ハーレムと聞けば治安の悪い恐ろしい場所のイメージがあるが、実際問題ハーレムの治安は言われるほどに悪くない。クリントン元大統領が大統領を退いてから個人事務所を作った際、ハーレムの地を選んだくらいだ。ハーレムにはイースト・ハーレムと呼ばれる地区があり、ここは黒人も多いがスパニッシュ・ハーレムとも呼ばれ、ラティーノと言われる中南米系の移民の多い地区で、ニューヨークでは最大である。
ハーレムの目抜き通りは125丁目だが、イースト・ハーレムは116丁目が中心地となる。このイースト・ハーレムにあるファーストフードの店、バーガーキングに入ってみた。お客の9割がたは黒人で、私がオーダーをしてバーガーを受け取るまでの待ち時間に見える、店員と客とのやりとりがハーレムらしいなと感じた。
先ず、背後から圧迫された感じを受けた。大きな野太い女性の声がカウンターに近づき、私の視界にはいると女性は肉付きのいい圧倒的迫力のスタイル。黒人女性はオーダーしていた複数のセットメニューを受け取っていた、大袋である。その袋を開けながら「ちょっとぉ、このポテト熱くないじゃないのよぉ、熱いポテトをよこしてよ!」と強く主張すると、店員のスパニッシュ系の浅黒い黒人女性は、いかにも面倒くさそうに対応し、お客に渡した大袋を受け取り、そこから熱くないと言われたポテトをいくつか取り出し、調理場のごみ箱にポコポコ捨て始めた。見ていて『あ~あ、もったいない!』
日本人はそういうこと言わないんですよね。そりゃ熱々のポテトでなくても冷え切っていたわけではない。温かいくらいのポテトは客としては許容範囲内。だって、予約をとって白いテーブルクロスが敷かれた高級レストランでなく、バーガーキングですからねぇ。
しかし、迫力黒人中年女性はおかまいなし!そこらへんがニューヨークの特にハーレムの黒人の強さだと思う。待たされた熱々のポテトをゲッツした女性は、きちんと「サンキュー!」と挨拶していくことで一件落着。
オーダーしたハンバーガーセットを待たされている間に次のお客が登場。話し方が異常にスローな黒人男性が注文をしているのだが、支払段階により「値段が違う」と文句を言い始めた。どうやら店の入り口に大きな広告で「○○を買うと○○が○ドルで買える」というものを、メインも買わずにサイドオーダーだけを特別価格で買えると思ったようだ。なかなか発注がスムースにいかないバーガーキングのイースト・ハーレム店である。
ミッドタウンにあるロックフェラー・センターのコンコースにもバーガーキングはあった。今は閉店してしまっているが、数年前のセットメニューと比べて、イースト・ハーレム店の方が数ドル高かったのに驚いた。地価は安くてもハンバーガーは結構高い!店舗は決して綺麗じゃない。2階に上がりウインドウ側の席をとっても、そこから見える風景がなんともさびれている感じ。
でも、それがいいのだ、それでいいのだ。
ニューヨークにはいくつもの顔がある。このイースト・ハーレムには黒人や南米移民たちの生活する力強さがある。もし、ニューヨークを訪れる機会があれば、観光地でもなんでもないこのイースト・ハーレムから飾らない本当のニューヨークを見てほしい。
ニューヨークの中心地のグランド・セントラル駅から地下鉄6番線のローカル線に乗り116丁目で下車すれば、東西に116丁目が広がっている。大通りには趣味の悪い、また縫製の悪い洋服が格安で売られている、エスニック風の食べ物屋が多くある、ファーストフードの店もいくつかある。
華やかさは微塵もないけど、生活する人間の力を感じる場所、そこがイースト・ハーレムである
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