増税の話も進んでいるそうですが、それとはまた別途、わたしたちの負担を増やす法案が今週国会を通過する見込みです。折しも日本は不景気。消費税や法人税の増税、電気代も上がる、でも節電しなくちゃいけなくて、さらに東電の利害関係者がとるべき責任までこちらに回ってくる。一体何が起きているのでしょうか。
タイトルにある「国民負担はどれくらい増える?」についてですが、この法律ができることによる国民の負担増は現在見えているだけでも5兆円といわれています。これは東電株主資本+金融機関の債権分に相当する金額です。これは本来、東電と利害関係者の方々の負担部分なのですが、新しい法律をつくることで、それを国民の負荷にするという形で話が進んでいます。そしてさらにこの法律では、「国の責任を明確化する」ということで調整が進んでおり、国民負担分はさらに増加することも予想されています。「国の責任」というのはつまり「国民の負担が増える」ということです。これまで東電から利益を得てきた方々の負担を軽減し、何故かこれまでなんにもいい思いをしてこなかった、多くの国民に負担が課せられるという不思議な話ですが、この法案の最終調整は「修正合意」と呼ばれ、現在、民主・自民・公明の3党の人達により水面下でおこなわれているそうです。慣例的にこの水面下での調整が進めば法案はすんなり成立することが多いとのことで、急ピッチで話が進んでいることがわかります。この問題について詳しい、政策工房の原英史さんにいくつか質問をしてみました。
――「与野党間の修正合意」ってのがされるとそのまま法律ができちゃうって本当でしょうか。
原:この与野党間の修正協議というのは、たいてい水面下でなされます。今回もそうです。この合意が成立すると、国会の場での審議はほとんどなされず採決してしまう、ということが少なくありません。今回は、先週22日までに、すでに実質的な「修正合意」ができてしまっているようで、今週一気に成立に向けて進む可能性があります。
――東電の株価、上がってきてますね。
結局、「株主の責任と金融機関の責任を明確に求め、会社更生型の破綻処理を行うべき」という論点に関してどうなったのか、とても不透明な状態になっています。。これまで会社更生型の破綻処理を強く主張していた自民党の河野太郎議員はブログで、今回の決着は要するに「二段階方式」で、次の第二段階で破綻処理をおこなうことになる、これは「東電処理への大きな一歩」だと書いています。ですが、世の中が本気でそう捉えているとしたら、東電の株価が上がってくるのは変ですね。
少なくとも株式市場は、第二段階というものがあり、そこで東電に対して会社更生型の破綻処理がなされる、つまり株価がゼロになるということが有りうるとは受け止めていません。一時は146円(6月9日時点)まで東電の株価は下がっていました。しかし、修正合意が近いことが報じられるにつれて急上昇し、22日には一時643円(終値は543円)となりました。株式市場は明らかに「今回の3党修正合意で東電の株式は救われた」と受け止めています。
――二段階方式になったとして、そこで会社更生型の破綻処理がおこなわれる可能性はあるんでしょうか。
原:二段階方式になると、まず第一段階で、「機構」からの支援がなされてしまいます。そうすると、第二段階で本当に破綻処理をすると、東電から「機構」への返済ができなくなり、その分は国民負担になってしまう可能性があります。
ということは、逆に、第二段階になったら、「すでに『機構』からの支援がなされているのに、今更破綻させたら、国民負担になってしまう」という主張がでてきて、結局、「破綻はさせられない」という路線になってしまうことも考えられます。
――よくわからない、不透明な部分がまだありますね。
原:法案に関しては、こうした疑問がいろいろと残っています。問題は、にもかかわらずすでに水面下で話が進んで、「修正合意」ができてしまっていることです。先程も述べましたが、このまま国会での審議はほとんどせずに採決まで進んでしまうようなことになれば、あまりに決着内容が不透明です。株式市場の反応もそうですが、世間一般が決着内容を誤解している可能性がある。もし誤解だというのであれば、その誤解を解くための審議をきちんとオープンな国会審議の場でおこない、修正内容を明確にして欲しいと思います。
――ありがとうございました。
●参考
行政ウォッチングの部屋(フォーサイト)
http://www.fsight.jp/blog/expert/gyousei
※トップ写真:国会議事堂 / gezellig light / http://www.igosso.net/flk/5939601626.html