超・高級和食の一つフグ料理。その頂点といわれるトラフグ。特にオスから取れる白子(精巣)は珍重されます。
個人的には、よくもまあ人が死にかねない毒のある魚をここまで食べるようになったもんだと思いますが、そのうまさはやみつきになると定評があるようです。
ただし、トラフグは成長が遅いため、養殖が可能になった現在でも非常に高価な食材です。しかも、オスから取れる白子は、自然にまかせるしかありません。ますます貴重な食材と言われるようになってきました(ちなみにメスが持つ卵巣は猛毒があり、基本的に食べることができません)。
3月13日、長崎県総合水産試験場、東京海洋大、東京大の合同研究チームは、トラフグのオスだけを人工的に作り出す技術開発に成功したことを発表しました。
動物の性別を決めるのは、性染色体とよばれる存在です。通常、メスの卵子はX染色体のみですが、オスの精子はX染色体とY染色体を持つものに分かれます。
X染色体を持つ精子が受精した場合は、メス(XX)がうまれ、Y染色体を持つ精子が受精した場合はオス(XY)がうまれます。
現在のところ、Y染色体を持つ精子だけをより分けて受精させる技術はありません。そのため、トラフグのオスだけを生産する技術は確立していませんでした。
今回、長崎県総合水産試験場などが発表した方法は、簡単に説明すると、Y染色体の精子だけを生産するトラフグを人工的に作り出して、トラフグのオスを量産する方法です。
トラフグのオスの精母細胞(精子の元になる細胞)を、クサフグという別の種類のフグのメスに移植すると、通常X染色体しか持たない卵がXとYの染色体を持つことに注目。
このクサフグの雌がうんだ卵に、通常のトラフグのオスの精子を受精させると、X染色体をもたないYY染色体だけのトラフグのオス(超雄と呼ばれるそうです)が発生するのだそうです。
この雄の精子は全てY染色体しか持たないため、ふつうのメスがうんだ卵(X)に受精させると稚魚は全て全てオス(XY)になるのだそうです。
この方法を使えば、高価な白子が取れるトラフグのオスが量産できるそうですが、毒のある魚にここまで情熱を注いできた日本の文化にも脱帽ですね。
※写真はイメージ 足成 http://www.ashinari.com/2009/02/13-013882.php から