7月に入って、梅雨も明けていないのに、猛暑に見舞われた滋賀県。東近江市では7月2日、35.9度と今年初の猛暑を記録しました。彦根市でも35.0度、大津市でも33.6度を超えて、いずれも今期最高気温を記録したようです。とにかく暑い、今年の夏はなんか異常です。
7月になっても、烏丸半島の観光名物であるハスの群生が姿を見せない
異常と言えば、琵琶湖南湖の東側にある滋賀県草津市・烏丸半島の観光名物であるハスの群生が姿を見せないのです。烏丸半島と言えば、毎年9月に開催される『イナズマロックフェス』が開催される場所なのですが、同じ敷地内に「水生植物公園みずの森」という植物園があり、一帯が日本最大級のハスの群生地になっているのです。
例年なら、今頃、湖岸一帯に緑のハスの群生が拡がり、ピンク色の美しい花が顔を出す光景が見られるのですが、今夏はまったく見られません。
今年の7月3日に撮影した画像と一昨年の7月21日に撮影した画像を比べてみてください。2014年には一面を覆っていたハスが、20日ほどの日の違いはありますが、今年は葉の一枚も姿が見えないのです。
2014年7月21日筆者撮影
2016年7月3日筆者撮影
地元の新聞メディアで報道された記事によると、はっきりとした原因はまだわかっていないということを前提とした上で、ミシシッピアカミミガメやアメリカザリガニなど爆発的に増えている外来種による食害、ここ数年で飛来が増えている渡り鳥・オオバンによる食害、それ以外では長年の群生による地下茎の混み合いによる成長力の低下など、いろいろな要因が複合したことが原因ではないかとの専門家のコメントを掲載しています。
参考:http://www.kyoto-np.co.jp/environment/article/20160702000031
オオバンはどれくらい増えているのか?
原因のひとつとされたオオバンですが、今冬に滋賀県が調査した結果によれば、観察できた42種、19万8389羽の水鳥のうち8万4869羽がオオバンで、9年前の4倍の過去最高の飛来数となっています。
オオバンは冬にユーラシア大陸から越冬のために飛来してくる冬鳥なのですが、夏場でも観察できることから、そのまま琵琶湖に留まっている個体もいるのではないかと思います。
なぜこれほど琵琶湖に集中して飛来しているのか?一説では中国に飛来していた個体が環境の悪化で琵琶湖に移動しているのではないかとのこと。
2007年からのオオバンの飛来数推移 滋賀県の調査数値を元に筆者が作成。数量、割合ともに年々増えてきていることがわかります。
参考:http://www.pref.shiga.lg.jp/d/shizenkankyo/gankamo.html
オオバン。黒い体と白い額が特徴です。
冬の湖面でくつろぐ無数のオオバンの姿 2015年12月20日筆者撮影
脅威の成長力、湖岸一帯に拡がる黄色い花、外来植物・オオバナミズキンバイ
ハスが生えなくなった湖岸で目についたのが、近年、爆発的に増えている外来植物・オオバナミズキンバイ。琵琶湖では2009年に初めて生育が観察されました。現在では琵琶湖南湖湖岸の波の影響を受けない入江の一帯で群生する姿を見ることができます。
ハスの群生地で生育するオオバナミズキンバイ。向こう側の黒い鳥はオオバン。2016年7月3日筆者撮影
県では根絶を目指して、積極的に駆除活動をしていますが、ちぎれた茎からでも再生する高い再生力を持っていることで、駆除しても、すぐに再生し、いたちごっこ状態のようです。
小さな黄色い花は見た目、可憐で美しいのですが、ヨシ帯など産卵場所への魚類の移動を阻害すること、太陽光を遮断して底生生物の生息環境を悪化させること、漁船の航行の障害となること、水流を滞らせることで水循環を悪化させることなどの悪影響が懸念されることから、このまま見過ごしてはいけない植物です。
オオバナミズキンバイの花
大津市・琵琶湖第二疎水口の入江一帯に群生するオオバナミズキンバイ
最後に
烏丸半島のハスの群生が姿を現さない原因はまだわかっていませんが、昨夏には一帯を覆っていたハスが、今夏にはまったく姿を見せないのはかなり異常な現象です。重要な観光地でもありますので、このまま消滅してしまわないよう願うばかりです。