消えゆく昭和情緒を堪能できる下町のホルモン屋 神戸・稲荷市場「中畑商店」

  by 中将タカノリ  Tags :  

日ごと年ごとに移り変わる街の風景。

ことに昭和の代名詞と言えるような商店街、木造戸建ての住宅地は近年では衰退、減少の一途をたどっている。

盛者必衰は理と言えど、見知った景観が消えてゆくのはなんとも寂しいものだ。

僕が居をかまえる神戸においてもその潮流は変わらない。

全盛期には100件以上の商店が軒を重ねたという兵庫区の稲荷市場が、阪神大震災以降、寂れる一方となり昨年末にとうとう北半分が取り壊され更地になってしまったのだ。

残された南半には僕がときおり訪れるホルモン屋がある。

それが今回ご紹介する『中畑商店』だ。

国道から、取り壊された更地の脇道と真っ暗なアーケードを抜け、まっすぐ進むと右手に見える「ホルモン焼」の赤ちょうちん。

10人も入れないくらいの小さなお店だが、昭和情緒を感じるホルモン焼きが人気でいつも常連客でにぎわっている。

中畑商店を訪れてまず外せないのが代表メニュー『ホルモン』

牛の肺、一般に”バサ”と呼ばれる部位を鉄板で焼いたものだが、下処理がよく絶妙な薄さでスライスしているので非常にあっさりした味わいだ。

独特のぷりぷりした食感と特製の甘辛いタレ、そして一本50円と言う安さのコラボレーションが後を引く。

ホルモンを5本も食べてお腹が落ち着いたなら続いては『レバー』

小さく切り分けて串に刺されているが元が新鮮なのだろう。

臭みがなく、かつ鉄分たっぷりな濃厚な滋味が口中にあふれる。

『アバラ』もいい。

いわゆるカルビの部位で、ふんわり柔らかく赤身と脂身のバランスがほどよいのだ。

タレの神髄を堪能するならこれが一番。

小さな一串をほおばると脳内に高級焼き肉店の風景が浮かんでくる。

ビールとも、冷や酒とも相性は抜群だ。

中畑商店はそんなに長居するような店ではない。

注文した品はだいたい1分以内に供給されるので20~30分、長くても1時間居れば十分。

午前なら遠方からのグルマン達が、昼はご近所さん達が、夕方は学校帰りの子供達が訪れ、十分にその地域性や長年培われたお店としての魅力を堪能できるだろう。

ちなみに中畑商店のすぐ近所には“神戸のビリケンさん”として有名な松尾稲荷神社がある。

小さいが情緒のあるスポットなので観光的な意味でもついでに訪れて損はない。

裏寂しい稲荷市場の風景ともマッチしていて、この地域が秘め持ったサムシングを感じることが出来るのではないだろうか。

『中畑商店』

所在地:神戸市兵庫区東出町3丁目21-2

営業時間:9:30~19:00

定休日:木曜

中将タカノリ

■シンガーソングライター、音楽・芸能評論家 ■奈良県奈良市出身 ■1984年3月8日生まれ ■関西学院大学文学部日本文学科中退 2005年、加賀テツヤ(ザ・リンド&リンダース)の薦めで芸能活動をスタート。 歌謡曲をフィーチャーした音楽性が注目され数々の楽曲提供、音楽プロデュースを手がける。代表曲に「雨にうたれて」、「女ごころ」(小林真に提供)など。 2012年からは音楽評論家としても活動。さまざまなメディアを通じて音楽、芸能について紹介、解説している。

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