しばらく連載を滞らせていました。
しばらくは、労働条件など当然のことですが知っておかなければならないようなことを書いていこうかと思います。
厚生労働省が統計を取っている調査の中に、雇用動向調査というものがあります。
これは、
主要産業における入職、離職と未充足求人の状況並びに入職者、離職者について個人別に属性、入職・離職に関する事情等を調査し、雇用労働力の産業、規模、職業及び地域間の移動の実態を明らかにする
という目的があるようです。
簡単に言うと、仕事場における人の出入りを調査して、出た数、入った数を数字に示すものです。
直近の調査は、25年の上半期の数字です。
約8.9%の人が辞めてしまい、その代わりに9.4%の人が新たに仕事についたという結果です。
常に人が動いており、新たな雇用契約が締結されているということがわかります。
431万人の人が動いているわけですから、431万人分の数分の雇用契約が締結され、それぞれの就労が始まるわけです。
雇用契約というと、大層に聞こえますが、
経営者 「働く?」
面接者 「はい!」
という会話だけでも、雇用契約は成立しているわけです。
別に書面で「契約書」なるものを作成しなくても、口頭で契約されたということになります。
ただ、それでは、給料がいくらだったのか、労働時間は何時から何時までなのか、休日はいつなのか、
これらの事がわからなくなってしまいます。
そこで、雇用契約締結の際には、
個別の労働条件について、書面を交付して通知しなければならない
という規定が、労働基準法第15条にあります。
どういう名称でも構いませんが、どういう条件であったのかお互いに知っておく必要があるということで、これを文書にしておくことでトラブルを防止するというものです。
これには、人数には関係なく、契約締結の際には必ず行わなければならないというものです。
ころが、この文書を出していないというところも多くありました。
厚生労働省が、昨年度実施した
若者の「使い捨て」が疑われる企業等への重点監督
いわゆる「ブラック企業の疑いがある企業への監督」において、これまでの違反の内容が公表され(平成25年12月17日発表)
その中で、
平成24年における定期監督実施事業場数134,295件のうち、
1割を超える事業場14,415件で雇入れ通知書の交付に関する違反
がありました。
書面を交付していないとどうなるのか、
つまり言った言わないになってしまうということなのです。
違反とされなかった企業の中には、「雇用契約書」という文書を作っているのに、
雇い入れた労働者に説明もせずサインだけもらい、会社だけが1部保管しているというところもあるかと思います。
これは、定期監督などでは見つかりにくいないようです。
労働者から、そんなのもらっていないということを聞けば、違反だと指摘できますが、結局わからずじまいのケースも多いと思います。
筆者のこれまでの経験上、半分くらいの事業場で雇入れ通知書の違反があると思います。
全く法令を知らなかったというところもあるかもしれませんが、労働者に、内容を知られてはまずいと思っているところもあるでしょう。
ただ、その内容を知られてはいけないとはどういうことでしょうか。
現に労働者はその条件であることを聞かされて働いているわけなのです。
企業活動をずっと継続させたいのであれば、目先のささやかな利益を追い求めるのは意味のないことです。
働こうと思う人は、雇入れ通知書を出さない時点で、その会社で働くことはやめましょう。
入り口部分で労働基準法違反を発生させているわけですから、
今後も労働基準法違反が生じても全くおかしくありません。
もともと、安い投資で多くの利益を得たい企業と、
より高い対価を得たい労働者との間には、お互い全く方向性が異なるわけで、
その利害関係が異なる部分をすり合わせて書面にしたものが雇入れ通知書です。
この入り口部分の違反がなくなることにより、
今後の雇用統計調査の人の出入りの数が大きく変わるのかもしれません。