正月の珍味 熊や雉を料理してみた

  by 松沢直樹  Tags :  

ライター業をかねて食品コーディネーターの仕事もしているので、時折珍しい食材に出会います。

特に、年末年始の時期はなおさら。

今年の正月も、業者さんやメーカーさんからいろんな食材をいただいたのですが、一番目を奪われたのがこれ。

某お肉屋さんから取り寄せてもらったもの。

「熊肉」と書いてありますが、ネタではありません。マジです。なんでも、許可が出た熊を仕留めたのだとか。冬期の熊狩りって禁止されてるみたいですけど、害獣駆除の名目で許可が出たので、合法なのだそう。
越冬中のツキノワグマのお肉だそうです。

いろんな料理を作るけど、熊の肉はさすがにはじめてです。

さてどう料理したものか……

業者さんからのいただきもので、もう一つ興味深かったのはこれ。

(きじ)ですか。桃太郎の家来の中で唯一うまそうなやつだよね。

そんなことはどうでもいいですが、これもまた珍しい。

吉事と雉はかかることから、おめでたくて正月には縁起の良い食材なのだとか。

さて、こんな珍しい食材が二つもそろったけど、どう料理しよう。

考えました。

熊はこんな感じで。エリンギと三つ葉のソテーにしてみました。

薄切りしたエリンギを、スライスした熊肉と一緒に炒めます。

熊の脂の中に含まれるうまみをエリンギが吸い込んでくれて、二度美味しい。

エリンギの歯触りもアクセントになって、いい感じになると思います。

読みは当たってます。越冬中の熊の肉から出てきた脂を、エリンギが受け止めてますね。

風味付けは、ゆずこしょうと塩。最後に三つ葉を加えて炒めます。

ざっくり作ってみました。

貴重な食材なのに、なんだか豚のバラみたいに見えちゃいますね。だけど、味はやっぱり違います。

ラム肉でもない。鯨肉でもない不思議な風味。獣臭くもなく、独特の旨味があります。

不思議なことに、冷めていても脂が固まらない。しかも旨味が強くなる。

心なしか食べると体が温まる気がします。迷信と言われればそれまでですが、過酷な冬を越えようとする熊は、体にとっても、美味しいものをため込んでるのかもしれませんね。

次はこれ。おめでたい食材の雉(きじ)。

これだけ見たら、鶏肉と区別がつかない感じですね。

せっかくですから料理してみましょう。

「きじめし」

雉の肉を細かく刻み、昆布をひたした日本酒と、塩を加えて炊きあげたもの。

仕上げに、三つ葉を刻んだものを加えて炊きあげます。

薄く削った「ささがきごぼう」を加えてもいい感じですね。

ちょっとつまみ食いをしてみたら、軍鶏でもない。鴨でもない。

歯ごたえがあって、脂はあるけどしつこくない。しかも、独特なさわやかな香りがある鶏肉です。

これはせっかくだから、別の物を作ってみよう。

いまだに作ったことがないあのレシピを。

雉と栗のポタージュ

雉肉をネギなどの野菜と炒め、皮をむいた栗を加えて煮込み、ミキサーにかけた後、裏ごして作ります。

さすがフランスでも有名な料理だけあって、作っている最中からいい香りがします。

本当の作り方は、メスの雉を丸ごと一羽煮込んで出汁を引き出すのだそう。さすがにそれだけ肉がないので、

雉の肉を細かく刻み、タマネギと炒めた後、細かく刻んだ栗と一緒に煮込んでいきます。

こんな感じですね。これをミキサーにかけて、裏ごしして仕上げます。とはいえ、せっかく珍しい食材です。

食感が感じられるほうがいいと思って、このままいただくことにしました。

これもまたなんとも不思議な味ですね。

雉の肉って、鶏でもない、鴨でもない、うずらでもない。

独特の香りと食感があります。その香りと旨味が、栗のほっこりした感じにくるまれて、えもいわれぬ風味になってます。

お金持ちの味とはこういうことを言うのかしら。うーむ。

ちなみに、このポタージュに黒トリュフを入れたアレンジもあるそうです。もうこうなると、住む世界が違う人たちの料理ですな。

意外に熊も雉も美味でした。

そうそう、雉飯に熊肉とエリンギーのソテーを載せていただくと、これまたエネルギッシュなお味。

また食べたいけど、熊肉なんてそうそう手に入りませんしね。どなたかの業者さんが持ってきてくれないかしら。

松沢直樹

福岡県北九州市出身。主な取材フィールドは、フード、医療、社会保障など。近著に「食費革命」「うちの職場は隠れブラックかも」(三五館)」近年は児童文学作品も上梓。連合ユニオン東京・委託労働者ユニオン執行副委員長