年の瀬の12月に年賀状の話題など遅いし、今年はいわゆる「年賀状仕舞い」に関する記事が目立った。まずはこの要因について考察してみると、最大の理由は郵便料金の値上げだろう。63円から85円に大幅値上げされた。国民経済がひっ迫する中で年賀状代の値上げは枚数が多い人ほど大きくのしかかる。しかし個人が差し出す程度の枚数であればよほど交友関係が広い人でない限りそれほどの負担だとは思えない。とはいえ、年賀状の発行枚数は25%以上減少すると見られている。
次に高齢化による終活に準じた年賀状仕舞いだ。高齢化により年賀状を書いて差し出すのがおっくになる、あるいは昨年まで来ていた人から来なくなった、つまり相手も年賀状仕舞いをしたか死亡してしまった可能性があるという実情に鑑みての行為だ。生きているうちに年賀状仕舞いの挨拶をしておこうというのが理解できる。
最後に考えられるのは、年賀状よりもメールやSNSでのみつながっている人が多く、住所がわからない、あるいは氏名すらわからないという人との付き合いが多くなってきたという、デジタル時代ならではの事情だ。こちらは比較的若い人に多いだろうか。
高齢者と若い世代の理由が、最初に述べた郵便料金の値上げにより年賀状仕舞いを加速させてしまったのは事実だ。それでもはがきというアナログな「お手紙」が年に一度でも届くというのは、デジタルにはない温かみと情が詰まっているのもまた事実だ。そんな時代の年賀状についてスマホ上ですべてが完結するサービスを試してみたのでレビューする。
スフィダンテが提供する、スマートフォンで年賀状を作ることができるアプリ「スマホで写真年賀状2025」を使ってみた。アプリをインストールするとクーポンが出てきたのでありがたく使うことにする。
ところで、今ごろ年賀状の記事を出してどうすると思われるかもしれないが、実は年賀状仕舞いを考えていた人に今からでも間に合う年賀状や、さらに年を越してしまっても大丈夫な「寒中見舞い」を検討できる情報を提供している。本年は12月25日までに差し出せば元旦に配達される。しかしそれ以降でも1月3日以降にはちゃんと届くので年賀状としては問題ない。
概ね1月5日を過ぎる場合で節分(2025年は2月2日)までは、年賀状ではなく寒中見舞いとして差し出すと良い。こちらからは差し出していない相手から到着した年賀状に返信する場合や、年賀状仕舞いを考えていた人が考え直して差し出す場合も寒中見舞いを利用すると良い。
さて、最近はPCで住所管理をして自宅のインクジェットプリンターで印刷するというのが一般的だが、億劫なのは新しく差し出す人の住所の入力と、転居した人の住所更新だ。本アプリは、スマホのカメラで前年の年賀状の住所を読み取ると自分の住所録データに反映してくれるサービスがあるので手入力は基本的に不要だ。
さらに、メールやSNSでしかつながっていない相手には、住所集めサービスを利用すればよい。メールやSNS等で1対1でつながっているのであれば、普段からテキストメッセージでのやり取りはしているはずなので、あらかじめ住所入力フォームが届く旨を伝えておけば安心だ。
サービスをアプリから起動して自分の名前やメッセージを入力すると、フォームが発行されるのでそれをコピペして相手に送ればよい。相手はそのリンクを開いて宛先を入力すれば自分の住所録に自動反映されるし、入力された旨の通知も届く。つまり、言い方は悪いが相手の労力で住所録をつくってしまうのである。
次に年賀状のデザインをする。かなり多くのテンプレートがコンセプト別に並べられているので、それを利用しても良い。スタンプや定型文も用意されている。もちろん寒中見舞いバージョンも用意されている。まったく新しくデザインすることも可能で、スマホ上に存在する写真を利用できるので完全にスマホ上で完結する。ちなみに自分の住所氏名もデザイン欄に入れることができるので、設定を一度だけしておけば位置と大きさを指定するだけで好きな場所に配置できる。
記者は2024年に伏見稲荷大社から稲荷勧請をしたので、極端な言い方をすると神社の御神体があるのと同じなので、「うちが神社!」なのだ。よって年賀状のデザインは新年限定の御朱印デザインをそのまま流用した。メッセージを配置することも、差し出す人ごとにメッセージを設定することもできるので、「印刷した同じものを機械的に送る」だけではなく一律のデザインの上に、相手に合わせたメッセージを一人ひとり入力することも可能だ。また、SNSやLINE、あるいはスマホのカメラで読み取ると住所氏名を住所録に自動入力できるフォーマットでQRコードを作成し、デザイン面に貼っておくと年賀状だけではなくデジタルでもつながることができる、アナログの紙媒体の年賀状でデジタルでつながることができるハイブリッドな使い方も可能だ。
デザインが出来上がると、スマホ画面上でも確認はできるがもっと大きな画面で細部を確認したいと考えるのも人情だ。そのため、PCで確認するオプションがあり自分あてにリンクを送るとPC上でデザインを確認できる。
さて、ここからが本アプリの神髄だ。デザインも住所録も完備した。あとは印刷して差し出すだけだが、意外とインクジェットプリンターでのカラー印刷はコストが高い。プリンターのハードは安いのだがインクが高いというメーカーのビジネスモデルだからそうなってしまうし、印刷ミスによるコスト増大も悩ましい。コンビニのコピー機でトナーによるレーザープリントをするオプションもあるが、いずれにしても自分でコンビニに行って操作する手数がある。
本サービスは、プロの印刷所にプリントと差し出しを依頼するサービスがある。これを利用すると差し出す相手方の住所録と年賀状デザインのデータだけを送信すれば済む。ただし、自分あてに年賀状を出さないと、どんな仕上がりなのか、相手にどんな年賀状が届いたのかがわからない。そこで、普通はがきに1枚自分あてに無料でサンプルはがきを送ってくれるサービスがあるので、これで自分あてに届いた「完成品」を確認することができる。
注文したサンプルはがきはアプリ上で、進捗状況が確認できるので届く概ねの日が推算できる。あとはポストに配達されるまで待てばよい。
そして、届いたのが写真のサンプルだ。LINEのQRコードや自分の住所氏名を入れている。表書きにも入れることはできるので不要といえば不要だが、そのあたりは差出人のこだわり次第だろうか。
ちなみに寒中見舞い用のデザインも作っておいた。こちらは縦型だ。
年賀状仕舞いも仕方がない世情とはいえ、ルーツは奈良時代にまでさかのぼると言われる年賀状を簡単に捨ててしまうのはもったいない。今からでも年賀状は間に合うし、もっとよく考えて寒中見舞いでも大丈夫だ。筆ペンを1回も持たず、まっさらの年賀はがきを1枚も見ることなく、自分のオリジナルデザインやプロが制作した数多くのデザインから自分だけのこだわりの温かみのあるアナログの年賀状や寒中見舞いを、デジタル技術を利用して送ってみてはいかがだろうか。
※写真はすべて記者撮影