2010年4月22日、渋谷のライブハウス『O-nest』でPANDA1/2の日本初ライブが行われた。
あの日の衝撃は忘れられない。
それまでネット上で公開されていた数十秒のイメージ映像でしか知ることのできなかった存在が、目の前に現れたのだ。
ステージ上に置かれたターンテーブルではパンダが回り、ボーカルの女の子は電気ドリルを持って、ギターをかき鳴らしていた。
まるで固く心を閉ざしたかのように、MCもほとんどなく、それでいて抑圧から解き放たれようとするような思いが歌声から伝わってきた。
“何かが始まる”その時、強くそう感じた。
その日から、PANDA1/2は走り出す。
翌週の4月28日からUSTREAMの番組『PAKUPAKU』がスタート。8月25日にはメジャーデビュー曲となる『上海は夜の6時』をリリースする。
定期的にライブを行いながら、昨年末から年始にかけてはプロデューサーのJames Panda Jr.氏が、2週間で世界中のパンダに会いに行き、その様子を毎日ネットで放送するという企画を行ったり、パンダが来日した2月21日には、成田空港や上野公園内からゲリラ的にその様子を中継したりもした。
そうした活動もあって、少しずつ知名度が上がっていき、ファン層も拡大。ライブの動員も増えていった。
そして今年9月25日に行われたライブ。1年5ヵ月ぶりにO-nestのステージに立った彼らは、明らかに“進化”していた。
『中華街ウキウキ通り』『PANDA!PANDA!PANDA!』『夏をぶっとばせ』。昨年末以降リリースされたシングルを中心として、アンコールの『上海は夜の6時』まで、全7曲を演奏した。
特筆すべきは、藤岡みなみさんのボーカルとパフォーマンス。あの日、どこかもがいているようにも思えた彼女の姿は、解き放たれた喜びに満ちたものへと変わり、曲間のMCも含めて、全身で音楽を発信していた。素敵な夜だった。
そして、あらためて感じたのは、PANDA1/2の楽曲が持つ、人を惹きつける力だ。
世代的に懐かしさを感じる部分もあるが、それだけにとどまらない、何か曲の根底に流れる、彼らにしか作り出せない魅力にあふれている。
少し前、James氏は自身のtwitterで「過去に誰かが作った音楽が、自分を通して別の作品になり、未来の誰かを感動させる。音楽と言うのは本当に不思議。」というツイートをしている。
今回のライブを見て、そのツイートに込められた思いが分かった気がした。
彼らにとって音楽は、自分を通して次の世代に受け継いでいく遺伝子のような存在なのではないだろうか。
人が誰かに恋をして、愛を確かめ合って子供を産む。そしてその子供はまた先の未来を生きる。
恋をするのは未来を信じているから。
自分たちの子供の、そのまた子供たちが生きる未来は、きっと輝かしいものに違いない。そんな希望があるから人は人を愛する。
PANDA1/2の生み出す音楽が、これからも歌い継がれて、何十年、何百年先にも流れる。そんな未来を信じているから彼らは音楽を生み出していく。
どちらも同じ、簡単なことだ。
PANDA1/2の音楽には希望がある。だからこそこんなにも美しく、いとおしい。
■PANDA1/2公式サイト http://panda2bunno1.com/