経験している。その法的地位と難民認定されるか否かは日中韓各国で異なる。
中国当局は脱北者は一括して「経済的困窮者であるだけで難民ではない」と主張している。従って脱北者に対し国連難民高等弁務官の接触許与、難民判定、その結果の受け入れという普遍的な難民手続きを許可せず、検挙後、直ちに北朝鮮への強制送還措置が行われることを繰り返してきた。
韓国政府は、脱北者を南北分断で苦しむ「分断被災者」と見なし、本人の自由意思に基づいて保護と支援を希望する場合、全員を受け入れる原則を堅持している。また、「脱北者定着支援法」に基づき、脱北者が安定して定着し、自立することもバックアップしている。
日本の「入管難民法」は、日本政府が特別許可を付与しない限り不法入国 者として強制収容所に連行されるなど、1990 年から 2000 年まで元国連難民高 等弁務官だった緒方貞子氏の時代から未だほとんど進展がないものだと国際社 会から批判を浴びている。
万一朝鮮半島有事が起きれば、韓国に流入する避難民の合計は 300 万人を超 えると予想されている。韓国と北朝鮮の間の非武装地帯(DMZ)には数多くの 地雷が埋められており、厳しい警戒状態下にあるため、国境付近の住民の一部 は中国に避難し、一部は船などを利用して日本に来る可能性も高い。
内乱や深刻な飢饉にコチャビが北朝鮮内部に溢れ、軍人も栄養失調に陥っている中、「もし北朝鮮有事が起きれば、大量の避難民が発生し、中国のみなら ず韓国、日本、米国、あるいは東南アジアの各国が話し合い、分担して引き受 ける方策が取られるかもしれない。中国に対して求めるだけでなく、ASEAN も巻き込む形でアジア初の出来事になるのではないか」と佐伯氏は指摘している。
ASEAN も関わってくるとなると、1980 年代後半から ASEAN が主導してい る人身取引防止プログラムの枠組みで交渉される課題も山積みだ。国連薬物・ 犯罪事務所(UNODC)の報告書によると、2015 年では域内国への約 5000 人 の不法入国者のうち、約 8 割が何らかの形で犯罪組織の蜜入国支援を受けてい るという。海上を彷徨い、移送協定を締結していない豪州でも米国と同様、域 外における送還措置について難民条約第 33 条、ノン・ルフールマン原則の適 用はないことが判例で確立している。
北朝鮮避難民がもし、日本での生活を希望した際には何が論点となるか?入 管難民法に詳しい山脇康𠻸弁護士は「2006 年に成立した『拉致問題その他北 朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律』を政府はどの程度重く見 るか?人権保障や仮上陸だけでなく、一時庇護上陸の許可まで認めるべきだと いう見解も十分に成り立つのではないか。数人レベルの大量の難民が特殊工作 員も紛れ込む恐れを否定できない」と指摘した上で、「日本社会に受け入れる ためには法改正もあり得る。大規模な予算措置を講じ、生活保護や定住支援の 対象とすることも検討主旨としてはあり得る」と語る。
中国を巻き込み北朝鮮の経済孤立無援包囲網を
同月 15 日午後(日本時間 16 日未明)国連安保理は、緊急会合を非公開で開 き、北海道上空を通過した北朝鮮の弾道ミサイルへの対応を協議。全加盟国に 北朝鮮制裁決議の履行徹底を求める非難声明を発表した。別所浩郎国連大使は 会合後、記者団に「(北朝鮮の)政策を変えるまでは圧力をかける必要があ る」と強調したと「NHK」(2017 年 9 月 16 日)が報じた。
同月 11 日にも、北朝鮮の第六回目の核実験を受けて、北朝鮮の支援国であ る中露も賛成に回る国連制裁決議 2375 が全会一致で採択されたばかりだっ た。
国連安保理決議という国際制裁だけでなく、日米韓や欧州連合(EU)はこれ までも単独制裁という形で不拡散に関する独自の対北制裁を実施してきた。北 朝鮮の支援国である中露も巻き込んで北朝鮮を孤立化させ、兵糧攻めにすべき ではないか。2012 年 2 月 29 日のオバマ政権時の閏合意の際のように、北朝鮮 の市民だけではなく軍人も飢饉に喘いでいる内部事情から食糧支援と引き換え に核・ミサイル技術開発を凍結させたことがある。また、自給自足を是とする 「自強力第一主義」をスローガンに打ち出していたにも拘らず、北朝鮮側から 国連の WFP(世界食糧計画)に支援を求めてきた史実もあるため、ここまで の経済協力だけは応じない孤立無援状態の包囲網をまず第一段階で敷き人の往 来だけは欠かさず、北朝鮮が支援を求めざるを得ないほど疲弊した段階で、米 朝協議と日朝国交正常化を図ってはどうか。
「報道特集」(2017 年 9 月 9 日)がインタビューした脱北者の元朝鮮労働党幹部 によれば、「北朝鮮は石油買い付けをロシアのナホトカでも行っている」とい う。中国に 90%は依存しているが、最近ロシアの最大手石油企業ロスネフチの 三位に付けた株主に中国民営大手企業がなった。「ロシアのナホトカで北朝鮮 より日米韓が高く買い付ければ、一つの戦略になるのではないかとの軍事では なく経済政策での孤立化を図るべきだ」とする一案を提言した。
これらの政策提言で鍵を握るのは中国だ。第二次核危機が勃発した後、中国 も取り込んだ米中日と南北朝鮮が参加した「六ヶ国協議」という多国間枠組み では 2003 年から 2007 年までは議長国を中国が務め、2005 年 9 月の「共同声明」では「完全かつ検証可能で不可逆的な核解体(CVID:Complete Verifiable Irreversible Dismantlement)」の原則の下、「朝鮮半島の非核化」(北朝鮮の 核放棄)のための段階的なロードマップを策定した。だが、2007 年以来、協 議は再開されていない。
しかしながら CVID で北朝鮮に核放棄させるのはもはや困難だろう。現在 CVID の論陣を張っている論客は見当たらなくなった。 日本は冷戦期の米ソ デタントの際、「核兵器解体支援」政策の一翼を担った。
中朝は互いに利用し合い、裏切り合い、それでも国交を維持した外交関係が
背景にある。
そのパワーバランスを上手く巻き込むのに、トランプ政権が感情論に走って対中貿易制裁を発動し、対露制裁強化法を連発するのは賢明な策とは思えない。
中国に太いパイプを持っていた No.2 だった張成沢氏が粛清された後も、北朝鮮は、第六回の核実験をいずれも 2016 年杭州の G20、そして今回の BRICs サミット開催中に行い、習近平国家主席のメンツを丸潰れにした。日本の大手 マスコミはドナルド・トランプ米大統領の報復制裁しか伝えないが、一番顔に 泥を塗られたのは中国共産党全国大会を来月に控えた習氏である。
中国は自国のメリットになると思わない限り、決して動く国ではない。問題
解決のためには、米朝協議が必要不可欠との立場だ。「双暫停」に成功すれば、中国としては米朝が平和協定さえ締結できれば北朝鮮が核にこだわる理由はないはずだと考えていよう。
「核武装論」は不要 「対話」と「人権」交渉を
連日、「WSJ」など米保守系メディアが「斬首作戦」で金正恩氏の首を取れ と強硬論陣を張り「核武装論」を煽って日韓の上層部でもニュークリア・シェ アリングの案が出ているとも書き立てている。
北朝鮮と取引するのが困難なのは、核抑止の政策と演習の存在を支持するための支柱として使われることが研究に価値をもたらしているためだ。それに直面したアジアにおける核兵器使用の影響力と準備が解決策ではなく、安全保障の問題のように思えるだろう。
しかし核抑止に基づく核兵器開発が金正恩一強独裁体制を維持する唯一の政治になっていることは自明の理だ。
北朝鮮の場合、このことが安全保障の認識や他の選択肢を歪める手段を含むあらゆる手を使って核兵器と関連したリスクの三つの論点を明らかにする。
第一に金正恩氏は核抑止を創り上げた安定した概念で生来の矛盾を危険に晒している。
第二に北朝鮮の不透明性が極端になっている間、その透明性の欠如というも
のは核保有国の全ての核兵器開発計画の特徴を示す。
第三に平壌の恥知らずの脅威とは制度的な核戦争の「オプション」の標準化を反映する。
「The Diplomat」(2017 年 9 月 15 日)によれば「北朝鮮の核開発計画によって引き起こされた重大な脅威に、何の解決策も申し出ず、核抑止の必要性を 生む他の安全保障の挑戦にも取り組まない」という理由で、122 か国に採択さ れた新しい国連の核兵器禁止条約を、米英仏が共同で非難している。
しかし日本が核兵器禁止条約の議決に特使を欠席させたのは恥ずべき大きな過ちだ。日本は唯一の被爆国であるにもかかわらず、米国の核の傘に甘んじ、核廃絶を本気で目指そうとはしていない。
国際政治学上、今年 7 月に核兵器禁止条約が採択される以前は、核不拡散条約(NPT)第 1 条「核兵器国の不拡散義務」と第 2 条「非核兵器国の不拡散義 務」を規定した国際法に則り、核兵器国は非核兵器国に対し消極的安全保障を 供与した。これは非核兵器国に対し核兵器の使用を自制するものである。
米国の同盟国である非核兵器国に対する核攻撃に対し、核の傘を提供することは積極的安全保障として概念化できる。
非核三原則を掲げて核兵器開発を自制すると共に、米国の核の傘に依存してきた。
非核三原則と核の傘とは、一方が成立すれば他方は成立しないという意味において代替関係にあって両立するものではない。
むしろ、非核三原則と核の傘政策依存は矛盾しないどころか、その前提でさえあるという意味で補完関係にある。
日本が核廃絶を本気で目指そうとしていないのは、中国と北朝鮮が核の脅威を保有しているからだ。
思えば、オバマ構想時も米国が核保有を続けながら「核なき世界」を主張するのは矛盾を孕んでいた。現有の不拡散レジームでは途上国が重視する通常兵 器の削減は含まれておらず、核でも不拡散を重視する一方、核軍縮を軽視して いるし、核抑止が国際的な戦略安定に不可欠なこともあるとの批判がなされて きた。2009 年に行った「核なき世界」のプラハ演説でノーベル平和賞を受賞 した後、オバマ氏は核実験を行った。2014 年 2 月に国家核安全保障局 (NNSA)はロスアラモス国立研究所とサンディア国立研究所で B61 核爆弾の 臨海前核実験を行った。ドナルド・コック米国防次官補は「2020 年代頃か末 には」旧式モデルとの交代が可能になると語った。米露戦略核削減条約(新 START)対象弾道数は世界第 1 位のロシアの 4300 弾に次ぎ米国は 4000 弾を保有している。
核兵器保有国(米露英仏印パ、イスラエル、北朝鮮)の核戦略の中で、カシミール論争の紛糾する緊迫関係にパキスタンのムハンマド・アシフ国防相をインドに対する戦略的核兵器行使の脅威に晒すよう主導したと 2016 年に報告さ れている。パキスタンが核戦略で世界に及ぼす影響はいまだ大きい。
「WSJ」に寄稿した国際政治学者のウォルター・ラッセル・ミード氏が「日 本が核武装し、つられて韓国や台湾も核武装した方が中国の台頭を抑止できる し、日韓から米軍が撤退できて防衛費を節約できるので好ましい」として米国 が北朝鮮との戦争かアジア覇権の放棄かの二択しかないように囃しているが、騙されてはならない。
米シンクタンクの外交問題評議会(CFR)が公表した報告書では、トランプ 政権の対北朝鮮戦略とは、1封じ込め2関与を基調におき、3体制変革を促し つつ、それらが失敗した時に最終手段として4軍事攻撃や5体制転換で金正恩 政権の首をすげ替える「あらゆる選択肢がテーブルの上に乗せられている」としている。
すなわち、軍事攻撃はあくまで最終手段に過ぎないのだ。
ジミー・カーター元米大統領(民主党)は 12 日、南部ジョージア州アトラ ンタで講演し、米国を敵視する北朝鮮への対応について「私だったら平壌に自 分が行くか、最側近を今すぐ派遣する」と述べ、直接対話に乗り出すようトラ ンプ大統領に促した。AP 通信が報じた。カーター氏は、米国が北朝鮮側に 「敬意を持って接し、話し合いをしない限り進展はない」との考えを示した。
トランプ氏に対して「平和を守り、人権を擁護し、真実を伝える」べきだとも語った。「共同通信」(2017 年 9 月 14 日)
平和協定を締結するために、米国が核兵器開発の凍結を求めれば、当然北朝鮮は核の平和利用や宇宙開発での協力を求めてくるとみて、技術協力を進めれば相手の手の内も分かるため、ある程度は米国側の利益にもなる。
米国にはその分野の専門家が少ないとの見方もあり、長期的には専門家の人 材育成に注力すべきだが、現時点では米朝間で〈トラック I.V、II〉を含む人の 往来を欠かしてはならない。
「核・ミサイル技術の進歩には繋がりにくいが相手の情報は得られる」という外交上の駆け引きに利用できる外交官や政治家、専門家の往来は不可欠である。またピープル・トゥー・ピープルの民間外交レベルでも北朝鮮元高官と接触すべきである。
その際、北朝鮮がよく言い訳的に反論してくる人権問題を外交駆け引きに利 用できまいか。例えば、2017 年 9 月 12 日の国連人権理事会では、北朝鮮は人 権分野における政治問題化、選択性、ダブルスタンダードに反対だったと国連 人権高等弁務官に噛み付いた。「障害者の権利に関する国連特別報告官を最近 受け入れて招き、国連人権理事会に協力する意思があるという証拠だ」と反発 している。米国が中国と外交する際に、必ず中国の人権活動家などの政治囚を 釈放させるように、見返りとして北朝鮮市民の保護や拉致被害者、南北離散家 族の引き渡しを求めていくべきではないか。
国際反核法律家協会副会長の浦田賢治氏は「(米国の報復)核兵器使用に関 して『2 名承認のルール』がある。一人はドナルド・トランプ大統領で、 もう 一人はジェームズ・マティス国防長官である。もしマティス国防長官が承認し なければ、大統領はレックス・ティラーソン国務長官に次ぐ資格者であり、承 認する者に要請できる。しかしながら、(閣僚の中で)とりわけマイク・ペンス 副大統領は 憲法修正第 25 条(1965 年 7 月 6 日連邦議会が発議し、67 年 2 月 10 日成立)の 4 項の定めにしたがって、臨時大統領として職務をおこな い、大統領の核使用命令権行使を封じ込めることができる」と指摘する。「しかも大統領は『2 名承認のルール』が充たされた場合でも、閣僚たちに大統領 の核使 用命令権行使を告知しなければならず、軍部は大統領命令が令状で明示されかつ適法であ ることを決定する以前に、差し迫った脅威の兆候がある ことを見極めることを欲するであろう。なお、米国法に加えて、核兵器使用に 関する国際条約(国際法・国際人道法)が存在するのであって、何時、どのよう に核兵器使用ができるかについて制限を加えている。 したがって大統領は単 独で核兵器の使用を命じることはできない」と解説した。「政経研メールニュ ース」(2017.9.15)
法的にトランプ氏の対北強硬姿勢から核のボタンに手をかける暴走を止めることができると言えよう。
非軍事的解決の日朝国交正常化を
日本は 2014年5月ストックホルム合意後、翌 2015 年には拉致被害者全員 死亡の調査報告書を北朝鮮から突きつけられ、国交断絶したと見られている が、アントニオ猪木参議院議員は北朝鮮に幾度となく訪朝しスポーツ外交のチ ャネルを開いている。このように経済政策では北孤立化を図るが、人の往来は 切らしてはならない。
東京大学の和田春樹名誉教授(歴史学)はバラク・オバマ前米大統領が断絶 していたキューバとの国交回復に成功した外交実績をモデルとし、「日朝の平 壌宣言を再確認する共同声明を出して、国交を樹立し、大使館を平壌と東京に 開設して以下の 3 点の問題1植民地支配の清算事業と経済協力2拉致問題3 核・ミサイル問題と経済制裁の解除で交渉を再開する」ことを政策提言してい る。「世界」(2017 年7月号)
北朝鮮の第三次核危機の報道で最近取り沙汰される電磁パルス(EMP)弾攻 撃だが、日本は中露に比べ、防衛対策が手薄だという。
だが「防衛省は『防衛技術戦略』に基づき、2018 年度概算要求に『電磁パルス(EMP)弾』の研究費として 14 億円を計上した。既に自民党国防部会 は、敵基地攻撃能力をつける提案をしていた。防衛省は将来米国と協力して軍 産複合体(コングロマリット)により核爆発を利用する危険がある」と「しん ぶん赤旗」(2017 年 9 月 1 日)は報じている。
北朝鮮の狙いは米国が自国の安全保障を優先させて韓国を犠牲にしたと反米感情を高めさせ、米韓の二国間関係を悪化させることだ。北が報復措置に出て韓国のソウル市を火の海にすれば、南北離散家族や在韓邦人が犠牲となる。
そうなる前に核シェルターで保護することや、日本政府が避難勧告を出して
帰国させるなどの措置を取らねばならない。
在韓邦人を乗せた米艦に自衛隊が乗り合わせて武器等防護するところまでを 安保法制を定めた際、自衛隊法改正で 95 条の 2 項に規定し、年内にも日本維 新の会が憲法 9 条改正で第 3 項に米艦防護までを自衛隊の任務として書き込む 対案の可決を狙いとしている。
一方で日本国内では、安倍政権は国民保護法の下に住民避難訓練を全国各地で行っている。確かに最悪の事態を想定して有事に備えることは必要だ。だが、筆者の取材に応じた三重短大の藤枝律子教授は「国民保護法は欠陥法どころか、戦前戦中と同様、恐怖心を煽らせて国民を戦争に駆り立てる法律だ。先の戦争において、原爆の被爆者や空襲の被災者に対して未だ十分な損害賠償や補償がなされていないことを忘れてはならない」と国の責務を問うている。
〈結び〉
筆者は現在(2017年当時)闘病中のため入院しているが、この日本の国防の危機に市民や拉致被害者、在韓邦人、自衛官の尊い命を守るには一体誰が一番救わなければならない虐げられる人々なのかを必死に足りない頭で考えている。
また、為政者の戦争へ突き進む暴走を食い止めるには国際法より上位の最高法規である憲法で権力に縛りをかけ、ドイツを先例とした憲法裁判所の創設を真剣に考えるべき時であり、立法府の行政権や執行権のチェック機能が双方共に活きていない事態を重く見ている。