東京ビッグサイトで2015年2月25日から27日まで開催されている「スマートエネルギーWeek2015」に取材に赴いた。
事前にプレス登録が必要だったが、主催者の配慮で取材前日に登録を承認していただいたのでプレスルームへ出向いた。
プレスパスの交付を受け、写真撮影のための腕章も同時に交付されたので、取材と写真撮影は主催者許諾済みとなるが、クローズドな展示会なのでプレスルームで取材方針を立てる。この展示会は業界関係者のための商談会なので一般入場はできない。そのため、商談中のブースや業界関係者に説明中のブースに取材を申し込むのは遠慮することとし、取材対象にもその都度記事掲載の許諾を得るものとする。
大まかな取材方針は一般消費者とのかかわりだ。通常このような産業用製品は製品名はおろかメーカー名すら知らないことが多い。しかし、消費者のためにどこかで何らかのかかわりがあるはずなので、その点に比重を置いて取材した。
また、同時9展開催でシームレスに取材ができるので、どの展示会での取材なのかの詳細は記事には明示しない。
各展示会の入り口には内閣総理大臣からのメッセージが掲げられていて、業界、世界最大級であることを物語っている。
最初に紹介するのはD・LOCKという実用新案取得のボルトとナットだ。コンパニオンに持ってもらっている物がそうだが、通常はボルト、ナット、ワッシャーで5ピース構造になっている。これを2ピース構造にして、特に高所作業で誤って落下させる危険性を大幅に減少させた優れものだ。落下させるだけならばまだいいが、落としたのを失念してそのまま施工してしまえば強度に問題が出る。単価は高いが、施工時間が短縮されるので総合的なコストは大幅アップとはならないそうだ。一般消費者には関係ないものと思うが、最近はやりの屋根上太陽光パネルの施工は現住住宅で施工することが多いし住人がヘルメットをかぶっているわけではないので、工期短縮と安全性の両立にはこのような製品が適しているのかもしれない。なお、このブースは撮影禁止と明確に表示してあったが、メーカーの担当者が撮影と記事掲載を特に許諾してくれた。
宮崎の植松商事が開発したカーポートだ。イベントコンパニオンに示してもらった天井に秘密がある。2台駐車できるほどの屋根だとソーラーパネルを設置して、そのスペースを発電に使うことも十分可能であるが、ソーラーパネルは屋根ではない。つまり雨漏りしてしまうのだ。そこでパネルの継ぎ目に溝を設け、コーキングなしで雨漏りがしにくい構造としたのだ。様々なメーカーのパネルに対応しているので、搭載パネルを選ばないのも利点だろう。
中国のソーラーモジュールメーカーでトリナソーラー。今回の展示で思ったのは、外国メーカーがかなり多いということだ。技術的にはそう大きな違いはないのだろうが、やはり安かろう悪かろうという先入観があることは否めない。いかに付加価値を高めるのかという点が外国メーカーの課題かもしれない。
ここも中国のメーカーでアップソーラー。シニアセールスマネージャーの鎗田武さんに話を聞いた。2010年から日本の市場に進出して、現在では8割が産業用だそうだ。しかし前述のように外国メーカーには不安を覚える消費者も多いので、保険会社を通じて製品の保証を行っているということだ。では実際に外国産に対する抵抗心理についてズバリ聞いてみた。「政治レベルでは日本と中国は関わりが良くないという風潮が見えますが、民間では仲良く、いいもの見極める目を日本人は持ってるので偏見を持たず製品を見てほしいです。」と本音を語ってくれた。傍らにいたお嬢さんと言っては失礼だが営業の笹川紋さんにどうすれば偏見をもたずに見てもらえるのかを聞いた。「友好です。そのためには…お友達を作ることです。アメリカに留学経験があるのでその時にたくさん友達を作りました。日本でもたくさんできると思います。」なんと、お嬢さんは製品ではなく日中友好論を語ってくれた。しかし、笑い事ではなく、根本的にはそこなのかもしれない。
外国メーカーは続く。台湾のウィンアイコ。車を売りに来たのではない。その下を見てほしい。ソーラーモジュールだ。写真中央の女性、台湾から来たセールスアシスタントのペイウェンさんに話を聞いた。ちなみに日本語は堪能なので通訳もいっしょにいてくれたが大丈夫だ。「このモジュールは3.5センチメートルの氷が時速95キロメートルで衝突しても大丈夫なんです。だから今日は車を乗せています。今回初めての日本市場進出なんですが、OEM供給していきたいと考えています。」と語ってくれた。では国産製品と比較した率直な意見を聞いてみた。「品質は確かに日本製はいいですね。でもコストが高いのでそれに見合う投資が大規模にできるかどうかが問題だと思います。最近は異常気象も多いですし、何かが飛んできて割れてしまっては高い買い物が台無しですからね。」と、価格と頑丈さで優位性をアピールしたい考えのようだ。
一般財団法人電気安全環境研究所、JETだ。おそらく毎日見ているはずだ。実は電気用品安全法で電気用品にはPSEマークが付けられている。カメラや携帯のバッテリー、ACアダプター、冷蔵庫などには必ずついている。その性能を試験、検査、認証する機関だ。一般消費者に向けてメッセージを発してもらうことにした。「例えばリチウムイオン電池ですが、中身はどの製品もだいたい同じですが問題はその後の加工なんです。加工が悪いと破裂したり爆発したりします。一般消費者の皆様には安全意識というものは少ないかもしれませんが、国産のきちんと検査しているものであればまず大丈夫ですので、そういう意識をもって電化製品を使ってほしいです。」電気は便利だが使い方を誤れば死亡事故だって起きる。私たちが知識がなくても安全に安心して電化製品を使えるのはこのような機関の検査のおかげかもしれない。なお、国内に同様の検査機関は4つあるので、すべての製品やコードにJETと書いてあるわけではないとのことだ。
今度は計測器メーカーだ。日置電機の久秀太さんに聞いた。「何を作るにも計測器は必要なんですよ。くらしを支えていると言っても過言ではないと思います。我々は計測器は”産業のマザーツール”とも言います。」なるほど、言われてみればきちんと計測をしていない機器なんて危なくて使えない。写真の製品は今イチオシのリチウムイオン電池の計測器だそうで、携帯ショップにおいて持ちが悪いスマホのバッテリーチェックができるようにしたらいいんじゃないですか?と冗談を言ってみたら久さんは「そのスマホ、計測なしでは作れない!」と返してくれた。
最後にものすごく元気で明るいイベントコンパニオンが呼び止めてくれた。株式会社アルクとジャパン・ホームシールド株式会社の共同ブースだ。いったい何を扱ってるのだろう?ソーラーパネルを地上に設置する際の基礎のようだが、コンクリート基礎でもない、くいでもない、人工の”根”「RootBase」というらしい。イベントコンパニオンに持ってもらっているのがそのミニチュア模型だ。よくわからないので環境事業部の中庭浩実さんに聞いてみた。「例えば基礎を打つときにコンクリートを流し込みます。そちらの方がコストは安いです。」なるほど、であれば人工の根じゃなくてもいいのではないか?「産業用のソーラー発電所ならばそれでもいいですが、買い取り制度がスタートして遊休地等を利用して小規模発電をするケースが多くなっています。元に戻すときにはコンクリートを砕いて撤去しなくてはなりません。その費用は膨大です。これは穴を掘って、置いて土をかぶせるだけですし、戻すときにはまた穴を掘って抜いて埋め戻せばいいのです。」要するに、設置費用は高いが、トータルコストと手間、産業廃棄物がほとんど出ないことを考えると有利だというわけだ。この何の変哲もないように見える台のようなものは特許取得しているそうだ。
東京ビッグサイトをほぼ全域使用して開催している展示会なので、ほんの一部しか取材できなかったが、技術やアイデアがぎっしり詰まった先端技術の見本市のようで、消費者の立場としては未来を見ているような感じがした。しかしこれは紛れもなく私たちのすぐそばまで来ている実用化された技術であり、もしかしたらもうすでに見ているものかもしれない。ものづくり大国ニッポンがまだまだ元気であることを垣間見れて楽しみでもあり、また技術力を増す外国勢の追い上げも半端なものではないこともよく理解できた。
取材に協力してくれた各企業、並びにフリーランスの立場に取材と撮影許諾を与えてくれた主催者に御礼を申し上げる次第である。
※写真はすべて会場内で著者撮影。会場内での取材はプレスパスにて主催者許諾済み。取材条件は遵守の上で取材対象にも個別許諾済み。取材内容、撮影商材および技術、個人名等については概要を開示の上、承諾を得た範囲内で掲載。