YISの体育館外観。向かって左側に地下への入口がある。メイソンのロッジだった場所は、現在ダンススタジオになっている。
ブームも峠を越え、下火になった感のあるフリーメイソン・ネタ。「世界を操る影の支配者」も、日本人にとって消費の対象に過ぎないようだ。そんな世間の気まぐれをよそに、フリーメイソンは地道に活動を続けてきた。
テレビで紹介されるのは、なぜか東京やロンドンのグランドロッジばかりだ。視聴者も食傷気味なのではないだろうか。そこで日本最古のロッジがある横浜に目を向けてみよう。
横浜の人気観光スポット「港の見える丘公園」。その向かい側に「横浜インターナショナルスクール（以下 YIS）」がある。モデルの長谷川潤やサッカーのハーフナー・マイクらの母校だ。学校と言えば七不思議である。YISにも秘密がある。体育館の地下室がフリーメイソンのロッジになっていたのだ。学校の地下にメイソンの施設。漫画みたいな取り合わせだが、横浜ロッジのメンバーに会って確認したので間違いない。彼らの公式サイトにも記載されている。正真正銘、本物である。
YIS体育館は地上1階、地下1階の合わせて2つのフロアーで構成されている。メイソンの公式サイトによると、1986年から2002年まで YIS体育館はメイソンの所有物件であり、地下室は儀式の場として使用されていた、という。地上階はメイソンから YISへリースされていたのだった（体育館がメイソンの所有物件だったことは、不動産の登記簿でも確認が取れた。昭和61年1月31日付けで「香港ウインダム・ストリート1-3サウスチャイナ・ビルディング3階 ザ・マソニック・ホール・リミテッド（原文ママ）」が建物の所有権保持者として登録されている。）。
2015年現在、メイソンに関係するものはすべて新しいロッジに持ち去られてしまい、なにも見つけることが出来ない。しかしただひとつ、ここがメイソンのロッジだったことを示すプレートが残っている。このプレートは体育館の地下入口（公道に面している）に掲げられており、誰でも確認することが可能だ（写真）。
この建物がフリーメイソンのロッジだったことを示すプレート。
「このテンプルはメソニック・ホール株式会社（「メソニック」はメイソンの形容詞形。HKは香港の略語） によって建設された。この礎石は1985年9月28日に、1975年から10年間極東地区のグランドマスターだったブラザー・A.L.パーヴスS.G.W.閣下によって設置された」。
英文中の Hon は the honorable の略語で「閣下」という意味。S.G.W.はメイソンの役職 Senior Grand Warden の略語だ。本文末尾に「スコットランド憲法(Scottish Constitution)」という文字が書かれている。名義はメイソン内部の組織の一つ「スコティッシュ・ライト（Scottish Rite）」だと考えて間違いないと思う。
事実関係を確認するため、学校側に問い合わせてみた。インターナショナルスクールらしく、代表番号に電話すると、英語で対応される。しかしこちらが日本語で話すと相手も日本語に切り替えてくれる。日本にある各国大使館と同じだ。
「横浜の外国人コミュニティーの歴史について調べています。その過程でメソニック・ホールについて調べなければならないと感じました。YISさんの体育館建設と地下室の件で、お話しを伺えませんか？」
「本校は『教団』とは関係ありません。ですからその質問にはお答えできません」
「YISさんの体育館ですよね。関係ないというのは不自然だと思いますが？」
「現在、校内には分かる者はおりません。校長も教頭もその当時とは替わっています。昔の話ですから分かりません。」
「2002年までリース契約を結んでいたんですよね。それほど昔のことだとは思えません。10年前から在籍している職員さんはいらっしゃらないのでしょうか？」
「とにかく私には答えられません。お訊きになりたいのであれば、メールしてください」
「以前メールしたのですが、返信がありませんでしたのでお電話した次第です」
「メールされたんですか？ いずれにせよ、その質問に答えるかどうかは本人の意志ですから」
「特定の担当者がいらっしゃるんでしょうか？」
「特にそのような者はおりません」
とりつく島もない。しかし事実関係は否定されなかった。
この件は同校の在校生や卒業生たちにも伏せられていたらしい。わたしの友人に YIS卒業生がいるが、「1988年卒業なのでその時期は在学していましたが、知りませんでした。学校で語られていた記憶もありません。1986年竣工の体育館です。あんな一等地に寄付だけで建てられるなんて信じ難いと思っていました」と語っていた。
なぜ学校とメイソンに接点が出来たのだろうか。これから調査を続けて明らかにしていきたいと思う。
