リードの持ち方で変わる犬の振る舞い


愛犬とのお散歩で犬が引っ張るなど問題を抱える飼い主さんはとても多くいます。また、違う問題(やたらと吠えるや、噛むなど)で相談にこられるケースでも散歩がきちんとできないことがとても多くあります。なので私は各問題に対処する前に散歩での作法を飼い主さんにお伝えしています。私がいつもお勧めしている散歩メソッドで散歩がきちんとできるようになると犬の問題行動も減ってきます。散歩は毎日のアクティビティです。それだけに毎日の散歩の仕方ひとつで犬の行動を変えることができるわけです。今日は私の散歩メソッドの中から基本中の基本であるリードの持ち方をご紹介します。

あなたの感情はリードを通して愛犬に伝わっている

例えば他の犬が苦手な犬の場合、正面からいつも喧嘩になる犬が近づいてくると、無意識であなたは緊張すると思います。正面から近づいてくる犬との距離が近くなるに連れて増々緊張が増し、リードを持つ手に力が入ります。そして犬が射程距離内に入ると愛犬はいつも通りにガウガウと吠えて相手を威嚇します。一度このような経験をすると飼主も愛犬もこの状態から学習をしてしまいます。このようなケースの場合では飼主、犬それぞれに学習する内容が変わります。以下にそれぞれがどのように学習するかを表しました。

犬が学習した内容
・苦手な犬が至近距離に来た時は相手を威嚇すれば回避できる
飼主が学習した内容
・苦手な犬が近づいてくると愛犬は暴れるから衝突しないようにリードを強く握って身構える

そしてまた同じシチュエーションに出くわすと上記のように学習した内容に沿って対応しようとします。そもそも、街中で遭遇するほとんどに犬はリードで拘束されています。不必要に威嚇しなくても接触せずにやり過ごせるはずです。しかしながら上記のように学習した結果、この行動が繰り返され、毎回決まって同じ行動をとるようになります。こうなると他の犬を威嚇するという無駄な行為を続けることになり、愛犬も飼主も余計なストレスにさらされることになります。

対応策はいたってシンプルです。苦手な犬が近づいて来たら、周囲の安全を確認して愛犬に「座って」の指示をだします。相手の犬を見ないように愛犬の注意を飼主に向けさせて、相手の犬が通りすぎるのを待ちます。無事にやり過ごせたら褒めてから散歩を再開します。この時は常にリードが張らないようい持つ事が肝心です。リードがピンと張った状態では、その緊張感が犬に伝わり、犬が中々落ち着けなくなります。なのでリードを常に緩く保つようにしてあげると犬も落ち着きやすくなります。さらに通常時でもリードを緩く持っていると犬はリラックスしやすくなり、不意に苦手な対象物に遭遇しても興奮しにくくなっていきます。しかし「もしリードを緩く持っていて犬が暴れてリードが手から離れたら大変」という声が聴こえてきそうですが、そういう不安も犬には伝わっていると考える方が得策です。なのでリードを持ったら深呼吸でもして気持ちもリラックスさせてから散歩に出るようにしましょう。

大切なのはリラックスすること

愛犬がリラックスしていれば引っ張ることもありませんし、威嚇することもありません。愛犬にリラックスして貰いたかったらまずはリードを持つ飼主がリラックスする必要があります。飼主のリラックスはリードを通して愛犬に伝わり愛犬もリラックスできます。逆にリードを持つ飼主が緊張していては、愛犬も中々リラックスできないのです。なのでリードを手にグルグル巻きにしてギュッと握ってしまうと緊張が産まれてしまうのでリードは軽く持つようにします。

つまむように軽く持つ

TOPの画像のあるように指2〜3本でつまむように軽くもちます。ちょうどコンビニの袋を持って歩くような感覚です。コンビニでパン1つを買って帰るときコンビニの袋をギュッと持ちはしないですよね。例えるとこのような感じの持ち方です。でもいざという時には不安だと思う方は持ち手の輪っかの部分を手に通してから持つようにしてください。これなら犬が急に引っ張ってもリードを握って止めることができます。また、リードとは別にハーネスを付けて人間用のハーネスで繋ぐ物もあります。これなら飼主の胴体と犬の胴体が繋がっているので、いかなる状況でも犬が離れる事はないでしょう。

リードは緩く保つ

リードが張っている状態では犬はリラックスできません。飼主を引っ張る犬は常にリードが張っています。緊張状態が続くので落ち着けなく、疲れきるまで飼主を引っ張るでしょう。これでは不健全なので初めからリードを張らないようにして歩ける練習をしましょう。そうすればリラックスして歩くことができるようになります。具体的な方法論は文量の都合があるので割愛しますが、要約すると『歩いている時に犬が前に出てリードが張ったら直ぐに止まる』です。リードが緩く保たれている時のみ歩くようにします。引っ張ったら散歩ができない状況を作ることで次第に引っ張りは治まってきます。これには基本であるリードの持ち方も重要な項目になります。愛犬に「引っ張るな」と願いながらもリードを持つ手に緊張があり、リードが張っていては緊張が解けずリラックスのしようがありません。また愛犬がリラックスしてリードを張らずに歩けている時は、褒めてあげて、その行動を強化していきましょう。

リラックスして歩くことの大切さ

散歩は重要な毎日のアクティビティです。どんな犬にも必要なことです。この散歩を穏やかにリラックスしてできるようになると愛犬の振るまいは大きく変わってきます。私の元に相談にきた犬達も散歩での作法を身につける事で多くの問題を克服してきました。また引っ張りや興奮がなくなり、散歩が楽になれば飼主の負担も減り散歩を楽しめるようになります。こうなるとポジティブな連鎖が生まれてきます。飼主も愛犬も散歩を穏やかに楽しめるようになれば、お互いにイライラすることもなくなります。毎日ように変わる外の景色を愛犬共に楽しめるのも散歩のメリットだと思います。その第一歩はリードの持ち方にあります。

今回はリードの持ち方をご紹介しました。もっと詳しく知りたいと思った方はお近くのトレーナーか私にご依頼ください。

※TOP画像は著者撮影の物。

DBCA認定ドッグビヘイビアリスト(犬の行動心理カウンセラー)・JCSA認定ドックトレーナー(家庭犬訓練士)・動物行動学研究者(日本動物行動学会)。 警察犬訓練所でドッグトレーニングを学び、その後に英国の国際教育機関にて”犬の行動と心理学上級コース(Higher Canine Behaviour and Psychology)”を修了。ドッグビヘイビアリストとして問題行動を持つ犬のリハビリを行っている。保健所の犬をレスキューする保護活動にも精力的に取り組んでいる。 動物行動学・心理学・認知行動学を専門とし、犬がペットとして幸せな暮らしができるよう『Healthy Dog Ownership』をテーマに掲げ、動物福祉の向上を目指して活動中。 一般の飼主さんだけでなく、行政や保護団体からの依頼も多く、主に問題行動のリハビリが専門。 訓練(トレーニング)やリハビリの事、愛犬との接し方やペット産業の現状などについて執筆している。 著書:散歩でマスターする犬のしつけ術: 愛犬とより強い絆を築くために(amazon Kindle)・失敗しない犬の選び方-How to Choose Your Dog-(amazon Kindle)

ウェブサイト: http://www.healthydogownership.com

Twitter: HealthyDogOwner