滋賀県の県名変更案に「現状維持」が8割超 意外に知られていない県名改称への「壁」

  by 84oca  Tags :  

滋賀県が県内の住民3000名に対して行ったアンケート調査で「現在の『滋賀県』と言う県名を変更すべきか」と言う問いに対して「変える必要はない」との回答が82.8%にのぼり「変えたほうがよい」は6.5%にとどまったことが27日に各社で報じられました。

今回の質問に至った経緯は2月に県議会で「『滋賀県』という県名が全国的に余り認知されていないのではないか」として、旧国名の近江国(おうみのくに)から取った「近江県」や県のシンボルとして広く認知されている日本最大の湖の名前を取って「琵琶湖県」などに改名することを検討してはどうかと言う質問が行われたことが発端となっています。ところが、住民アンケートではほとんどの住民が現在の「滋賀県」という県名を変更せず現状維持が望ましいと考えていることが明らかになり「近江県」や「琵琶湖県」への改称案はこのまま立ち消えになりそうです。

意外に多い「県庁所在地がある郡」由来の県名

滋賀県の県名は明治初期に行われた廃藩置県の過程で近江国南西部の滋賀郡に大津奉行所を前身とする大津県の県庁が置かれ、その大津県が1872年に郡の名前を取って「滋賀県」に改称したことが由来となっています。大津県は水口・膳所・西大路の3県を編入した後に第1次滋賀県となり、年内に近江国北部を管轄していた犬上県と合併して現在の形となりました。この犬上県も初めは「長浜県」と称していましたが、長浜から彦根へ県庁を移転する構想が浮上し彦根を含む犬上郡の名称が県名に採用されています。
滋賀県と同様に現在もしくは過去の県庁所在地の郡名が由来となっている県は意外に多く、滋賀県の他には岩手県、宮城県、秋田県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、石川県、山梨県、愛知県、三重県、島根県、香川県、佐賀県、大分県、宮崎県、鹿児島県が該当します。このうち佐賀・大分・宮崎・鹿児島の4県は旧郡名がそのまま県庁所在地の名称と一致しているのに対し、秋田県は久保田藩側から古来の郡名を採用したいとの申し出を受けて改称された珍しい事例でした。
その他の県では主に幕末期の混乱を受けた住民感情から旧藩やその城下町の名称を県名に採用することを避けるため、妥協案として「県庁所在地がある郡」の名前が採用された事例が多くなっています。滋賀県の場合も犬上県の彦根への県庁移転が実現しなかったために半ば消去法的に大津が県庁所在地となり「滋賀県」の名称が存続することになった経緯があります。元は県内から見ればごく一部の地域名前でしかなかったとは言え、140年近く続いている名称だけに今回のアンケート結果を見る限り、住民の間では広く定着した名称になっていると言えそうです。なお、改名案で挙がっていた「近江県」のような旧国名を引き継いだ県名は現在までにすべて消滅していますが、廃藩置県の初期には佐渡県、三河県、摂津県、根室県などがごく短期間だけ存在していました。

県名変更への知られざる厚い壁

もし実際に県名を変更するとしても、その実現には多くの「壁」が存在していることは余り知られていません。まず県議会で改称案を議決し、次に国会で衆参両院の賛成を得て最後に県内で住民投票を実施し、賛成が過半数となった場合にようやく変更が実現します。もし県名変更が実現した場合でも、その後には地方自治法を始めとする法律の改正や県の出先機関の改称などに多額の費用がかかるため、今回のアンケートでも財政面の理由を挙げて「現状維持」を支持する回答が見られたと言うことでした。
香川県が「うどん県」を自称しているようなケースは飽くまで“通称”なので法律の改正は必要ありませんが、2011年には宛名に「香川県」でなく「うどん県」と書いた場合の配達を認めるかどうかについて県と郵便局の間で議論になったことがあります。

ただ「滋賀県」という県名については「現状維持」が圧倒的多数だったとは言え、同じアンケートでは「県の認知度」について3分の2近い65.2%が「あまり認知されていない」と回答しています。「認知度向上を図るために進めるべき取組」については「地産品のブランド化」が33.7%で最も多く、次に「各種メディアやSNSを活用した魅力の発信」が26.5%という結果でした。

参考‥『第48回 滋賀県政世論調査 単純集計結果』15ページ
http://www.pref.shiga.lg.jp/a/hodo/e-shinbun/ab00/files/27tanjunshuukeikekka.pdf [リンク]

画像‥琵琶湖大橋(「写真素材 足成」掲載の画像を利用)
http://www.ashinari.com/

1975年、兵庫県姫路市生まれ。商工組合事務局勤務を経て2012年よりウェブライター活動を開始。興味のある分野は主にエンターテインメント、アーカイビング、知的財産関係。プライベートでは在野の立場で細々と文学研究を行っている。

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