『まち映画ドキュメントin春日部』~06. ミニシアターで観たいコンパクトな「まち映画」、『あおとんぼ』感想

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●話は少しさかのぼりますが2/19(水)、春日部市民活動センター「ぽぽら春日部」で「まち映画づくりを通じて春日部の街を元気にする」が開かれました。

 参加者には春日部まち映画づくりの企画提案がなされ、藤橋監督にも久しぶりにお会いしました。忙しそうだったので直接お話はしませんでしたが、「まち映画」とは何か監督からレクチャーのあと、実例として監督の作品「あおとんぼ」が上映されました。

●自分にとり藤橋監督作品は渋谷の上映会で観た『グラス★ホッパー』につづき二度目です。こちらはおよそ20分ほどの短編作品で群馬県千代田町が舞台になっています。

 「あおとんぼ」とは主人公である小学生の女の子のクラスに東京から転校してきた男の子のニックネーム。その名のとおり大きなメガネをかけた表情はちょっととんぼみたいです。

 クラスの先生の指示で女の子は、あおとんぼ君と町の地図づくりを始めることになる。

●自分の地元を「何もないところ」と冷めた視線で眺めている女の子。映画の冒頭、彼女は広い河川敷の土手の上で東京の方角へ向かって「わたしがいつか行く街」とつぶやいたあと、自分の住んでいる町の方を振り返り「わたしがいつか出ていく街」とつぶやく。まるで自分に言い聞かせるように。

 このオープニングのワンシーンだけで、何もない地方の街に育った者の心情が実に簡潔に表現されてるんですよね。藤橋監督、わかってるなーという気がする。

 『グラス★ホッパー』でも主役の女の子はどことなく自分の日常にシラケていて(いい意味で冷静なので)、そのせいか地域の人々のふれあいを描いてもあまりベタベタした感じにならず、好感がもてるのです。

●地元に幻滅している女の子とは逆に、あおとんぼ君の方は都会から引っ越してきたばかりで新しい土地がまだ珍しいのか、地域について夢中で調べて回っている。なかなかの知識の持ち主ではあるんだけど、どれも本かなにかで得たもののようで(インターネット検索かもしれない)そのせいかクラスのみんなからやや敬遠されている印象がある。

うーん、こういう子ってクラスに一人ぐらいいるんですよねー。やたら怪獣にくわしい怪獣博士とか虫の名前や生態をよく知ってるんで昆虫博士とか呼ばれてる子が。でもその知識のほとんどは本とかで手に入れたヴァーチャルなものなので、結果的に周囲から浮いてしまう・・・筆者もそういうタイプの可愛くないガキだったので、よく分かります。

少し思い出話になりますが、現在の土地へ越してきたばかりの中学1年だった僕は、授業で地域に残る石碑について教わったのがきっかけでちょっとした石碑マニアになってしまい、町じゅうをチャリンコで走りまわって石碑を見つけては、別に宿題が出てるわけでもないのに独自に調査レポート作成に入れ込んでた過去があります。なんというムダな情熱。あのころはまだ、地元を愛していたんだなあ・・・。
映画を観ながら昔の青臭い自分を思い出しちまいました。

●話は『あおとんぼ』に戻ります。生まれた町が好きになれない女の子と、よそから来たのに地元への思い入れが強いあおとんぼ君。対照的な2人がときにぶつかりあいながら進めていく地域の地図づくり。映画はその過程を静かなピアノの調べにのせてじっくりと追い、結末を迎えたとき女の子の内面には小さな変化が起きています。20数分に収められた物語の中に、実に濃密な体験が描かれているように思いました。

 『グラス★ホッパー』に較べシンプルな構成ですが、それだけに物語のテーマがよりストレートに表現されているように感じられる作品でした。ミニシアターで観たくなる!

【藤橋監督作品情報】

●熊谷シネティアラ21にて『グラス★ホッパー』に続き藤橋誠監督作品『漂白』が3/8~13まで公開。こちらにも足を運んで感想をアップしたいと思います。

物書きで食っていくことを目指しながら生活のためさまざまなバイトに手を出し、果てしなく夢から遠回りしているサイタマの田舎をころがる根無し草。ネット上に複数のHP、ブログを開設し、アクセス数も気にせずカネにならない文章を発表しているが空回りばかりで自信喪失。将来の目標はクソ爺い。ブコウスキーとか山頭火みたいな。

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