岐阜大学は岐阜県下の企業や岐阜県産業技術センターと共同し、世界唯一の技術、クレージング法を用いたナノ多孔ファイバーの開発に成功した。
この技術を繊維製品に利用することで、従来の技術では閉じ込めることの困難であったビタミンCやタンニンなどの成分を繊維の中に閉じ込めることができるようになり、肌に優しいシャツや、抗菌・防臭繊維を使った靴下等をつくることが可能になる。また、効果も長期間に及び洗濯しても効果が落ちにくいという。
技術の概要としては、繊維にナノサイズの孔をあける技術のことで、その極小の孔に薬剤を定着させることで、その薬剤の効果を長時間保つことを可能とする。その孔をあける技術がクレージング法と呼ばれ、世界で唯一の技術となる。
クレージングとは、プラスチックが破壊される直前にナノ多孔構造を形成する現象のこと。プラスチックを折り曲げると、割れる直前に白色化するが、これがその現象になる。
通常はクレージングを抑制するよう設計されるが、岐阜大学はこれをコントロールし有効活用することで繊維製品に応用した。
■クレージング法によるナノ多孔ファイバーの特徴
繊維のナノ孔は、製造後であっても孔径を自由に変更できる。これにより以下の特徴がある。
・揮発性、熱に弱いなど添加困難な素材を、物理的に孔に閉じ込める(酵素、ビタミンなど)。
・孔の径を変えると、薬剤を放出して外部の水を浸入させない。長期利用および洗濯が可能。
■従来技術との比較
・コーティング法に比べ耐久性に優れる。
・混練法のように高い熱が加わらず、後処理で機能付加ができる。
要約すると、クレージング法により形成されたナノ多構造は従来技術に比べ高温になることがない。したがって添加困難であった揮発性の高い成分や熱に弱い成分であっても添加できるようになる。また、孔の径をコントロールすることで外部の水を侵入させず、水洗いしても効果が落ちにくくなる、という特長を持つ。
岐阜大学では、11月5日より開催されるメッセナゴヤ2014にて、クレージング法を用いて作られた繊維製品の出展を予定している。内容は四季をテーマにしたシーツとなる。
春:ビタミンCを閉じ込めた肌にやさしい繊維
夏:メントールを閉じ込めたクールな繊維
秋:タンニンを閉じ込めた抗菌・防臭繊維
冬:トウガラシやショウガの成分を閉じ込めたホットな繊維
上記はあくまで試作品であり、今後の課題として、製品としての耐久性や安全性の検証が残っている。しかしながら、製品化の目途もたっているとのことなので、近い将来上記のようなTシャツや靴下などの繊維製品が市場に出回り、日常生活で利用できるようになるかもしれない。
なお、こちらの研究は岐阜大学をはじめ、岐阜県下の繊維会社5社や公施設によって組織された「岐阜大学クレーズナノ多孔ファイバー実用研究会」によるもの。技術不況に悩む地域繊維産業への支援という側面を持つ。
地域貢献や地方企業の活性化などの面でも今後の進捗が期待できそうだ。