例年通り、冬になると街中での予期せぬ「河童」との遭遇が増えてきます。これは、一部の河童が山童(やまわろ)となるべく川から移動する際、移動先の山が森林開発により無くなってしまっていたり、または単純に迷ってしまった場合によく起きる現象です。
川にいる間は温厚な性格で知られる河童ですが、人間の住む街で出遭ってしまった場合は混乱しているせいか凶暴であることが多いのです。そんな凶暴化した迷える河童に遭遇した場合、どうすれば良いのでしょうか?
「河童」への誤った思い込みを捨てる。
ある若い男性が、河童と遭遇した際にたまたまスーパーで買ったばかりのキュウリを持っていた為、差し出してみました。しかし河童は喜ぶどころかそのキュウリを叩き落とし、男性に襲いかかりました。
ーー今の話を受け、「なんで?」と思った方は注意が必要です。「河童」にも様々な種類がいて、様々な好みがあります。「河童=キュウリ」という発想は、「人間は元々サルだからバナナが好き」という発想と同じぐらい安易なのです。
私たちの勝手なイメージが実際の妖怪に通じる事などほぼ無いのです(キュウリが好物の河童もいますが)。
「河童」の種類を見定める
河童と遭遇した際に的確に対処する為にも、大雑把でいいので見分け方を覚えておく必要があります。現在頻繁に目撃される河童の種類は、日本産まれのお馴染みの「河童」、毛むくじゃらの「猿猴(えんこう)」、最も凶暴な「水虎」の三種類。猿猴は毛だらけですので見たらすぐに解ります。河童と水虎は混同されがちですが、見れば違いは解ります。河童は頭の皿周りに毛が生えていますが、水虎にはありません。また、水虎は妖怪というよりもモンスターと呼んだ方が相応しいような顔をしています。
いざ戦い
河童と遭遇し、撃退する前に、一つだけ例外があるので覚えておいてください。それは、「水虎とだけは戦ってはならない」です。水虎は中国出身の凶悪な河童で、日本の河童が人間にイタズラするのも水虎に気に入られる為だ、と言われているほどです。
水虎は虎のような爪を持ち、甲羅は弾丸を弾くほどに硬く、どういう妖力なのか姿を見えなくする事もできます。重ねて書きますが、水虎と出遭った時は必ず逃げて下さい。あなたが人間である限り、勝ち目は無いでしょう。
では河童と猿猴はどうすれば良いのか?この二妖怪は外見こそ違いますが性質は似ています。
とにかく大事なのは、「背中を見せない」事です。厳密に言えば「お尻」なのですが、背中を見せないぐらの心意気が無ければ撃退できません。河童は人間の尻子玉(多くの河童が好む謎の臓器)を狙って来ますので、お尻の穴をキュッと締めて立ち向かいましょう。
初心者がやりがちなミス
多くの河童は、人間と対峙するとすぐに相撲をとる格好をします。初心者はなぜか、そのまま相撲勝負をしてしまいやすい傾向にあるようです。しかしそれは河童の罠。古くから相撲をとり続けている河童に、人間ごときが敵う筈無いのです。そして、河童がそのように相撲をとろうとしている恰好こそ、実は最大のチャンスなのです。
戦闘序盤のクライマックス
河童の苦手な物が何か、ご存知でしょうか? 身近な物に絞って言えば、「鉄」です。更に、河童の弱点は頭のお皿。河童に最も効率よくダメージを与えるには、「鉄製の物で頭の皿を殴る」、これに尽きます。河童と遭遇し、河童が相撲をとろうと構えたところで、全パワーを振り絞って河童の皿を鉄製の物で殴る。これだけの事で、河童はあなたの前から逃げていくことでしょう。戦闘序盤のクライマックス。大事なのは最初だけなのです。
もし万が一相撲をとる事になってしまったり、鉄製の物を持ち合わせていなかったとしても、とにかく皿を攻め続けるようにしましょう。それをするかしないかで、河童を撃退できる確率は大きく変わります。
卑怯だ外道だと思うかもしれませんが、河童には武士道も騎士道もなく、寿司道ぐらいしかありませんので容赦する必要はありません。
これからも一緒に
――物騒なことばかり書いてきましたが、河童は普通に見る分にはとても愛らしくて大人しい妖怪です。そんな河童の、年に一度の変身期にだけ起きるこれらの遭遇。河童は人間と争うために街に現れるわけではありませんので、それを理解した上で、愛を持って撃退し、山へと導いてあげましょう。
そして暖かい季節が来たらいつものように川に戻って来ますので、優しく手を振ってあげましょう。
河童をより理解し、今までのように共生し続けていけることを願っています。
画像:鳥山石燕『画図百鬼夜行』より「河童」