東京タワーでめくるめくeスポーツ体験(辛酸なめ子)

  by 辛酸なめ子  Tags :  

このところeスポーツが発展していると聞いて、運動が不得意な私でもできるかもしれないと、体験できるスポットを探してみました。

ちょうど、「国内最大規模のeスポーツパーク『レッド トーキョータワー』が、東京タワー内に開業」というニュースを発見。「eスポーツ」は「エレクトロニック・スポーツ」の略で、電子機器を使って行うスポーツのこと。きっとコントローラーとかキーボードを打ったり、ヘッドマウントディスプレイを装着してVRでスポーツを楽しむ感じだと予想し、予約して伺いました。サイトには「年齢も性別も超えた誰もが365日遊びつくせる、かつてないスケールのesportsパーク。」とあったので、運動が苦手でも楽しめるスポットのはず……。

初心者なので19時以降1000円の安いチケットを購入。1時間以内であれば、入場料金だけでアトラクションは遊び放題なので、下手なゲーセンよりコスパが高いです。
 

eスポーツの固定観念をくつがえすコンテンツの数々

 
アドレナリンを誘発しそうな赤く光るエントランスをくぐり、施設内へ。3階から5階まであって結構広いです。日曜日夜だったので思いのほか空いていて、ほとんど並ばずにアトラクションが次々体験できそうです。

ブースがいくつか区切られている中、目に付いた「VALOCLIMB」のブースへ。フィンランド生まれのARボルダリングスポーツだそうで、ボルダリングの岩が壁一面に付けられていました。そこにプロジェクションマッピングで玉みたいなものが投影され、触って消していくというゲームのようです。当然ボルダリングはできないので、手が届く範囲だけ消していきました。さすが北欧、画面のデザインがPOPでおしゃれです。

続いて「CYBER PLAYERS」というゲームコーナーへ。リアルのボールが置かれていて、もしかして……と思ったら、プロジェクションマッピングで壁に投影される的に向かって実際にボールを投げる遊びでした。めまぐるしく現れる数字に向かって走り回りながらボールを当てるという……想定外の運動をする羽目に。サイバーバスケで体力をかなり消耗しながら、思っていたeスポーツと違う、という思いにかられました。というか、ここ、ほぼスポッチャでは……。

「HADO」というゲームはヘッドマウントディスプレイを装着するのでやっとeスポーツらしいアトラクションができる、と思ったら、モンスターを攻撃するために激しく手を降り続けなければならず、これも二の腕がキツい感じでした。夏前に引き締めたい時に良さそうです。

予想外の激しい運動で心身が動揺したのか、「RED゜E-MOTOR」のレースゲームでは十数回ぶつかりまくり、あまりにもひどい運転を後ろからスタッフの方が見学していました。もしかしたらeスポーツと相性が悪いのかもしれません……。

癒し系のeスポーツを探し、「SISYFOX」という大玉転がしゲームに挑戦。リアルの大玉を全身使って回さないとならず、ゲーム時間が長くて、転がしても転がしても終わりません。ゲーム時間が長いのはありがたいことなのに、早くゴールに着いてほしいと願いながら、大玉を転がし続けました。

体力にトドメを刺したのは「VALO JUMP」。エアートラックとARが融合し、自分がジャンプする姿が画面に映し出され、ゲーム内に没入できます。上空のゴールを目指し、木の枝をジャンプで登っていきます。リアルでジャンプすると画面が連動。映像はきれいでしたが、ジャンプ100回以上してもゴールが見えません……。82%の達成率でタイムアウト。

ずっと座ってできるゲーミングPCのスペースもありました。3時間の通常利用時間があっという間に過ぎそうです。

カフェ&バーもありましたが、制限時間があったのでほとんど休まず、運動し続けました。eスポーツというジャンルに引き寄せられてきた、インドア派で運動不足な人を半ば強制的に体を動かさせて健康にするという、フィットネス&リハビリ施設なのかもしれません。しかし入場料金だけでこれだけたくさんのスポーツができて、飽きずに筋トレできる施設は他にないのでは? と思えてきます。その日の夜から筋肉痛が始まりましたが、ジムに行くより安いのでまた近々老体に喝を入れるため予約したいところです。

辛酸なめ子

漫画家・コラムニスト。東京生まれ、埼玉育ち。雑誌や新聞、ウェブなどに寄稿。 近著に「愛すべき音大生の生態」(PHP)「スピリチュアル系のトリセツ」(平凡社)、「電車のおじさん」(小学館)、「無心セラピー」(双葉社)、「新・人間関係のルール」(光文社新書)、「女子校礼讃」「辛酸なめ子の独断!流行大全」(中公新書ラクレ)など。