世界の壁は厚かった。
2人気に推されていたノヴェリストが回避し、オルフェーヴル1人気・キズナ3人気と絶好のチャンスでしたが、トレヴの強さに2着が精一杯でした。
日本競馬界の悲願は凱旋門賞制覇と言われますが、必ずしも凱旋門賞が世界最高峰のレースというわけではありません。英ダービーやケンタッキーダービーの重要さは言うまでもなく、BCクラシックやドバイWCのレベルも高さも凱旋門賞に劣りません。最近では2400mの価値が薄れ、愛チャンピオンSの価値が上がってきています。
日本の主流はサンデーサイレンスの子孫で、オルフェーヴル・キズナともにサンデーサイレンスの孫になります。サンデーサイレンスはケンタッキーダービー・BCクラシックの勝ち馬で、血統的にはアメリカのビッグレースを目標にした方が良さそうにも思えます。
日本競馬界が同盟国アメリカのビッグレースを目標にせず、凱旋門賞に固執する理由は何でしょうか。それはおそらくグローバル化と関係があるのでしょう。
東京競馬場にあるJRA競馬博物館。競馬の歴史についても展示があり、近代競馬の始まりが開国を契機としていることが分かります。列強は日本の騎乗技術に驚いたとの記述があり、競馬なら列強に張り合うことができるのではないかと考えたと思われます。
第二次世界大戦での敗戦後、日本に重くのしかかってきたのはグローバル化でした。グローバル化に必須なのは言葉ですが、英語を学んでアメリカ人に話しかけても大して進展はしません。言語以上に大切なのが、言葉が足りなくても意思疎通が可能な話題です。フランス語が分からなくてもトレヴの強さに感動したことは伝わりますし、オルフェーヴルの無念も分かってもらえるはずです。世界中で行われている競馬は共通の話題になることも多く、グローバル化の一端を担っているのです。
凱旋門賞はパリ大賞典にならって第一次世界大戦後に復興のシンボルとして創設されました。
パリ大賞典は競馬先進国のイギリスを破るために創設された国際競争で、3歳限定のレースです。3歳馬に海外遠征させるのは負担が大きいため、古馬で競馬先進国に挑戦できる復興のシンボルになった凱旋門賞は戦後日本にとって目標にしやすいレースでした。
戦後生まれが増え、ネットの発展で誰もがグローバル化に参加出来るようになった現在でも凱旋門賞に固執するのは、競馬が血統のスポーツだからでしょう。ディープインパクトで負けたらその子供で挑戦したくなりますし、オルフェーヴルで届かなければ同配合のゴールドシップに期待したくもなります。
競争馬の歴史が話題になる一方で、戦争が話題になっています。
グローバル化に差し掛かった韓国が世界と対話する時の話題に選んだのが戦争でした。韓国の民族主義的な話題では進展に乏しく、韓国と利害関係が強いアメリカ・中国という大国が反日という話題に興味を示したため、グローバル化=反日という図式になってしまっています。
しかし、9月に日韓国際交流競争が行われ、韓国競馬のレベルが高くなってきていることが分かりました。反日で語ることは出来なくても競馬で語ることは出来ます。香港には世界でも有名な香港国際競争がありますし、日本馬による凱旋門賞制覇が雪解けを導いてくれることを期待しながら、来年のキズナ・ゴールドシップに期待したいと思います。