Sexy Zoneの『バィバィDuバィ』という曲をご存知だろうか。
「Duバィ」だけに、ドバイを意識してアラブ風のメロディーや衣装、そしてアラビア語混じりの歌詞で一時期話題になった。
動画の閲覧は↓から。
http://youtu.be/3hacQXYGx5o
こちらに登場するアラビア語、シュクラン(ありがとう)とウヒッブキ(愛してる)の2種類である。
実は、トップの画像がウヒッブキをアラビア語で表記したもの。
このウヒッブキの正しい意味は「私はあなたを愛している」となる。
つまり、英語ではI love you.となる。たった1語で主語・動詞・目的語をカバーしているのだ。
日本語で11文字、英語で3語を使わないと表せない”文”をたった1語で表してしまうアラビア語の仕組みについて、少し解説してみよう。
☆アラビア語の人称は13種類!
人称とは、会話の中で担っている役割を区別する文法用語である。
一人称が「私」、二人称が「あなた」、三人称が「彼」だ。
日本語は特殊で、人称が無限にある(「私」を指す言葉に「僕」「俺」「あたし」「わし」「うち」など多数ありますね……)ので、英語とアラビア語を比較してみよう。
英語の人称の数はI, you(単数), he, she, it, we, you(複数), theyの8種類。13種類は英語と比べて格段に多い。
☆人称に合わせて動詞が変化する!
中学校で英語を勉強していたとき、「三単現のsを忘れないようにしなさい」とよく言われたのを思い出す人は多いだろう。
英語の場合、主語が三人称単数現在形の時の場合だけ、動詞にsがつくという変化が見られる。
これが”三単現のs”であり、こういう変化のことを文法用語で人称変化と言う。
アラビア語の場合、英語の”三単現のs”に相当する変化が、全ての人称で起こる。
つまり、アラビア語では主語が変われば動詞の形も変わってしまうのだ。
アラビア語学習者は、動詞がどのように変化するか全て覚えなければならない。
ところで、中学校の英語の勉強で「過去形、現在形、未来形」という時制を習ったはずだ。
だが、アラビア語は「過去、現在、未来」ではなく「完了、未完了」という時制である。
なので、英語では3種類の時制の変化を覚えなければならないところが、アラビア語では2種類で済む。
それでは、ウヒッブキの基本形أحب(アハッバ)について、どのように変化するのか見てみよう。
種類は人称13種類×時制2種類(完了、未完了)=26種類である。
「私は愛する」は右側の赤で囲まれている部分。
「私」=1人称単数、「愛する」=未完了形(完了形だと「愛した」になります)なので、この部分を見ればよい。
左上の赤で囲まれている基本の形と一見するとかなり似ているけれど、発音が違いウヒッブとなる。
(ちなみに未完了形にはもう2種類あるので、本気でアラビア語をやろうと思えば最低計52種類の活用と、さらに受身の形を覚えなければなりません)
また、アラビア語はこのように動詞が細かく変化するため、よく主語が省略される。
そのため、ウヒッブのみで「私は愛する」という意味を表すことができる。
☆「あなたを」は動詞にくっつけてしまう!
ここまででウヒッブにはたどり着いた。しかし、ウヒッブキのキはいったいどこから出てきたのだろうか?
このキは英語のI love you.のyouの役割をする、目的語である。
と言われてもよくわからない方がいらっしゃると思うので、英語・日本語・アラビア語を比較してみよう。
(アラビア語のカタカナ表記、大変失礼いたしました)
英語のI love youのyouは日本語の私はあなたを愛するのあなたをの部分である。
それで、アラビア語のキはyou、あなたをと全く同じ働きをする。
なので、ウヒッブにキをくっつけてしまってウヒッブキで、アラビア語で「あなたを愛してる」の完成だ。
ちなみに、キは女性に対するあなたを意味するので、ウヒッブキは男性から女性への「愛してる」である。
女性から男性に愛してると伝えるときは、ウヒッブカと言おう。
(ここは”語学好き”向けの情報)
ちなみに、このキとかカは動詞の末尾にくっついて目的語の役割をすることから、文法用語で人称接尾代名詞と言う。
アラビア語で目的語が代名詞になるときは必ず人称接尾代名詞を用います(というかそれ以外の用法がありません)。
というわけで、ここまでお付き合いいただいた皆様、本当にありがとうございました!
شكرا جزيلا(シュクランジャズィーラン 本当にありがとう!)